録音の現場でよく意識しているのは、聞き手との距離感をどう作るかということだ。
添いパートは相手の隣にいるような親密さが求められるから、声のボリュームや息遣い、息の長さで“物理的な距離”を表現することが重要になる。技術的にはマイクとの距離や角度を一定に保つ努力をするけれど、それ以上に感情の一貫性を崩さないように気を配る。
私が演じるときは
台本の行間にある細かな心の動きに目を向ける。優しさを示す瞬間、照れ隠しの間、重いシーンの呼吸の乱れ――そうした細部が自然に出ると、録音後の編集で生きる。たとえば'ヴァイオレット・エヴァーガーデン'のように感情を抑えたまま伝える場面を作るときは、声の抑揚よりも息の入り方や言葉の切り方でドラマを作ることを心がけている。
最後に、監督や収録エンジニアとのコミュニケーションも欠かせない。どのくらい息音を残すか、どの瞬間に距離感を縮めてほしいかをすり合わせると、結果としてリスナーにリアルな“添い”の感覚を届けやすくなる。自分の演技だけでなく周囲との調整がいい作品を生むと実感している。