ふとあの場面が蘇る。
『君の名は。』のラスト近く、階段の上と下で互いを探し合うシーンは、単なる再会を超えた“
巡り合い”の象徴だと感じる。すれ違いと記憶の欠片が積み重なって、名前を呼ぶその瞬間に時間の重みが集約される。僕は画面の細かな動きや表情の変化、光の差し込み方に心を奪われた。互いに確信がないのに、どこかで通じ合っているという不思議な緊張感がたまらない。
映像的には遠景からクローズアップへの移行が巧妙で、観客も二人の視点に引き込まれる。音楽の抑制や周囲の雑踏の扱い方が、その一呼吸をより濃密にする。巡り合いの瞬間は偶然の産物に見えて、実は物語全体がそこに向かって編まれていたことを思い知らされる。
こういう場面に触れると、自分の中にも似たような“忘れかけた約束”や“引き寄せられた瞬間”が蘇る。運命論だけでは説明できない、記憶と感情が交差する純粋な刹那が心に残るのだ。