糊塗をテーマにした作品で思い浮かぶのは、中国文学の短編『阿Q正伝』です。ルー・シュンのこの作品は、自己欺瞞という形で糊塗を描き出しています。主人公の阿Qは現実から目を背け、都合の良い解釈で自分を慰めます。
この作品の面白さは、阿Qの心理描写にあります。彼は常に敗北を勝利に書き換え、屈辱を栄光に変えます。そんな彼の姿は滑稽でもあり、同時にどこか
哀れでもあります。読者は笑いながらも、自分の中に潜む阿Q的な部分に気付かされるかもしれません。
糊塗というテーマを扱いながら、人間の本質に迫った名作です。短編ながら深みがあり、読むたびに新たな発見がある作品です。