古い社や石段を見つけるといつも胸が高鳴る。京都には
丑の刻参りにまつわる伝承が色濃く残っていて、雰囲気を確かめるにはまず社寺を歩くのが手っ取り早い。特に縁切りや怨霊伝承と結びつく場所として知られる安井金比羅宮は、礼拝の形跡や説明板から当時の信仰のあり方を読み取れるのでおすすめだ。境内の石に触れたり、掲示を丁寧に読むだけで、言い伝えのリアリティが伝わってくるのを感じた。
伝説や物語の側面を掘り下げたいなら、古典演劇にも目を向けてほしい。能の『橋姫』などに描かれた怨念や呪術の表現を知ることで、丑の刻参りがただの怪談ではなく当時の人々の感情表現だったことがよく分かる。僕自身、能の演目解説を併せて読むと、史跡巡りが何倍も面白くなった。旅の途中で古文書や伝承解説の看板を見つけたら、時間をとって読み込んでみてほしい。