まず、ポピュラー系だとゴシック/シンフォニック寄りのバンドが鉄板。特におすすめはエヴァネッセンスのアルバム『Fallen』で、タイトル通り堕落や失意をテーマにした曲が多く、エモーショナルなボーカルと重厚なアレンジが“堕ちた美しさ”をそのまま音にしている。ナイトウィッシュはシンフォニック・メタルの王道で、『Ghost Love Score』のような楽曲は天的な荘厳さと暗さを同時に持っていて、物語性のあるサウンドが好きな人にはたまらないはず。ウィズイン・テンプテーションも同系統で、耽美でドラマチックな音作りが堕天使イメージに合う。
最後にクラシックや現代音楽の中にも堕天使の情緒を喚起する作品がある。モーツァルトの『レクイエム』の“ラクリモーサ”や、アルヴォ・ペルトの『Fratres』や『Tabula Rasa』のようなミニマルで聖性と静寂を同時に表現する音楽は、堕落と救済の狭間を音で味わいたいときに効く。聴き方としては、まずは『Fallen』か『Ghost Love Score』あたりで“声とオーケストラ”のドラマ性を感じ、その後『NieR』で電子と合唱の混ざり合いを楽しむと、堕天使というモチーフの幅広さが見えてくると思う。音楽を通して、堕天使の美しさと哀しみを存分に味わってほしい。
耳を澄ませると真っ先に浮かぶのが、'Battles Without Honor and Humanity'のあの強烈なメインテーマだ。僕はこの曲を初めて聴いたとき、画面の暴力性よりも先に音楽の「勢い」に心を奪われたのを覚えている。ブラスの切れ味とリズムの前のめりさが、登場人物たちの運命を容赦なく押し出す。サントラ盤を通して聴くと、単なるBGMではなく物語を補強するために組まれたスコアだとわかる。特にオープニングの短いモチーフが作品全体で様々に変奏される流れは必聴で、同じフレーズが場面によって恐ろしさや哀愁を帯びるのが面白い。
また、緊張を緩めるような低音弦と木管の少し物悲しい挿入曲も忘れられない。暴力の連鎖を描く映画において、こうした抑制のあるパッセージが人間性を際立たせる役割を果たしている。アルバム全体が時代の空気感を切り取ったような作りになっているので、映画を何度も観た人ほど新しい発見があるだろう。
とにかくまずはメインテーマから聴いてみてほしい。曲だけでも映画の世界観に強烈に引き込まれるはずで、その後に細かい挿入曲やエンディングを辿ると、スコアの巧みさがより実感できる。