曲が始まった瞬間に全てがぐっと近づく感覚があって、それが
巡り合いの瞬間を一番強く描いていると思う。音の選び方が鋭く、聞くたびに場面が目の前に立ち上がる。僕はその効果を何度も体験してきて、特にある一曲が心に刺さって離れない。
その曲は映画『君の名は。』の中で印象的に使われる『前前前世』だ。ギターのリフと疾走感のあるリズムが、偶然と必然が混ざり合う瞬間をまるで追いかけるかのように描く。メロディーは高揚と不安を同時に含んでいて、出会いのときにもつ切なさや期待感を同時に表現している。転調の使い方やコーラスの重なりは、過去と現在を結ぶ糸のように聞こえる。
個人的には、場面のカット割りと楽曲の呼吸が完璧に噛み合った瞬間に涙ぐんでしまうことがある。あの曲は単なるポップソングではなく、人物同士の距離感を音楽だけで語らせる力を持っている。運命めいた出会いを描くには、これほど直感と感情を刺激するトラックはほかに思いつかない。