小説『漁る』は、海辺の小さな町を舞台に繰り広げられる人間ドラマが中心となっている。漁師一家の長男である主人公が、父親の突然の失踪をきっかけに、家族の秘密や町に潜む因習に向き合う過程を描く。波打ち際に漂う謎と、人々の複雑な感情が絡み合い、静かな緊張感が最後まで読者を引きつける。
登場人物の関係性は、主人公とその家族を軸に展開される。父親は頑固な漁師で、地域の漁業組合でも重きをなす存在だったが、
ある日忽然と姿を消す。母親はそれをきっかけに心を閉ざし、弟は兄である主人公に複雑な感情を抱きながら反抗する。さらに、町の古老や漁師仲間たちがそれぞれの思惑を持ち、主人公の行動に影響を与える。
物語後半では、海にまつわる伝説や過去の事件が浮かび上がり、人間関係の糸がさらに複雑に絡み合う。特に主人公と幼なじみの女性との再会が、彼の選択に大きな影響を与える転換点となる。海の匂いと共に記憶が蘇る描写は、読者にも深い感慨を残すだろう。