あの旋律が最初に流れた場面を思い出すと、弦楽の細やかな震えが真っ先に耳に残る。僕はそのとき、『鋼の錬金術師』の
エドワード像がどのように音で描かれるかに釘付けになった。音楽監督は彼のテーマに主にソロのヴァイオリンを据え、時折ピアノで温度を変えながら語らせている。ヴァイオリンの高音域が持つ切なさと、ピアノの控えめな和音が作る余白が、エドワードの強さと脆さを同時に伝えてくる。
映画的な場面では弦の重ねが感情を増幅し、戦闘や決断のシーンではヴァイオリンが速いフレーズで突き進む。反対に内省的な瞬間では単音の旋律がぽつりと残り、観客に余韻を残す手法が徹底されている。こうした楽器配置はキャラクターの動機や背景に寄り添い、単なる「テーマ曲」を越えた人物描写になっていると感じた。