監督が過去の失敗をどう
省みるかを考えるとき、まず自分の感情と事実を分ける作業が必要だと感じる。舞台裏で焦ったり弁解したくなる衝動は誰にでもあるけれど、そこに留まってしまうと本当に学べない。私は制作後に感情的な反応を整理して、観客の声、批評、数字(視聴率や動員、レビューの傾向)を並べて比較することから始める。
エゴを脇に置いて「何が起きたか」をできるだけ客観的に描き出す作業が肝心だ。
次にやるのは原因の分解だ。表面的な批判(例:テンポが悪い、キャラ改変が不評)だけで終わらせず、五回ほど「なぜ?」を繰り返して根本原因を探る。例えば予算やスケジュールの制約、脚本段階での合意不足、テスト観客を早期に取り入れなかったこと、マーケティングの齟齬など、多層的な要素が絡むことが多い。私はチームメンバーと率直な振り返り(もちろん責任転嫁ではなく学習の場)を開き、外部の冷静な意見も取り入れるようにしている。
最後に、具体的な改善計画を作る。次回作で試すこと、プロトタイプ化して検証すること、KPIを設定して途中で修正できる仕組みを入れること、そしてファンや批評家への説明責任を果たすこと。作品に対する自分の信念は大事にしつつ、『バットマン vs スーパーマン』のような期待と実際のズレが起きた作品から学ぶべきは、期待値管理と調整の重要性だと私は考えている。失敗を単なる失敗で終わらせず、次の表現の種に変えることが監督の腕の見せどころだ。