館内では見たい“核”を3つ決め、それを中心に逆算するのが僕の定番ルートだ。たとえばまず象徴的な建物群と州室(ステートルーム)を短時間で回り、そこから旧マスター(絵画)展示へ移動してレンブラントの'The Return of the Prodigal Son'をじっくり見る。その後、機械式の名作である'The Peacock Clock'があるコレクションへ寄ると動く展示の魅力に触れられる。建物が広く展示が分散しているので、同じフロアで完結する見どころを固めれば移動のロスが減る。
古いガイドブックをめくるような気持ちでエルミタージュの名画群を思い返すと、まず頭に浮かぶのはレンブラントのあの重厚な群像だ。僕は何度か展示室の前で立ち止まり、光と影の扱い、人物の心理描写に魅せられた。特に『Return of the Prodigal Son』のような傑作は、絵画史の教科書で学んだ概念が実際に息づいていることを教えてくれる。
他にも見逃せない画家がたくさんある。ティツィアーノの色彩の豊かさ、ルーベンスの力強い筆致、ヴァン・ダイクの洗練された肖像術、エル・グレコの独特な伸びやかなフォルム、そしてベラスケスの写実性――それぞれが異なる時代と美意識を代表していて、並んで展示されていると絵画の多様性を体感できる。僕は毎回、どの部屋でも新しい発見があるのが好きで、そうした巨匠たちの作品群はエルミタージュを訪れる理由の核になっている。最後に、単純に名画を数えるだけでなく、そこに流れる歴史や技術の伝承を味わうのが楽しいと結んでおく。