堕天使モチーフの作品にぴったり合う音楽って、暗さと美しさが混ざり合った瞬間を切り取るものが多くて、つい聴き込んでしまうよね。サウンドトラックやアルバムを選ぶときは、歌詞で
堕落や救済を語るものだけでなく、コーラスやオーケストレーション、シンセの冷たさで“堕ちていく”雰囲気を表現しているかに注目すると掘りがいがある。ここではジャンルを横断して、堕天使のテーマに合う音楽をいくつかピックアップしてみるよ。
まず、ポピュラー系だとゴシック/シンフォニック寄りのバンドが鉄板。特におすすめはエヴァネッセンスのアルバム『Fallen』で、タイトル通り堕落や失意をテーマにした曲が多く、エモーショナルなボーカルと重厚なアレンジが“堕ちた美しさ”をそのまま音にしている。ナイトウィッシュはシンフォニック・メタルの王道で、『Ghost Love Score』のような楽曲は天的な荘厳さと暗さを同時に持っていて、物語性のあるサウンドが好きな人にはたまらないはず。ウィズイン・テンプテーションも同系統で、耽美でドラマチックな音作りが堕天使イメージに合う。
アニメやゲームのサントラも強力な候補が多い。『新世紀エヴァンゲリオン』のサウンドトラック(鷺巣詩郎)は、劇的なオーケストラとコーラスの使い方が印象的で、“
使徒=天使”という扱いが音にも反映されているため、宗教的な陰影を感じたいときにぴったり。アクション系では『Bayonetta』の音楽がユニークで、ラテン語風のコーラスやゴスペル調、ジャズ的な要素が混ざり合っていて、神と悪魔の境界がゴージャスに表現されている。叙情的な哀愁を求めるなら『NieR』シリーズ(岡部啓一)のサウンドトラックがオススメで、電子音と合唱、民族調のメロディが“失われた存在”の哀しみを引き出してくれる。
最後にクラシックや現代音楽の中にも堕天使の情緒を喚起する作品がある。モーツァルトの『レクイエム』の“ラクリモーサ”や、アルヴォ・ペルトの『Fratres』や『Tabula Rasa』のようなミニマルで聖性と静寂を同時に表現する音楽は、堕落と救済の狭間を音で味わいたいときに効く。聴き方としては、まずは『Fallen』か『Ghost Love Score』あたりで“声とオーケストラ”のドラマ性を感じ、その後『NieR』で電子と合唱の混ざり合いを楽しむと、堕天使というモチーフの幅広さが見えてくると思う。音楽を通して、堕天使の美しさと哀しみを存分に味わってほしい。