「矜恃」という言葉を聞くと、真っ先に思い浮かぶのは『鋼の錬金術師』のロイ・マスタングだ。彼が「炎の錬金術師」としての誇りを決して捨てない姿は、まさにこの言葉の象徴的な表現と言える。
矜恃とは、外からの評価ではなく、自分自身が持つ内面的な尊厳や誇りを指す。小説やアニメでは、主人公が苦境に立たされた時、この矜恃が最後の拠り所になることが多い。例えば『ヴィンランド・サガ』のトルフィンは、暴力の連鎖から抜け出す過程で、戦士としての矜恃ではなく、人間としての矜恃を見いだしていく。
興味深いのは、矜恃が単なる頑固さとは異なる点だ。『進撃の巨人』のリヴァイ兵長は、常に自分の中の「兵士としての基準」に従うが、それは単なる
エゴではなく、仲間への責任感から来ている。こうした描写は、キャラクターに深みを与えるだけでなく、視聴者にも強い共感を呼び起こす。
このテーマを考える時、重要なのは矜恃が時に脆さも含んでいることだ。完璧な強さではなく、傷つきながらも守ろうとするものこそが、真に迫った物語を生むのだと思う。