絵を描くとき、
侘しい表情を際立たせるコマ割りには明確な狙いが必要だ。感情の“余白”を残すためにコマをあえて広く取ったり、逆に細長く絞ったりすることで読み手に時間の流れや重さを伝えられる。僕がよく心がけているのは、表情そのものよりも表情が置かれる“空間”を描くこと。目の焦点や口元のささやかな変化を強調するため、周囲を削ぎ落として余白を増やすと、不安や孤独感が自然に強まる。コマの枠線を薄くしたり崩したりするのも有効で、枠が弱まると感情がページから溶け出すような印象を与えられる。
具体的なテクニックとしては、シーケンスの作り方が肝心だ。遠景でキャラの孤立を見せた直後に中距離、そして極端なまでのクローズアップへと寄せる“距離の縮小”は効果抜群。距離を詰めるリズムが、内面の圧迫感を強調する。一方で、一枚の大きなコマに広い空白を残す配置は、時間の止まりや喪失感を表現するのに向いている。コマの形も演出の一部で、縦長は閉塞感、横長は静かな広がりを示す。細長い縦コマに顔の上半分だけを切り取ると、視線の抜けが制限され、息苦しさが生まれる。
間の使い方も忘れてはいけない。セリフや効果音を最小限にして無音のコマを挟むと、侘しさが読む側の想像力で膨らむ。反復で差分を見せる四コマ的手法も有用で、ほとんど同じ構図を続けて少しだけ表情が変わると、その“わずかな変化”が胸に刺さる。コマとコマの溝(ガター)を広く取れば時間経過を感じさせ、逆にぎゅっと詰めればテンポが加速して心の動揺を表現できる。さらに、背景を単純化しトーンやハッチングで微妙な陰影をつけると、表情そのものの線や影がより目立つ。
作画の実践では、カメラワーク感覚でコマ割りを考えると良い。視点を上方に置くと被写体が小さく弱く見え、下方からだと威圧感が出る。侘しさを出したいならやや俯瞰で人物を画面に置き、周囲の余白で関係性の希薄さを示すことが多い。僕は時々、ページの最後で大きな無言コマを残すことで読後の余韻を作るようにしている。最終的には、細部の“余白”とリズムの操作が鍵になる。繰り返し試して、自分が感じた侘しさが読者にも伝わる配置を見つけていってほしい。