皇子軍の凱旋を祝う宴会が行われた。
周りを見渡すと一目で分かった。
モスグリーンの洗練された第二騎士団の団長服を着ている紫色の瞳。
たくさんの貴族に囲まれていて近づけないが、彼がきっとカルマン公子だ。
知る限り第二騎士団が出兵したことはなく、彼自身も戦場で剣を振るどころかカバン1つ持ったことないような坊っちゃま感があった。「良かった⋯⋯」
レノアと数人の騎士たちに囲まれて話しているライオットを見て安心した。彼を慕ってくれる人がいて、彼には孤独を感じない瞬間も確かにあるのだ。カルマン公子と思しき人が庭に出るのが見えたので、
私はアランに少しお散歩してくると言ってから彼を追いかけた。♢♢♢
「アーデン侯爵令嬢、私に何かご用ですか?」
突然振り返ったカルマン公子に驚いてしまった。「そんなに私を追っかけて来ても遊んではあげられませんよ。あなたは皇太子殿下のおもちゃなんだから」
見下したような言動と、冷ややかな紫色の眼差しに言葉を失った。私が皇太子妃になろうと皇后になろうと紫色の瞳を持ったこの人には見下され続けるのだろう。
(皇子とは名ばかりのライオットのように⋯⋯)レオハード帝国は身分制度も厳しいが、それ以上に血筋を重んじていた。
紫色の瞳は最上級の血筋を示す。この世界は生まれ、血筋が全てなのだ。
私たちの世界のように、努力が報われたりすることもない。「また、6年以上前のことを言いに来たのですか?」
(6年以上前のこと?)ちょうど6年程前にエレナとアランが婚約したが、その少し前にライオットの母親が不審死を遂げたと聞いていた。
(まさか本当に彼がライオットの母親を殺した犯人なの? エレナは犯人がカルマン公子だと知っていたの?)「贅沢な暮らしがしたいがため息子を使って皇室に入る女の話をまたされるのですか?」
彼が面倒くさそうに吐き捨てたその言葉に私は目を見開いた。初めてライオットに会った時、彼が自分の母親を揶揄する時使ったセリフ