演出の判断って本当に悩ましい。僕はいくつかの作品で露骨な表現が抑えられた結果、観客の
ひんしゅくがどう変化したかを見てきた側だ。まず率直に言うと、刺激が強すぎる場面を丸ごとカットすると短期的にはクレームが減ることが多い。苦情の多くは「見せすぎ」や「不快だ」という直接的な反応だから、過激さを抑えれば否定的な声は目立たなくなる。
ただしそこには代償がある。物語の説得力やキャラクターの動機が薄く感じられると、別種の失望が広がる。たとえば『エヴァンゲリオン』のように視聴者の心理に踏み込む作品では、表現の削減が感情の連鎖を断ち、共感の度合いを下げる危険があると僕は思う。
結局、観客のひんしゅくが減るかどうかは目的次第だ。短期的な反発を避けたいなら穏当化は有効。長期的な信頼や作品の深みを守りたいなら、代替手法で表現を補完する工夫が欠かせないと僕は感じている。