表情と息づかいでトーンを決めるのが一番面白い。
ドワーフの演技では、まず骨格のある声をつくることから入ることが多い。低めのピッチを基準にしつつ、喉周りの共鳴を意識して音に厚みを出すと、短躯でがっしりしたイメージが自然に出る。大げさな加工に頼らず、口の開き方や鼻腔の使い方で“重さ”を表現するのが肝心だ。
性格付けは二段階で考えるとやりやすい。まず年齢感や世界観に応じた基本トーンを決め、次にそのキャラの個性(頑固さ、ユーモア、誇り高さ)を声のリズムや母音の伸ばし方で表す。例えば『ロードス島戦記』のようなクラシックなファンタジーでは、硬質で金属的な語感を添えると武骨さが伝わる。
現場で聞くと、演者は必ずしも常に低音を張るわけではない。感情の起伏をつけるために高めの声も瞬間的に使い、絶妙なコントラストを生むことが多い。聴いていて“ただ低いだけ”に聞こえないのが良いドワーフ演技だと思う。