あなたと私、ここで決別しよう
田畑家が破産したあの日、田畑陸斗(たはた りくと)は遺書を残し、一人雪山へと姿を消した。自死を選んだのだ。
私は必死に、陸斗を追って雪の中を十時間も探し回った。
心が折れそうになったその時、陸斗の秘書がSNSで陸斗のプロポーズを生配信しているのを目にしたのだ。
彼の友人たちがコメント欄でからかっていた。
【もうすぐ花婿になるんだろ?花嫁さんが怒るんじゃないか?】
彼の返信は、凍てつくほど冷たかった。【彼女には田畑夫人の座を約束しただけだ。それ以上は、夢にも思わないでくれ】
【200億もの資金を投じて嫁いできたのに、こんな仕打ちに甘んじるのか?】
スマホの向こうで、嘲笑う陸斗が文字を打ち込む姿が目に浮かんだようだ。
【200億の資金で田畑夫人の座を手に入れるなら、彼女も損はないだろう】
【彼女がいなければ、陽菜を海外に追いやることもなかった。この数日は、陽菜への償いだ】
私は拳を握り締めて、静かに、陸斗に関する全てを燃やし尽くした。
結婚式当日、陸斗は狂ったように私を探し回った。
けれど、道の向かいにある高級な披露宴会場では、私は別の男性から贈られた婚約指輪をはめたばかりだった。
陸斗は知る由もない。
彼が別れのカウントダウンを数えている間、私もまた、別の誰かに嫁ぐ準備を進めていたのだ。