没落の美学を描いた作品といえば、まず思い浮かぶのは『ゴッドファーザー PART II』だ。コッポラの傑作は、権力の頂点に立ちながらも崩壊していく家族の運命を、壮大なスケールで描き出す。マフィアという華やかな世界の裏側にある孤独や裏切りが、暗い輝きを放つように表現されている。特にアル・パチノ演じるマイケルの変貌は、栄華から没落への道のりを痛切に感じさせる。
日本の作品では『乱』が圧倒的な存在感を放つ。黒澤明が描く戦国大名の没落は、まるで能楽を見ているような様式美に満ちている。赤い城炎が舞い散る中で、権力者の狂気と悲哀が対比的に映し出される。衣裳やセットの鮮やかさがかえって虚無感を際立たせ、美しい崩壊というテーマを昇華させている。
アニメーションの分野では『カウボーイビバップ』の終盤が印象的だ。スパイクの過去が明らかになるにつれ、彼の生き様そのものが一種の美しい没落として浮かび上がる。ジャズのようなリズムで紡がれる物語が、最後には静かな諦念へと収束していく様は、他の追随を許さない完成度だ。