映画で観る
切傷メイクを自宅で再現するとき、最初に意識するのは“皮膚への負担を抑えつつリアルさを出す”ことだ。僕はまず、肌に合う製品を少量ずつ試すパッチテストを行う。アレルギー反応を避けるために、リキッドラテックスやスカルプト用のワックスは顔ではなく腕の内側で試してから使う。道具は基本的にリキッドラテックス、ティッシュやコットン、スカルプトワックス(代替でワセリン+少量のフィラーも可)、肌色のクリームファンデーション、各段階で使うスポンジとブラシ、そしてフェイクブラッドを用意する。換気を良くし、目や粘膜周囲は特に避けることを忘れない。
次に作り方だ。まず肌に薄くリキッドラテックスを塗り、乾いてきたら小さくちぎったティッシュを重ねて凹凸のベースを作る。完全に乾いたら縁を軽く引っ張って裂け目を作り、裂けた部分の端にスカルプトワックスを差し込んで“肉の盛り”を表現する。色付けは層を重ねる感覚で行うのが鍵。薄いピンク→赤→暗い紫や茶色で深みを作り、表面は光沢のあるジェルや専用の“ウェットブラッド”で塗ると新鮮な出血感が出る。乾燥した血は少しマットで深い赤〜茶にするのが映画っぽい。エッジはスポンジで叩くように色を馴染ませ、自然な皮膚の赤みや内出血の紫を足していく。
取り外しとケアも重要だ。除去はオイルベースのリムーバーやベビーオイルでワックスやラテックスを溶かしながら優しく行う。無理に剥がすと皮膚を傷めるので、時間をかけて残留物を落とす。小さな道具の工夫としては、細い綿棒で血を流れる方向に沿って“滴”を作ると動きが出るし、乾いた血と濡れた血を混ぜると時間経過が表現できる。僕は何度も練習して段取りを決め、撮影や演技に合わせて修正することで映画っぽい切傷を再現している。