感情を楽器で語るとき、
私怨は鮮烈な色彩をもたらすことが多い。僕は曲を書くとき、まずその怒りや裏切りがどのトーンを欲しているかを考える。悲しみとも憎しみともつかない微妙な感情には、遠いユニゾンや半音ずらした和音がよく効く。単純に音を激しくするだけでなく、歪んだシンセの持続音と弦の間に生まれる不協和で、心のしこりを表現することがある。
場面や登場人物の関係を念頭に置いてモチーフを設計すると、私怨が物語全体の音楽的な核になる。たとえば長く尾を引く旋律を徐々に変形させることで、復讐心が成熟する過程を描ける。『ブレードランナー』のようなアンビエントな層を参考に、空気感で不快さを持続させる手法も取り入れる。
最終的には演奏やミックスで個人的な感情を客観化する作業になる。僕は録音では少し揺らぎを残し、人間味を消さないことを重視する。私怨が生む緊張感は、適切に扱えば観客の心に深い印象を刻む音楽になると思う。