観終わった直後、つい原作と比べて細かいところを反芻してしまった。劇的な場面やアクションの見せ方は映像化ならではの魅力がある一方で、原作にあった微妙な心理描写や脇役の小さなエピソードが刈り取られている箇所が目立つ。『
ブレイド&バスタード』のアニメ化で制作側が手を入れたポイントは大きく分けると、プロットの圧縮、キャラクターの再配分、表現の強弱、及び視覚的演出の追加・変更の四つに分類できるように感じた。個人的にはその取捨選択は賛否が分かれるけれど、映像としてのテンポ感を保つための必要悪とも理解している。
原作の細かなサブプロットや長めの内面描写は、放送時間やシリーズ構成の都合で短縮・省略されがちだ。自分が読んだ章の中には、キャラの過去や動機を丁寧に積み上げる場面があって、それがアニメではダイジェスト化されている。結果として一部キャラクターの行動が「唐突」に見える瞬間がある一方で、本筋の盛り上げどころは映像向けに再構成され、戦闘や対話のリズムが洗練されている印象を受けた。また、脇役をまとめて一人に統合したり、台詞を別のキャラに振り替えたりして説明効率を高めている箇所も確認できた。これもまた、話数と尺の制約を考えた上での現実的な対応だろう。
表現面では一部の暴力描写や性的な描写がテレビ用にトーンダウンされている場合がある一方で、心理描写を映像的に補完するための新規シーンやカットが追加されている。特にモノローグの大半が映像の動きや表情、音楽で代替されるため、原作で感じた内的な重みが映像では違った形で伝わる。そのため、原作ファンにとっては「語られない情報」が気になることもあるが、新規視聴者にとってはテンポが良く、入りやすい構成になっているはずだ。制作陣がシーンの順序を入れ替えたり、衝突の導入を早めてドラマ性を高める手法も使われており、これが成功している箇所とやや不自然に感じる箇所が混在している。
総じて言うと、原作の核となるテーマや主要プロットラインは概ね維持されているものの、細部の補完やキャラの厚み、エピソードの順序などでかなり手が入っている。個人的には映像的な改変で得られた感情の高まりや演出の見せ場は評価したいが、細やかな心情描写が失われた点はやや惜しいと感じる。どちらが正解かは視点によるが、映像作品としての完成度を優先した結果、原作とは違う味わいの作品になっているのは間違いない。