若い視点から言えば、競争や比較が前面に出る作品ほど『
ひがみ』の描写がダイレクトに刺さる。『ブラック・スワン』は美的なプレッシャーと自己否定が混ざり合い、嫉妬だけでなく恐怖や自己崩壊へと連鎖していく様を見せてくれる。私はあの映画を観ると、嫉妬が自分の内面の分裂を促すプロセスとして描かれていることに驚かされる。バレエの世界という限定された社会が舞台だからこそ、他者との差が常に計測可能で、比較が容赦なく当事者を追い詰める。その緊迫感は、単に「誰かを羨む」という軽い描写では済まされない重みを持っている。
また、映像表現も見逃せないポイントだ。鏡やクローズアップの多用、音響の歪みが主人公の心理状態を内側から伝える手法になっており、観客もその狂気の渦に巻き込まれる。私は特に、身体表現と心理のリンクが鮮烈に映し出される場面に惹かれた。嫉妬が自己の崩壊と結びつく過程をここまで身体的に見せる映画は稀だと感じるし、若い観客には強烈な影響を与えるだろう。最後には静かな余韻を残しつつも、見終えた後に心のざわめきが続くタイプの作品だ。