秋風に消えた想い「霞さんの病気は、とっくに手術で治せたはずなのに、どうして治せないなんて嘘をついたんだ?
霞さんはとっくに普通の人と同じ生活ができたはずなのに。お前は彼女の苦しみを長引かせたんだぞ。心不全の患者が毎日どれだけ苦しんでいるか分かってるのか?」
しかし、「生涯愛するのは霞だけ」そう公言していた男は、悪びれる様子もなく答える。
「夏美が我儘なんだから、仕方ないだろ?それに、夏美は俺が他の人に触られるのを嫌がるし、自分のものだって印までつけるんだ。そんなんじゃ、霞の病気が治ったら、隠し通せなくなる」
新井要(あらい かなめ)の言葉は、鋭いナイフとなって新井霞(あらい かすみ)の心を突き刺した。
街の誰もが、要は「色欲とは無縁な男」だと思っていた。
なぜなら結婚してから5年、要は霞に指一本触れていなかったから。それに、霞の生まれつきの病気を気遣って、負担をかけたくないからだと言っていて、霞自身でさえその深い愛情に涙したこともあったのに。
しかし、その「色欲が無い」というのが、自分に対してだけのものだったなんて。
こんな男、もういらない。