ねじれた感情をテーマにした短編を思いついた。都会で細々と暮らす僕の主人公は、かつて自分を励ましてくれた幼なじみが大成功を収めたのを見て、徐々に『
ひがみ』を育てていく。最初はささやかな比較心だけだったが、彼女の成功祝いの写真や些細な一言が主人公の心に棘を刺し続ける。僕はその過程を、静かな観察と内面の叫びを交互に描くことで表現したいと思った。
作品の中盤では、主人公が成功者の痕跡を追いかけるようになる場面を置く。過去の共通体験や忘れられた約束事を掘り返して、彼女の人生を理想化しつつも、自分の手の届かない場所へ向かう様子を描写する。ここで重要なのは単なる敵意ではなく、羨望と自己否定が混じり合った複雑な感情だ。私は『告白』のように直接的な告発や復讐ではなく、むしろ内側から崩れていく心理描写に重きを置く。
結末は予想を裏切る形にした。主人公はある種の解放を得るが、それは相手を打ち負かすことではなく、自分が育てていたひがみを客観視することだった。和解や昇華を選ぶ余地を残しつつ、読者に心の陰影を味わわせるつくりにしている。自分の感情と向き合う物語として、静かに胸に残る終わり方にしたかった。