お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい

お持ち帰りした異世界の皇子を返品したい

last updateLast Updated : 2025-06-24
By:  専業プウタUpdated just now
Language: Japanese
goodnovel4goodnovel
Not enough ratings
27Chapters
623views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

東大合格に浮かれていた松井えれなは、歩きスマホの最中に車に轢かれレオハード帝国のアラン皇太子の婚約者エレナ・アーデン侯爵令嬢に憑依した。 中高を勉強に捧げてきた彼女は、知恵を絞って破滅を回避しようと奮闘する。 彼女に複雑な感情を持つライオット皇子は主人公とは思えない陰湿さで彼女につきまとっては嫌味をいってくるが、なぜか彼女のピンチを救ったりして彼女は彼が気になって仕方がない。 さらに同時期に元の世界で松井えれなに思いを寄せていた三池勝利も独裁者エスパル国王に憑依していた。 エレナはライオットと心を通じ合い、自分の世界で彼と再会する。しかし、異世界でカッコよく見えた彼は自分の世界では冴えなくて⋯⋯。

View More

Chapter 1

1.人生最良の日に異世界へ

「お嬢様、起きてくださいませ。お嬢様」

目が覚めると見慣れない天井だった。

天井?いや、天蓋だ!私は勢いよく目覚める。

「今日は皇太子殿下とお食事のお約束ですよね。準備を始めましょう」

全く、理解できない。皇太子?どういうことだろう。

私は日本の高校生で、今日は東大の合格発表で合格を確認した帰り道だった。

私は親に合格を報告しようとカバンからスマホを出していたら車に轢かれそうになったんだ。

「え! どういこと?」

「どうしました? お嬢様そろそろご準備をはじめませんと」

周りを見渡すと西洋風の煌びやかな家具に囲まれていた。

洋館? そうだ帰りにこの合格の余韻に浸りながら浅草の芋羊羹でも買って帰ろう。

それから、美容院で髪の毛を染めて、ピアスも開けたりして。

オシャレな服も買いたい。

長い受験勉強生活から解放されたんだ。

そんなことを考えているうちに私は美しいドレスに着替えさせられていた。

鏡台の前の椅子に座らせられ、長い髪を結い上げられている?

え! 長い髪? 長い髪であるはずはない。

私はヘアケアなど受験の邪魔だと思い、ばっさりショートカットにしていたはずだ。

それとも急激に髪が伸びたのか? いやいや、それはない。

艶々の金色のウェーブヘアーにルビーのような赤い瞳。

かなりの美人なんだけど、これが私?

ビフォーアフターが別人なんですが。

メイクの力ってコレくらいなのだろうか?

メイクなどしたことがないから分からない。

特殊メイクに近い気もするが。

えっと、大学デビューを目指して金髪にしてカラコン入れたんだっけ。そんなわけはない。

「夢か⋯⋯」

思わず、私は呟いていた。

「そうです。お嬢様は、全ての女性の夢でございます。お美しく、聡明で、未来の皇后陛下でございます」

このメイド服のお嬢さんは何を言っているんだろう。

新手のサービスかしら。

私、合格に興奮しすぎて無意識に秋葉原まで歩いて貴族お嬢様なりきりサービスを受けてる?

「お嬢様では参りましょう」

ノックとともに黒髪に翡翠色の瞳をもった真っ白な騎士服の男性が入ってきた。なかなか良い生地を使っている。

「本格的ね」

思わず呟くと。騎士は不思議そうな顔を一瞬したが、すぐに真顔に戻った。

エスコートをされて馬車に乗る。

外の風景は立派な庭園が広がっている。もしかして、VRの仮想空間かしら。

馬車が揺れに揺れる。気持ち悪い、寝てしまった方がよいかもしれない。

三半規管がそんな弱い方ではないと思っていたのに馬車の揺れは苦手だったようで吐きそうだ。

「到着いたしました。」

騎士にエスコートされ、馬車を降りる。足元がふらつく。

目の前に銀髪にアメジストのような美しい紫色の瞳を持った少年が現れた。

小学校高学年くらいかしら?可愛らしい子ね。ハーフ? 劇団の子かしら。

「も、もうだめ、うげー!!」

馬車から降りて気が抜けたのだろうか、私は、思いっきり嘔吐してしまった。

少年は表情一つ変えず、私を見ている。

固まっていると言っても良いかもしれない。

「侯爵令嬢、皇太子殿下にご挨拶もせずなんたる失礼を」

彼の後ろに控えている御付きの人みたいな男性が慌てたように言う。

「構わない。エレナは体調が悪いようだ。すぐに風呂と部屋の用意を」

少年がそういうと、私はお風呂に連行された。えっと、VR空間で脱ぐのかしら。

ちょっと待って、それは待って。

「侯爵令嬢、整いました」

私は風呂に連れて行かれて、メイド服のお姉さん二人に隅々まで洗われた。

お風呂に浮かぶ薔薇の花びらが綺麗だったが、恥ずかしさに人としての尊厳を失ってしまった気がした。

無になろう。現実逃避しよう。

死ぬこと以外はかすり傷だ。

宇宙に比べれば私はちっぽけな存在だ。

人工衛星から見れば今のこの光景もちっぽけなものに違いない。

様々な五感がこれは現実なのではないかと私に問いかけ続けていた。

部屋で呆然としつつ、現実逃避したい気持ちを抑えながら現状把握をするよう自分を鼓舞し続けた。

認めざるを得ない、私は異世界に転生したのだ。

異世界転生もののアニメやライトノベルが流行しているのは知っていたが現実に本当にあるなんて。

もしかして、私、人生最良の時に死んで転生したの?

将来を考えるなら勉強をするよりもライトノベルを読み漁るべきだったの?

私には年の離れた優秀な兄がいた。

自慢の兄で人間的にも尊敬できた。

父は病院の院長で兄は父の病院を継ぐことを両親から期待されていた。

私は兄と比較されるわけでもなく、すでに優秀な兄で満足している親からすれば関心を持たれない存在だった。

あるきっかけから自分が父の病院を継ぎたいと思っていたが、両親の期待は常に兄にあった。

兄が東大に行ったため、兄より有能であることをアピールするには最低でも東大を目指さなければならなかった。

生まれつきの天才である兄と違い、凡人であった私は中学受験にも失敗した。

凡人でも人の10倍努力をすればいつか天才と戦えると信じ、恋愛も、娯楽、友人も全てを捨てて勉強に時間を割いた。

ライトノベルの世界に転生するようなことがあっても原作など知る由もない。

そうこう思いを巡らせているうちに、ノックとともに先ほどの少年が入ってきた。

「先程はありがとうございました」

私は立ち上がりその少年にお礼を言った。

「そなたは誰だ? 目的はなんだ? 」

「すみません。どうやら、私、この体に憑依してしまったみたいなんです。私は誰なんでしょうか?そなたと私を呼ぶということはあなたはやんごとなき身分の方ですか? 」

私の言葉に少年の表情が少し歪み、紫色の瞳が曇る。

「確かに、完璧令嬢と名高いエレナが、あのような失態をするというよりは、そなたの虚言ともとれる言動を信じた方が良いかもしれないな」

驚いた、こんな現実離れした話を少年は受け入れてくれている。

「え、信じてくれるんですか? あなた神ですか? 」

私は拝むようなポーズを少年に取ると、少年は少し呆れたような顔をして私に言った。

「神ではない。アラン・レオハード。この帝国の皇太子だ。そして、そなたはエレナ・アーデン侯爵令嬢。私の婚約者だ」

「婚約者? 年の差は? あなた、いや皇太子殿下は10歳くらい、私は17歳くらいですよね? あと、同じ名前です。私の本当の名前えれなです。松井えれな」

アランは、少しムッとしたような顔になり、一言返してきた。

「し、失礼な私は12歳だ。そなたは17歳であっている。名前が同じか、エレナの中にはいるだけに縁があるようだが、思慮深いエレナとは性格は違うようだ」

エレナはしっかりした子らしい。

「失礼致しました。皇太子殿下。でも、殿下、精神年齢はとても高そうですね。私が嘔吐した時も非難するでもなく迅速に対処してくださった」

私は、彼に感動し感謝した。

ここまで対応能力のある小学生はなかなかいない。

「それは当たり前だろう」

アランは本当にしっかりしている。

「当たり前ではないですよ。今もこうしてありえないような私の話を真剣に聞いてくださっているではないですか」

少年は少し頰を赤くして照れたように押し黙った。

「私、これからこの世界のエレナとしての生を送るのか、また元の世界に戻るのかわかりません」

彼の表情が一瞬曇り、彼を安心させたくて私は続けた。

「でも、これだけは言えます。エレナがこの体に戻るようなことがあった時、彼女が困るようなことはしたくないんです」

彼は私の言葉に紫色の瞳を輝かせると、しばらく人払いをするように外の護衛に伝えた。

「皇太子殿下のエレナが戻るまで私がエレナを演じようと思います」

アランはエレナを大切にしているようだし、皇太子という地位もある。

味方にして助けてもらうのが得策だと思った。

「ありがとう。私もエレナにはよく助けられた。未来の夫としてエレナにできることは何でもしてやりたい」

彼の真剣な表情を見て気が付いた。彼はエレナのことが好きなんだと。

だからこそ、私が本当のエレナではないとすぐに気が付いたのだ。

「エレナが戻ってきた際に困らないよう、そなた自身がこの世界で生活できるように私も取り計らう」

彼が少し寂しそうな顔をのぞかせた。

彼も彼のエレナが戻らない可能性に気が付いているのだろう。

「私、努力の天才なんですよ。任せてください」

彼を少しでも元気づけたくて私は胸を張って言った。

「ありがとう。では、これからそなたに新しい家庭教師をつける。彼女にだけはそなたの事情を話そう」

「こちらこそ、ありがとうございます。お任せください。このエレナもなかなかだと殿下に言わせてみせます」

こうして、私の秘密特訓の日々がはじまったのであった。

アランが紹介してくれたのは彼の乳母だったスカーレット伯爵夫人だった。

私をなんとかしようと、必死になり厳しくしてくる彼女がありがたかった。

たまに、私にあまり関心のなかった自分の母の姿と比べ寂しくなったが、

期待をしてくれているスカーレットやアランに応えたくて寝る間もおしみ努力をした。

日々、窓の外を見るしか息抜きのない時間の中で私はどうしても気になることがあった。

アーデン侯爵邸の護衛騎士たちの勤務態度だ。

しょっちゅう休憩をとっているし、お昼時には誰もいない時もある。

お昼になると、なかなか戻ってこない。

日本でも地方公務員がたまにやると言われる中抜けってやつだろう。

侯爵と侯爵夫人が領地の方に行っていて留守だからなのか、それにしても目に余る。

これだけ、豪華な邸宅だしっかり守ってもらわないと。

強盗でも入ったらどうするのだろうか。

「この侯爵邸の勤務表を見せて頂けるかしら?」

侯爵邸は騎士団を持っていて有事には出動もしたり、時には私の護衛をするらしい。

黒髪に翡翠色の瞳を持ったエアマッスル副団長が全騎士のスケジューリングをしていると聞き私は彼を呼びつけた。

騎士たちは2交代の12時間勤務で、4日働いて1日休むという形をとっていた。

昼と夜の担当の人は基本的に固定らしい。

午前と午後の8時に交代をする。

お昼や休憩はできる限り重ならないように、随時とるようにしているということだった。

「勤務の仕方、こんな感じに変えてくれる?」

私の考えた勤務は8時間の3交代勤務、

午前5時から午後1時、午後1時から午後9時、午後9時から翌朝5時だ。

これらをA勤務、B勤務、C勤務とし、

全騎士がA、B、C、休、A、B、C、休、休

という順番で勤務するのだ。

A勤務、B勤務、C勤務から始まる騎士にわけ、必ず誰かが出勤し全ての時間の勤務を経験できるようにした。

「食事休憩などの休憩は必ず勤務時間外にとってね。勤務時間は仕事に専念すること。それから夜間勤務は手当もつけるから」

優しい微笑みを浮かべるよう意識しながら、新しいシフト表を出しながら説明する。

「夜間勤務に手当がある上に、2連休があるんですか?」

エアマッスル副団長は、飛び上がりそうに喜んだ。

「そうよ、2連休もあれば家族に会いに行ったり、剣術の訓練をしたりブラッシュアップもできるでしょ」

自主的に訓練はして欲しいものだ、侯爵邸の騎士団は見るからに頼りない。

「自分はもちろん副団長として訓練に励みます」

エアマッスル副団長が得意げにいう、有言実行を願うのみだ。

「じゃあ、今日からこのシフトで勤務してくれる?」

もちろん受け入れてくれるものだと思っていた。

「あ、でも、新しい勤務でよいか侯爵夫人にお伺いして侯爵様に裁可して頂かないと」

夫人にお伺いをたてるだなんて、かかあ天下なお宅なのかしら。

「侯爵の留守時として緊急に私が裁可することはできないの?」

3人家族のようだから、当然、侯爵家の人間として家に残っている私が裁可できるものだと思っていた。

「一応、軍に関わる裁可は命に関わるものですので成人してからとの決まりなんです」

帝国では18歳で成人らしい、エレナは再来月には18歳になるとのことだった。

「じゃあ、これはあなたが考えたってことで、試しに今日からこのシフトでやってみて、お父様たちが戻り次第そのお試し期間の成果とともに提案するのはどうかしら?」

エアマッスル副団長に恩を売っとくことにした。

「え、いいんですか?」

彼は、ほくそ笑みながら言った。

まあ、脳筋には思いつかないだろうし、知恵を分けてあげよう。

「君の手柄にすると良いってやつよ」

彼の肩を叩きながら言ってやると副団長は上機嫌で他の騎士たちの元への去っていった。

「超ブラック企業へようこそ。脳筋は扱いやすくていいわ」

部屋で1人呟きながら考える。 

8時間休憩なしの勤務なんてとんでもないけれど、

実際、私を護衛することになったら、それくらい集中力を続かせられるようにして欲しい。

朝、昼、夜注意するべきことは違うのだから全員が全ての時間帯を経験してもらった方が、

突然の離職などにも対応しやすいだろう。

成人してから裁可できるものなど、帝国法には独特のきまりがあるらしい。

しっかり、頭に叩き込んでおく必要がある。

新しい勤務のプランも副団長が考えたことにして結果的に良かっただろう。

侯爵や侯爵夫人が自分の娘に他人が憑依していると気が付いた時どういう反応をするか分からない以上、

気が付かせないように注意した方が安全だ。

これまで、エレナがしなかったような事には手を出さない方が無難だろう。

1ヶ月が経った時、私の完璧令嬢育成計画の発表の舞台が訪れた。

第一皇子の凱旋を祝う宴会だ。

「いざ、新生エレナ・アーデンの初陣じゃ!」

朝から入浴をしたり準備をして、夕方やっとドレスという戦闘服を着た私は秘密アイテムを持って馬車に乗った。

ナンテンである。乗り物酔いには生葉を噛むとよいらしい。

日本でも民間薬としてよく用いられ、果実には鎮咳作用があり、生の根は頭痛に効くらしい。

私がなぜこのようなことを知っているかというと、勉強の息抜きに雑学を極めていたからだ。

東大に入学したら東大生タレントとしてクイズにでも出る可能性があるかもしれないと思ったのだ。

高校生クイズにも出ようかと思ったが、一匹狼だった私には一緒に出る仲間がいなかった。

青春は大学入ってから、謳歌すれば良い。

私は、自分にそう言い聞かせながら努力を重ねてきた。

日本の薬局で売っている酔い止めとまではいかないが、

私の秘密アイテムも効果を示し、私はそこまで酔うことなく初めての戦場に到着したのだ。

「皇太子殿下にエレナ・アーデンがお目にかかります」

「今日は体調が良さそうだ。」

アランが安心したような表情で私に手を差し出した。

1ヶ月の私の成果を見たら、きっと彼を安心させられるはずだ。

礼節を身につけたくさんの知識を得てきた。

さあ、いざ本番だ。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters

Comments

No Comments
27 Chapters
1.人生最良の日に異世界へ
「お嬢様、起きてくださいませ。お嬢様」目が覚めると見慣れない天井だった。天井?いや、天蓋だ!私は勢いよく目覚める。「今日は皇太子殿下とお食事のお約束ですよね。準備を始めましょう」全く、理解できない。皇太子?どういうことだろう。私は日本の高校生で、今日は東大の合格発表で合格を確認した帰り道だった。私は親に合格を報告しようとカバンからスマホを出していたら車に轢かれそうになったんだ。「え! どういこと?」「どうしました? お嬢様そろそろご準備をはじめませんと」周りを見渡すと西洋風の煌びやかな家具に囲まれていた。洋館? そうだ帰りにこの合格の余韻に浸りながら浅草の芋羊羹でも買って帰ろう。それから、美容院で髪の毛を染めて、ピアスも開けたりして。オシャレな服も買いたい。長い受験勉強生活から解放されたんだ。そんなことを考えているうちに私は美しいドレスに着替えさせられていた。鏡台の前の椅子に座らせられ、長い髪を結い上げられている?え! 長い髪? 長い髪であるはずはない。私はヘアケアなど受験の邪魔だと思い、ばっさりショートカットにしていたはずだ。それとも急激に髪が伸びたのか? いやいや、それはない。艶々の金色のウェーブヘアーにルビーのような赤い瞳。かなりの美人なんだけど、これが私?ビフォーアフターが別人なんですが。メイクの力ってコレくらいなのだろうか?メイクなどしたことがないから分からない。特殊メイクに近い気もするが。えっと、大学デビューを目指して金髪にしてカラコン入れたんだっけ。そんなわけはない。「夢か⋯⋯」思わず、私は呟いていた。「そうです。お嬢様は、全ての女性の夢でございます。お美しく、聡明で、未来の皇后陛下でございます」このメイド服のお嬢さんは何を言っているんだろう。新手のサービスかしら。私、合格に興奮しすぎて無意識に秋葉原まで歩いて貴族お嬢様なりきりサービスを受けてる?「お嬢様では参りましょう」ノックとともに黒髪に翡翠色の瞳をもった真っ白な騎士服の男性が入ってきた。なかなか良い生地を使っている。「本格的ね」思わず呟くと。騎士は不思議そうな顔を一瞬したが、すぐに真顔に戻った。エスコートをされて馬車に乗る。外の風景は立派な庭園が広がっている。もしかして、VRの仮想空間かしら。馬車が揺れに揺れる。気持ち
last updateLast Updated : 2025-05-09
Read more
2.未来の花嫁に挨拶したらどうだ? (アラン視点)
エレナ・アーデン侯爵令嬢、彼女と初めて会ったのは私が6歳の時だった。完璧な礼法を身につけ、美しく実年齢より大人びて見える彼女は兄上の婚約者になる予定であった。兄上は立太子すると同時に彼女と婚約することになっていた。立太子することが、アーデン侯爵家がエレナを婚約者として差し出す条件だったと聞いている。ライオット・レオハード、このレオハード帝国の第一皇子。彼女の一つ年上で当時13歳になる兄上は燃えるような赤い髪に光り輝く黄金色の瞳を持ち、すらりとした長身に、武芸に長けていた私の憧れであった。兄上の赤い髪とエレナの赤い瞳、そしてエレナの金色の髪に兄上の黄金の瞳。兄上とペアで作られた金糸をまとった真っ赤なドレスを着たエレナ。成人をしていてもおかしくないように大人びた2人はお似合いで、並び立つと、その神々しさに周りは息を飲んだ。初対面のエレナと軽い挨拶だけを交わした日から1週間後、両陛下と私、アーデン侯爵夫妻とエレナでお茶の席が設けられた。「本日は皇帝陛下がお話があるということで、庭園の方へお越しください」帝国歴史の授業を終えた私が言われるままに庭園へ向かうと、美しく整えられ、赤いバラが咲き誇った庭園の真ん中のガーデンテーブルに、両陛下、アーデン侯爵夫妻と銀糸をまとった紫色のドレスを着たエレナがいた。「アラン・レオハード皇子殿下に、エレナ・アーデンがお目にかかります」見惚れるような美しい動作でエレナが挨拶をする。兄上の隣にいた時に着ていた彼女の瞳と同じ赤色のドレスに比べて、紫色のドレスは似合ってなかった。「あら、侯爵令嬢の美しさに見とれているのかしら。素敵でしょう?令嬢の美しさが際立つように私がプレゼントしたのよ」母上の言葉に少しづつ状況が理解できてきた。皇室の仲間入りをするから皇室の象徴である紫色のドレスを着せているということか。しかし、続いて聞こえてきた父上の言葉は私の理解の範疇を超えていた。「未来の花嫁に挨拶したらどうだ? 」「は、花嫁?」言葉が続かなかった。だってアーデン侯爵令嬢は兄上と婚約するはず。表情管理は得意なはずが、この時の私はおそらく皇子とは思えない間抜けな顔をしていただろう。聞きたいことはたくさんあったのに、拒否権などないと言いたげな皇帝陛下の視線に掻き消され出てこなかった。そのあと、どのような時
last updateLast Updated : 2025-05-31
Read more
3.あーもう、ネタバレ禁止!
アーデン侯爵邸まで送っていくというアランの提案を断り、宴会場を出て庭園を散歩した。とりあえず冷静になりいつもの自分を取り戻したかった。ただ、第一皇子ライオット・レオハードとレノア・コットン男爵令嬢の姿に、松井えれな時代に見た、とある日の光景を思い出し震えが止まらなくなってしまったのだ。東大受験の前日、私はいつものように電車で参考書を読んでいた。「あー、それ最終巻出たんだ。私も後で買いにいこー」向かいの茶髪の女子高生の大きな声が電車内に響いた。すると向かいのオシャレメガネをかけた女子高生が本から目を離さず答える。「ライオットとレノアがハッピーエンドでよかった」「あーもう、ネタバレ禁止! 」茶髪女子が拗ねたようにいうが、表紙が明らかに赤髪男とピンク髪女のウェディングの絵だ。すでに表紙でネタバレをしている。それにしても参考書を読んでいる私がブックカバーをかけているのに、恥ずかし気もなくあんな俗本を電車で読むなんて。「一番良かったのは、アランとエレナが破滅したとこかな」メガネ女子はネタバレに余念がなかった。「だからネタバレ禁止って言ったじゃん。アニメも楽しみだね」2人のオタク女子高生が楽しそうに話していた。私は、自分の記憶力に感謝した。友達同士楽しそうに話す女子高生が羨ましくて聞き耳を立てたわけではない。昔から一度聞いたことは忘れないところがあった。しかし、何であの時あの本に興味を持って購入しなかったのか今は悔やまれる。あの時の私はしょーもない本、読んでないで勉強しろよと思ったのだ。視野が狭かった。こんなことになるのなら見識を広める為に読んでおくべきであった。まあ、今となってはあとの祭。「私は今、あのライトノベルの世界にいるんだ」現実主義だと自負しているが、状況がそのファンタジーな事実を認めさせた。キラキラした紫色の瞳をした実年齢よりも成熟した精神をもつ優しい少年アランのことを思い出す。「小学生を破滅させる
last updateLast Updated : 2025-06-01
Read more
4.卑しい踊り子の血を引いているではありませんか。
私は昨日のメイとの話を部屋で整理していた。一番驚いたのは私のこの世界の母にあたるミリア・アーデン侯爵夫人が、皇后陛下の妹君であり、つまりはアランは私の従兄弟にあたるということだ。「まったく、どこのハプスブルグ家よ」6歳近くも年下の従兄弟と結婚なんて自分の価値観とは離れすぎていて、エレナはよく受け入れていたものだと思った。そして、アランと婚約する前はライオットが侯爵邸に度々訪れていたらしい。「お嬢様、メイには分かっておりましたよ。ライオット様といらっしゃる時ご無理をされているということ。政略的なものとはいえお嬢様のような完璧なお方があのような下賎な血筋のものと結婚だなんてありえませんもの」彼女は差別意識が強い人のようだった。「ライオット皇子殿下は皇族よ」皇族に対して、平気で侮辱するのは酔っているとはいえ危ない。「卑しい踊り子の血を引いているではありませんか」メイは平民でありながら、平民の血を嫌悪しているように思えた。「お嬢様、私はお嬢様にどこまでもついていきます」そして、エレナにものすごく心酔している。私の住んでいた世界では、差別は恥ずべきことだった。その価値観が染み付いている私には、メイの発する差別意識の染み付いた言葉の数々は居心地が悪かった。なぜ、他に爵位を持つメイドやベテランのメイドがいるのにメイがエレナの専属になったのか疑問だった。エレナが12歳の時にメイを専属のメイドに指名したらしい。おそらく私が違和感を感じる彼女の価値観はエレナにとっては心地よかったのだろう。そうでなければ、酔っていたとはいえ皇族の血を咎めたりしない。ライオットの血筋を卑しいと感じるであろう差別主義者。それが、メイから見たエレナなのだ。アランの兄であるライオットと婚約するはずだったのに、6歳近くも下の従兄弟と結婚というのは彼女にとって納得のいくものだったのだろうか。婚約当初12歳のエレナが6歳のアランに恋するとは思えない。親に言わ
last updateLast Updated : 2025-06-02
Read more
5.エレナ、お前も乗れ。
馬車に揺られてもう2日目だ。隣国のエスパル王国での国王陛下崩御にともない、新国王の戴冠式が行われるとのことだった。アランと共に参加することになるが、彼は帝国内の視察中でいわゆる現地集合という形になった。「きゃー!!」ものすごい勢いで馬車が揺れて馬車の窓に頭をぶつけた。「奇襲です。私がお呼びするまで馬車の中で身を潜めてください」少し焦ったようにエアマッスル副団長が窓を覗き込んで私に言った。外を覗くと武装した騎士たちが馬車を包囲している。「誰なの?」窓に飛び散ってくる血の間から、敵の剣の柄の部分に紋章のようなものが見えた。私はひき逃げの車のナンバーを記憶するかのようにその紋章を記憶した。道中が長いこと、エスパル王国と帝国は実は今にも戦争になりそうな緊張状態であることから、私について来たアーデン侯爵家の騎士は50人程いた。しかし、ざっと見た感じ敵はその3倍はいる。かといって、私にできることは何もない。無力程、恐ろしいものはない。「こんなところで死ぬのは嫌、でも⋯⋯」死への恐怖と追い詰められたことでおかしな考えが浮かぶ。「死ねば元の世界に戻れるかも、これから楽しい大学生活を送れるじゃない」「侯爵令嬢申し訳ございません。我々もこれまでです。令嬢だけでも私がなんとかお守りします。馬車を出てください。私が抱えてお逃げします」扉の外は敵も味方も血だらけだった。怖い、ここから出ても安全だとは思えない。私は首がもげそうなくらい首を振った。「帝国軍だー! 赤い獅子だ! 退散しろ!」帝国軍? 味方が来たの?私を抱えようとするエアマッスル副団長の肩越しにみると、燃えるような真っ赤な髪が見えた。「ライオット!」いつの間にか敵は退散し、ライオットが私を呆れたような目で剣をおさめながら言った。「耳をつんざくような、貴族令嬢とは思えない金切り声の正体は侯爵令嬢でしたか。」「皇子
last updateLast Updated : 2025-06-03
Read more
6.機会をみて皇子殿下を誘惑してきなさい。腐っても皇子だ!(レノア視点)
「レノア! ライオット・レオハード第一皇子殿下がリース子爵領でおきてる反乱の制圧に向かわれるらしい。お前も救援支援として参加しなさい」コットン男爵、血が繋がっていることさえ恥ずかしくなるような私の父は、娘がどうなろうとどうでも良いらしい。リース子爵領はうちの領地と同じくらい田舎で貧しい。鉱山などの資源もなく土壌も悪く食物を育てるにも向いていない。そこで私の父と同じくらい欲が深いリース子爵が自分が贅沢がしたいがためにしたことは、土壌に対し何ら対策を施すわけでもなく、領地の税率を上げたことだった。そこに暮らす民も貧しく他の領地に引っ越すような余力もない。どうしようもなく追い詰められ、反乱を起こしては制圧されるそんなことの繰り返しだ。下位貴族の領地の反乱などに駆り出される不遇の皇子、それがライオット・レオハード皇子殿下だった。「機会をみて皇子殿下を誘惑してきなさい。腐っても皇子だ」本当に下衆な父親で吐き気がする。私の母は男爵邸で働くメイドだったが、私を産んだ後、数少ない男爵邸の宝飾品を持って逃げてしまった。逃げ出した母が惜しいのではななく失った宝飾品が惜しくてたまらないコットン男爵は、私を換金したくて堪らないらしい。貧乏男爵令嬢で平民の血が混じった私は周囲から卑しい血筋などと心無い言葉を浴びさせられてきた。しかし、そんな私から見てもライオット・レオハード皇子殿下の境遇は失礼ながら可哀想に思えた。弟君が生まれて以来、皇太子の座も、母親も、婚約者になる人も全てを奪われ、死を望まれ、戦地に送られる皇子。「了解しました」子爵領の反乱は、生きるか死ぬかの激しいものだと聞いた。父は私が戻って来なければ食い扶持が減ったと喜び、皇子の誘惑に成功したら大喜びするだろう。しかし、反抗したところでムチで打たれるだけだ。ならば、父から離れられる機会と思い皇子軍に参加しようと思った。「レノア、こっちをお願い」救援に参加しているのは平民の娘ばかりで苗字がなく、
last updateLast Updated : 2025-06-04
Read more
7.こんな髪あんたにくれてやるわよ。
「レオハード帝国、アラン・レオハード皇太子殿下とエレナ・アーデン侯爵令嬢のおなーり」入場を知らせる声と共にアランにエスコートされながら会場に入った。戴冠式には間に合わなかったが、その後の宴会になんとか間に合ったようだ。「奇襲を受けたと聞いたが大丈夫か?」アランが心配そうに聞いてくる。「ドレス以外は無傷です。後ほど詳細をご報告させてください」ダンスをしながら彼の質問に答える。流石に、敵地でするにはリスクがありすぎる内容の会話だ。ダンスを終え周りを見渡す。水色髪がエスパル王国の貴族だろう。その時、殺気を漂わせる視線に気がつく、振り返れば欲深そうな水色の瞳をした老人が私を見ていた。あれが、ヴィラン公爵ね。年齢を重ねるほど顔に内面がでるとはいうけど、一筋縄ではいかなそう。ライオットの話だと現ヴィラン公爵が宰相である間に3代国王が変わっているらしい。そうなると、おそらくエスパル王国での発言力も相当なものだろう。考えを巡らせていると、急に周りが騒がしくなった。なぜだか周りの視線を集めている気がする。「エレナ・アーデン侯爵令嬢。令嬢と踊る栄光を私に与えてくれませんか?」私に声をかけて来た彼は誰だろう。豪華絢爛な衣装に水色髪に水色の瞳、20代後半くらいのその男は周囲の視線から察するにこの宴会の主役。「光栄です、クリス・エスパル国王陛下⋯⋯」私は彼の手をとって踊りはじめた。なんとなく辿々しいステップに感じるのは、戦争に興じて社交には興味がないということなのだろうか。ライオットから前国王は独裁者で、クリス・エスパルも残虐で切れ者だと聞いていた。しかし、先ほどのヴィラン公爵の視線に比べて威圧感を感じない。むしろ、子犬のようとも言える人懐こさを感じる眼差し、見覚えがるようなこの視線。♢♢♢私は高校時代、一番苦手だった人物、三池勝利を思い出してた。高3の時、私の後ろの席に座っていた人物。髪を金色に染め
last updateLast Updated : 2025-06-05
Read more
8.俺の子じゃないだろ、できがよすぎるー(三池視点)
小さい頃から、俺、三池勝利は賢かった。三兄弟の長男として生まれたが、弟たちの自慢の兄であり、両親の自慢の息子であった。小学校5年生の時、学校の前で無料で模試が受けられるというチラシが配られていた。週末一緒にサッカーをする予定だった友達がその模試を受けるというのに誘われて、受けた模試で何と俺は全国で7位をとってしまったのだ。その後、授業料無料で特待生として迎えると言われて塾に通うことになった。サッカーの時間が削られるのが嫌だと感じたのは初めだけだった。その後サッカーが上手い転校生が入ってきて、俺様を讃える声が激減し、俺は勉強に専念することにした。俺はこっち側の人間だったのか、サッカーは脳筋たちに任せよう。塾での勉強は格段に難しかったが、だからこそ攻略しがいがあった。特に、算数はパズルのようでゲームをクリアするような感覚が好きだった。「俺の子じゃないだろ、できがよすぎるー!」派手な金髪の父は俺の成績表を見ては大げさに褒め称えた。「そうよー! 実はこの人の子なのー!」ノーベル賞を受賞した爺さんを指差しながら、派手な赤髪の母が言う。両親は美容師で仕事でも家庭でも24時間一緒なのに物凄く仲が良い。「兄ちゃん本当にすげー!」興奮気味に弟たちが、称えてくる。「兄ちゃん、かっこいー!」俺は弟たちのヒーローであった。中学受験も塾に言われてトップの男子校を受けたが合格。でも、俺は徒歩圏の共学の進学校に進学した。もったいないと言われたら、「近いから」と某少年漫画のキャラクターのようにクールに返した。中学に入学したらモテて仕方ないだろうなと、入学前から悩んでみたりした。そんな俺の快進撃は中学最初の定期テストで撃沈する。お前ら今までどこに隠れていたんだと思うくらい頭の良い奴が多かった。いつも一番で誉められ続けていた俺が上位にくいこんでおらず落ち込んだ。しかし、地元で有名な進学校の制服を着ているだけで家族も近所の人も羨望の目で見てくる
last updateLast Updated : 2025-06-06
Read more
9.どれだけ男好きなんだ?
「全く何を考えているのですか、侯爵令嬢らしくない。国際問題になりますよ」ライオットがバッサリ切った髪の毛先を撫でて来る。周りを見渡すと人気のない庭園の外れまできたようだ。妖しい光をはなつ王宮が少し小さく見える。「ごめんなさい。感情的になってしまったわ」素直に謝ると頭をポンポンとされた。そんな事、誰かにされた事ないので気恥ずかしくなる。「まあ、大丈夫だよ。何か言われたらお祝いに駆けつけたのに奇襲しされて人質にさせそうになり困惑していたのですわ、って言えばいいよ」ライオットが彼らしくなく私の口真似をしながらおどけたように言うものだから、思わず私もくだけた返事をしてしまった。「うん、わかった」なぜだか彼の前にいると素の自分になってしまう。完璧令嬢エレナとはかけ離れた姿を見せてしまっているようなのに、私の正体に疑問を感じないのだろうか。6年程前までは頻繁に会っていたとメイから聞いた。私が何かおかしな事をしても、それは6年の月日が経ったからだと思っているのだろうか。まあ、婚約者乗り換えみたいな真似をしたエレナを憎むのは当たり前だし、憎まれ口を叩きながらも困った時には助けてくれる彼は優しい人なんだろう。さすが、主人公だな、そんな事を思っていると自分でも場違いな発言をしていた。「コットン令嬢とは長いんですか?」鳩が豆鉄砲をくらったような彼の表情を見て私はおかしな質問をしたことに気が付いて気恥ずかしくなった。「アランと侯爵令嬢よりは短いよ」彼が少し意地悪そうな笑みを浮かべながら返してくる。「優しくて、正義感に溢れて素敵な令嬢ですよね」ヤキモチを焼いていると誤解されてはどうしよう。言葉が明らかに脳を通過してない。これ以上は黙った方が良い。「まあ、そうだな⋯⋯」同意しただけなのに、彼が他の令嬢を誉めている事実に心臓が締め付けられる。「2人ともとってもお似合いです。似たもの同士惹かれ合うのですね」ライオットの表情
last updateLast Updated : 2025-06-07
Read more
10.髪は私の命じゃない。
「皇子殿下、すぐにでも帰宅したいのですがお送りいただけますか?」私がライオットを訪問し、微笑みながらそう言うと彼は驚いたように返してきた。「アランは? それに、その髪!」彼は驚いたように私の髪を凝視していた。「まだ日程が残っております。皇太子殿下はまだお残りになるようです。私は負傷した私の騎士も気になりますし、先にお暇することにしました」驚くのも当然だ、私は髪をさらに短くショートカットに切ってしまっていた。「分かった準備するから、少し待ってくれ」ライオットはすぐに数名の皇子軍の騎士と馬車を準備してくれた。「私の騎士たちの様子が気になりますので、コットン男爵邸に立ち寄っていただけると助かります」騎士たちの様子が気がかりだった、容態が急変したりはしていないだろうか。「分かった⋯⋯」私を心配するような揺れる瞳で彼が見つめてくるので、すぐに馬車に乗り込みカーテンを閉めた。主人公だから魅力のパラメーターが200くらいあるのかもしれない。気がつくと彼のことを考えている。(それは今考える必要のないことなのに⋯⋯)せめて、彼を見ないようにして視覚からの情報をカットしないと。帝国貴族は、みんな表情管理が得意で能面のような顔をしているのに、彼は表情管理がほとんどできていない。笑わないようにしよう、感情を読み取られないようにしようとしているのは分かる。しかしながら黄金の瞳に感情が出てしまっていて、その面白さが私のツボにはまり魅力的に見えてしまっているだけかもしれない。今回も、彼の側が一番安全だから彼にアーデン侯爵邸に送るようにお願いしただけで側にいたいわけじゃない。私は馬車の中で情報を整理した。早く私の予想の答え合わせがしたい。エレナの部屋に戻り、メイから情報を聞き出そう。他にも有効な情報が侯爵邸に戻ればあるだろう。私はこの世界のエレナと違って、帝国で権力を持ちたいとは思っていない。ついこないだ来た帝国に対して愛着もない。
last updateLast Updated : 2025-06-08
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status