御簾の佇まいには、意外と現代住宅に合うヒントが詰まっている。伝統的な御簾の細い簾竹(すだれたけ)や麻紐の取り合わせは、光を柔らかく分散させつつ視線をほどよく遮るという機能美を持っていて、それこそが今のインテリア設計で求められる“柔らかい間仕切り”の本質に通じると思う。
僕は昔ながらの竹と麻の組み合わせをベースにいくつか実験してきた。たとえば、簾竹を細め(厚さ2〜3mm程度)に揃え、間隔は5〜15mmで変化をつけると光の透け方が劇的に変わる。寝室や書斎では隙間を詰めて視線を遮り、LDKの天井付近では隙間を広めにとって間接光を取り込む、といった使い分けができる。麻や絹のような天然繊維を結び目に使えば接合部が柔らかく馴染み、経年変化も楽しめる。表面には植物性オイルや薄い漆膜を施すと耐湿性が増して手入れも簡単になる。
応用例は多彩だ。引き戸の前パネルとして使えば意匠と機能を両立する間仕切りになるし、キャビネットの扉に組み込めば中の陰影が美しく見える。パネルを薄いフレームに
嵌めてスライド式にすれば可変性も確保できるし、裏にフェルトや薄い吸音材を貼れば音の伝わり方もコントロールできる。現代的な要素と合わせるコツはコントラストを作ること。例えばマットな黒い金属枠と細い竹簾の組合せは和の繊細さを引き締め、北欧系の木質家具とも好相性になる。
最後にメンテの話をひとつ。天然素材は温湿度で伸縮するから、枠に遊び(数ミリの余裕)を持たせ、着脱可能な構造にしておくと季節で張り替えや掃除がしやすい。私は古材を使った小さなプロトタイプをいくつか作って、暮らしの中でどの場所に置くと一番心地よいかを確かめるようにしている。そうすると御簾の持つ静かな力が、現代の空間にも自然に馴染むことがわかるはずだ。