和声やモチーフの処理に興味があって注意深く聴くと、独特の手法が見えてくる。短調的な主題を基盤にしながら、時折モード転換や不協和音で“記憶の歪み”を表しており、トニックに帰着しない終止感が多用されている。これにより場面が解決しないまま次へ進む感覚を生み、物語の不可逆性を音楽で補強している。
テーマの変形は非常に工夫されており、拡大(オーケストラで壮大に)・縮小(ソロ楽器で繊細に)・
逆行(旋律の反転)といった手法で同じ主題が何度も生き返る。編曲面ではチェレスタやハープのような高音のパーカッション的音色が記憶の“きらめき”を演出し、シンセパッドやコーラスが背景に薄く広がることで非現実感を補強している。
リズム面では自由なテンポ変化やルバートを多用し、台詞や情感のニュアンスに寄り添わせる作りになっている。全体としては物語の核となるテーマ—失われた記憶と向き合う過程—を音楽的に忠実に追い、同時に聴覚的な豊かなテクスチャで情景を彩っているように思う。こうした技巧は『進撃の巨人』のような直接的な鼓舞ではなく、内省的で重層的な語り口を好む人に響くはずだ。