文学の世界には時代を超えて愛される傑作が数多く存在する。スタンダールの『赤と黒』は野心と愛が交錯する心理描写の妙が光る作品で、主人公ジュリアンの複雑な心情移り変わりが実に人間臭く描かれている。19世紀フランス社会の厳格な階級制度の中で、成り上がりを夢見る青年の苦悩は現代にも通じるテーマだ。
ドストエフスキーの『罪と罰』も外せない。貧困に苦しむ元学生が犯した殺人の罪と、その後の精神的な崩壊過程が圧倒的な筆力で綴られる。人間の
良心の呵責をこれほど深く掘り下げた作品は他にないだろう。特にラスコーリニコフとソーニャの対話場面は、読むたびに新たな発見がある。
日本文学なら夏目漱石の『こころ』が深い。先生と青年の交流を通して、過去に抱えた罪の重さと、それに苦しむ人間の孤独が静謐な文体で表現されている。最後の手紙の場面は、何度読んでも胸が締め付けられるようだ。
これらはどれも読み応えがあるが、ページをめくるたびに人間の本質に迫るような深みを感じさせる。時代や国境を越えて、人間が直面する普遍的な問題を扱っているからこそ、今でも新鮮に感じられるのだろう。