息子が夫の初恋をママと叫んだから、転生後は堕ろすことに決めた
結婚式前、私は妊娠二ヶ月だと判明した。
神崎南(かんざき みなみ)はほろ酔いで私のお腹を撫でながら、冗談めかして言った。
「真夏(まなつ)、俺、まだパパになる準備ができてないんだ。この子は一旦諦めないか?」
私は心が枯れた湖のように静かに答えた。
「ええ、いいわよ」
前世、私はどうしてもこの子を産もうと決めた。その時、小野夕木(おの ゆうき)が流産してしまい、妊娠しづらくなった。
南はそのことで私を恨み、結婚後は冷たくなりきった。
そして私は難産で死にかけてようやく産んだ息子さえ、泣きわめいて夕木をママと呼びたがった。
その後、私は交通事故で大出血を起こした時、南と息子は私の前を冷たい目で素通りした。
夕木の出産に駆けつけるためだった。
上の階で、私は血の海に沈んだ。
下の階で、彼らはペンライトを振りかざし、新しい命の誕生を共に祝っていた。
生まれ変わった今世、私はもう自分を捨てて、間違った道を歩みはしない。
研究所長に電話をかけた。
「極地探検、参加させてください」