雨に霞む春、陽射しに咲く夏愛する男、黒瀬玲司の命を救うために献身の果てに、白石紬は聴力を失った。だが、その代償として与えられたのは、感謝ではなく、彼の友人たちからの心無い嘲笑だった。
彼女は脳死の危険すら覚悟して手術に臨み、聴力を取り戻した。
しかし、その奇跡の喜びを分かち合うはずの夜、婚約者の唇が紡いだのは、彼女の名ではなく、彼の心に棲みつく「初恋」の名だった。
彼の心に、自分の居場所はどこにもなかった。
その残酷な真実を突きつけられた彼女は、すべてを捨てる決意をする。
愛した男も、過去も、すべてを置き去りにして、彼女は新たな人生を求め、海を渡る。