登場人物の輪郭を手早く描くと、物語の勢いと感情の源が見えてくる。まず核となるのは、奔放で矛盾を抱えた主人公・翔だ。幼い頃に村を失い、以後“雷”を扱う能力だけが彼の帰属意識を繋いでいる。力の制御に苦しみ、失った家族への罪悪感が行動原理の一部になっている点が重要で、物語の多くはその贖罪と再生の過程に向かって動く。
対照的に、指導的存在である相馬は過去の戦歴と秘密を抱え、翔の闘い方や価値観に影響を与える。彼は一見冷静だが、内部に激しい後悔と保護欲を宿しており、過去に失った者たちへの執着が判断を曇らせる瞬間がある。芽衣は政治的なつながりを持つが理想主義者で、書類と人情の折り合いをつけながら真実に迫る役割を担う。彼女の背景は上流と民衆の
はざまで揺れるため、個人の信念と家柄のプレッシャーが絡むドラマを生んでいる。
敵役の鈴は産業と秩序を重んじる立場から来る冷徹さを持ち、悲哀が動機の根底にある。自分なりの“安定”を守るために手段を選ばないが、決して無邪気な悪ではなく、失ったものを取り戻したいという痛みが行動を正当化してしまう人物だ。脇役のリクは路地出身の情報屋で、翔の昔を知る存在として感情的な接点を与える。私は特に人物同士の過去が互いの選択をどう縛るかに惹かれ、こうした背景があるからこそ葛藤が深くなると感じている。
全体として舞台は社会的な裂け目と自然の力が交錯する設定で、各人の出自や損失が物語の推進力になっている。登場人物は単なる役割分担以上に、それぞれが道徳的ジレンマと感情的負荷を持ち、互いに反応し合うことで物語が生きてくる。最後に、こうした背景があるからこそ一つ一つの選択が重く、読後に残る余韻もまた深いと感じる。