「仕事をちゃんとしてください⋯⋯転生させるのがあなたの役目です」
頭の中に声がこだまする。聞いたことがないこの声は神様の声だろう。
私は杉崎美香を異世界に転生させず「無」に返した。
容姿に恵まれ意地悪な彼女が私を中学時代に虐めた女に似ていたからだ。「ちゃんとやります⋯⋯すみません。人は力を持つとダメですね⋯⋯」
少しの権力を持たせてやると、その人間の本質が分かると聞いたことがある。私は死んだ人間の行先を決められる権力を持ち、それを自分の思うがままに使い始めていた。「あなたに異世界カイは務まらないのかもしれません。このまま無に返しましょうか?」
頭に響き渡る声に震え上がる程の恐怖を感じた。 「無」になりたいと願った事もあったのに、ここで死んだ人間に関わるたびに「生」に執着したくなる。みっともなくても、生きて何かしたいという感情が湧き起こってくる。
刑期は500年なのに、まだ数日しか経っていない事実に絶望する。「ちゃんと、やりますから⋯⋯どのような方でも自ら神より与えられた命を捨てた私よりは尊い存在だと認識してます」
「無」になるのが怖くて絞り出すように言った言葉と共に、頭の中にこだまする謎の声が消えた。私は異世界転生案内人『カイ』。今日も私の元に来客が来る。死んだ人間に私は選択肢を示す。異世界に転生できるなら、貴方は次はどんな人生を選びますか?
今日もお客様が来た。 高野茉子29歳。 私から見ればとても幸せな人。 顔が良いだけの男。 体育祭で活躍するだけ足が速くて活躍するだけの男。口が上手いだけの浮気性の男。
笑顔が可愛いだけの頭の軽い年下。そんな多くのどうしようもない男たちに振り回されて来た人生だった。
でも、やっと辿り着いた私の幸せ。
「汝 宮坂俊哉は、この高野茉子を妻とし、病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びあっても、悲しみあっても、死が2人を分