あの雨粒が地面に落ちるカットを初めて見たとき、息が止まるような感覚を覚えた。『
言の葉の庭』で水たまりが何度も画面を割るたび、映る風景がそのまま登場人物の心の揺らぎを映し出していたからだ。
僕はとくに
雨宿りのシーンが好きで、靴底にできた小さな波紋や、濡れた舗道に映る傘の形が人物同士の距離感を視覚化していると感じる。カメラワークは細部を長く留め、背景音を抑えることで水面の反射がまるで会話の代わりになる。単なる景色の美しさを超えて、人間関係の繊細な振幅を伝える役割を果たしている。
映像と音の組み合わせが奏でる余韻で、僕はいつも言葉にしがたい感情を持ち帰る。水たまりが映すのは外の世界だけでなく、内部の欠落や希望でもある──そんなことを思わせる場面だ。