耳を澩ますと、音だけで場面が組み立てられていくのに夢中になることがある。僕は'陰陽師'のサウンドトラックを思い出すが、あの作品は雅楽的なフレーズと不協和音を巧みに混ぜて、
丑の刻参りのような執拗で冷たい儀礼性を表現している。低音の持続音が身体に染み込み、鈴や金属音が断続的に鳴ることで、まるで呪いが少しずつ結びついていく過程が耳で追えるように感じる。
そのうえで、間奏に入る「静寂」の扱いが肝心だ。音が消えた瞬間に聴覚が鋭くなるため、小さなノイズや呼吸音までもが異様に浮かび上がる。僕が好きなのは、旋律が明確に提示されないことで余白が増え、聞き手の想像力が音楽と結びついて恐怖や執念を補完してしまう点だ。こうしたサウンドデザインは、儀式の機械的な反復性と個人的な恨みや悲哀を同時に伝えてくれる。