背景テキストやステータス画面は読みやすさを優先して再配置することがある。注釈を多用するとテンポが死ぬので、必要なら扉ページや巻末で補足を入れることを考える。たとえば、'So I'm a Spider, So What?'のような作品では、コミカルな自己分析と世界設定が混ざるため、語彙の統一とトーン管理に特に気を配ると全体の読み味がかなり良くなると思う。
また、敬語や目上のキャラへの言い回しは、英語のフォーマル度と日本語の敬語感のズレを埋める作業が必要だ。直訳で硬くなりすぎる箇所は、役割や関係性を保ちながら読みやすく調整する。比較対象として'RE:ZERO - Starting Life in Another World-'の翻訳で見られるように、繰り返し登場するフレーズは統一して訳語リストを作ると後が楽になる。自分はいつも用語集を用意して、キャラの言い回しをブレさせないようにしている。
タイトル翻訳について考えると、原作の持つ軽妙さと少し拗ねた口調をどう英語で再現するかが鍵だと感じる。
僕は原文の「蜘蛛ですが、なにか?」が放つ皮肉と居直りをそのまま保存するのが理想だと思っていて、そこで候補として挙げるのが『So I'm a Spider, So What?』だ。長めの英語タイトル群が受け入れられている最近の傾向を踏まえると、リズムよく覚えやすいこの形は海外の読者にもアピールしやすい。『That Time I Got Reincarnated as a Slime』のように説明的でありつつキャッチーな長さを保てる点も後押しになる。
それでも選ぶ際にはターゲット層を見極める必要がある。もっとカジュアルに寄せるなら『I'm a Spider — So What?』のようにダッシュで間を作る手もあるし、シンプルにインパクトを優先するなら短い『Spider? So What.』といった案もありうる。僕は作品のユーモアと強さを残すなら、最初に挙げた『So I'm a Spider, So What?』がバランス的に一歩抜けていると考えている。
翻訳プロジェクトに取り掛かると、まずはタイトルが伝える感情の核を見極めようとする。『裏切り者に復讐の花束を絶対に許さない』は語感が強く、怒りと美意識が同居している。直訳に寄せれば、'I Will Never Forgive the Traitor's Bouquet of Vengeance'のように意味は残るが英語圏の読者には冗長で詩的すぎる印象を与えるだろう。
そこで私が考えるのは三つの方向性だ。第一に、感情をストレートに伝えるもの:'Never Forgive a Traitor's Bouquet'。第二に、簡潔で力強いもの:'Bouquet of Vengeance'(副題で絶対の拒否感を補強する手もある)。第三に、語り手の決意を前面に出すもの:'No Forgiveness for Betrayers'。それぞれ狙いが違い、マーケットや作品のトーン次第で選ぶべきだ。
長年復讐譚を読み込んできて、例えば'The Count of Monte Cristo'のようにタイトルで期待感を作る作品は、言葉の重さとリズムを何より重視している。私は、英語タイトルは短く、引っかかりがあり、作品の肝を補完する副題をつけるのが現実的だと感じる。最終的には原作の美学を損なわずに目を引く表現を選ぶことが鍵だと思う。