Chapter: 第七話 夏の定番カレーライス(その三) ——カシャッ、タンッ、タンタン。(うん、この写真がいいからこれにして……送信っと!)私はスマートフォンのカメラで、出来上がったカレーライスの写真を数枚撮る。写りのいいいものを選択して、恭弥さんにLIMEで送った。もちろん、メッセージも添えて……。(あとは返事が来るまで待つ……その間冷めないうちに食べてしまおう)彼からの返信を待ちながら、カレーライスを食べることにする。「いただきます」手を合わせて食事の挨拶をした後、カレーの皿に添えた木製のスプーンを手に取る。カレーとご飯の狭間の部分をひと口分すくって口へ運ぶ。(おぉ! ガラムマサラをかけたことで、ピリッとしたスパイシーさが増してる)でもそんなに嫌な辛さはなく、大人なら誰でも食べられる辛味が良い。それも加え奥にある甘みや酸味、旨味といったコクのハーモニーが上手く調和されている。(くぅぅ~、やっぱりカレーは美味しいから最高!)一口食べるごとに、どんどん食欲が増していく。時折、カレーに添えた甘めの福神漬けで食感を変えるととまらない。これを食べて、今年も夏バテから乗り越えられたらいいなぁと思っている。——カレーライスを半分くらい食べた頃……。ピコンッ!スマホからメッセージの通知がきた。(あっ、恭弥さんからだ! どんな返事が来たかなぁ?) 
最終更新日: 2025-06-26
Chapter: 第七話 夏の定番カレーライス(その二) ——扉を開け、外へ出てみる……。(うっ! 眩しい……!)青空の天上から、太陽が燦々と眩しく照らしている。梅雨の期間、あまり外へ出ていなかったから尚更だ。目や肌へ日差しの刺激がより感じる。(今日はそんなにジメジメした湿気が少ないけど、これから先はもっと湿っぽくて暑くなるだろうなぁ)しかし、ここでへたれていたらダメと気合いを入れ直す。もちろん念の為、水分補給用のスポーツドリンクも用意している。この時期でも、やはり熱中症には気をつけたいことだ。(よし、行きますかぁ!)家の外の右端にある収納庫へ向かう。メッシュタープやローチェア、焚き火台などを出していつものように作業を開始する。メッシュタープを立て風に飛ばされないように、紐を引っ掛けられるフック付きレンガ調の重しもつけて固定していく。これからの夏は、日差しが強い。側面のうちの二面分だけメッシュの上から日光避けのシートも一緒に取り付けてある。(今日は出入りする面の遮光シート一枚を、屋根にして立てよう)その後、テーブルとローチェアを設置し、テーブルの近くにはトレー付きの焚き火台を置いた。今回も切炭をメインに使用するけど、そのためには着火の素が必要だ。下に乾かして傘が開いた松ぼっくりと細かい枝木、ナタで捌いた細めの木を山の形になる様に組む。(土台は出来たから、先にカレーの材料を持ってきた方が良さそう)キッチンからカレーのルーやカット済みの野菜やお肉、食器などをひとまとめておく。暑さ対策として、食材は保冷剤の入った小さいクーラーボックスに入
最終更新日: 2025-06-26
Chapter: 第七話 夏の定番カレーライス(その一) ——七月初旬のある日の午後。(ぬぅ~暑い……。暑いよう……)季節は、もう夏を迎えている。薄手の長袖から半袖への衣替えも兼ねて、そろそろ部屋の中へ扇風機を設置しようか迷っていた。最近、この時期の昼間は少しずつ暑くなってきた。天気予報では、夏日に近い気温を示す日中も増えている。けれど山奥の気候は平地と違い、朝と夜はまだ涼しい。(長袖の服もそろそろおしまいかなと思ったら、逆戻りもするしどっちを着ればいいのだろう)こんな心境で毎日迷うから困る。特に雨が降ると冷えて肌寒くなるくらい、昼との気温の差が激しい。ただこれから訪れるであろう厳しい暑さに耐えられるのだろうか?そういわれたら、この先は絶対バテるに違いない。身体が、なかなか外の気温に順応してくれないのである。(暑さを凌ぎれるスタミナが欲しくなるし、そろそろつけたいなぁ……)今のままだと身体がドロドロに溶けてしまうくらい、私は夏バテしやすい体質だから尚更だ。夏を乗り切るために、簡単にスタミナのつくスパイシーなものが食べたい。(うーん、夏といえば……。あっ、それに相応しいメニューがあるじゃないか!)そうだと一人で相槌を打ちながら閃いた。(夏……スタミナがガッツリつくスパイシーなもの……カレーだ!)キャンプ飯の定番メニューの一つだけど、まだ作ったことがない。先週の話には触れていなかったものだが……。&
最終更新日: 2025-06-26
Chapter: 第六話 梅雨時の部屋キャンプ(その三) ——数十分後……。(ふぅ、食べたぁ……)ポテトサラダとホットサンドを食べ終えた後、お腹がいっぱいになった。けれど、昼食はこれで終わりじゃない。(最後は、あのデザートが待っている!)デザートを用意する前に、食べ終えたお皿などまとめて片付ける。一度キャンプ部屋から出て、キッチンへ向かう。昼食の締めは、先日に作ったお手製のプリンだ。でもこのプリンは、スーパーの棚に並んでいるプラスチック製のカップのものではない。ココット皿という約三~四センチぐらいの深さがある耐熱性の丸い陶器に入っている。但し、今はカラメルが入っていない状態のもの。(ここからがお楽しみ……)先ほど下準備の際、プリンの上にザラメをかけてある。それを今からガスバーナーの一つ、トーチバーナーで炙る。(お寿司屋さんで魚の表面を軽く炙る時に使うものだけど、我が家でも使うとは思わなかったなぁ)今回のプリンで、クレームブリュレ風にしてみたかったのだ。バーナーのスイッチを入れ、火力を調整したらじっくりザラメに当てる。火に当たったザラメの結晶が、一瞬だけ透明に溶けていく。そしてまた一瞬、黄金色から今度はオレンジの色味ある茶色へと変化していく。(慎重に……丁寧に……)まるで化学反応を起こす、この瞬間を目の当たりで観察しているようだ。でも、真っ黒にならないように細心の注意を払いながら当てていくのがポイントだ。美味しそうな色加減になったところ
最終更新日: 2025-06-09
Chapter: 第六話 梅雨時の部屋キャンプ(その二) ——空き部屋を改め、キャンプ部屋にて。(やっぱり、最初はコーヒーで一服してから……)家の中でいつも使用しているヤカンに水を入れ、シングルバーナーで火をつけた後沸かしてる。時折考え事しつつもクルクルとハンドルを回しながら、手動タイプのコーヒーミルで無心に豆を挽いている。——シュー……。(あっ、そろそろお湯が沸いてくる)マグカップの上にフィルターを入れたドリッパーをセットし、粉状に挽いたコーヒーをその中に入れた。(さて、お湯を入れるとしますかぁ)ゆっくりとドリッパーの中のフィルター周りを注ぎ入れる。一滴が、コーヒーの雫になりポタポタと落ちていく。お湯はフィルターからちょっとずつ通過し、マグカップの中へ入り切る直前に二回目のお湯を注ぎ入れる。お湯を二、三回に分けて、少しづつ継ぎ足す。(コーヒーの香り、いい香りだ……)これが、私のキャンプを行う前の至福のとき。お湯を注ぎ終わったら、ドリッパーを外して受け皿に置く。マグカップを手に取って一服する。(はぁ~……やっぱりこの瞬間が好きだ……。何もかも忘れて落ち着ける時間っていい……)コーヒーを飲んでホッとした後、ボーッとして心が休まる時間。それが都会に住んでいた時でもできたら良いなあ……と思うこともあった。今は山奥の中の田舎暮らしだけど、そんな時間を作れたのは嬉しい。
最終更新日: 2025-06-09
Chapter: 第六話 梅雨時の部屋キャンプ(その一) ——六月後半、ある日の午前中のこと。(うーん……。今日も一日中、雨かぁ……)私は、仕事部屋で窓の外を眺めながら鬱々としている。なぜなら、先週から梅雨入りしたとニュースで流れていたからだ。梅雨時期になると庭でキャンプをすることが出来なくて、悶々とした心が私を襲う。(キャンプが出来ないって辛い……。早く梅雨明けしないかなぁ……)全くできない訳ではないが、雨の降っている山奥の外では冷え込む。オマケに恭弥さんから「風邪引くからダメ」とキャンプを行うことを止められている。私はしょんぼりした顔で、仕方なく雪絵さんから依頼された特集の企画を立てる仕事に戻る。(うーん……)仕事しながら、ふと考えていたことがある。梅雨時に、キャンプみたいことをどうやって体験出来そうなのかということだ。(仕事の企画を早く考えて立てないとだけど……キャンプのことを浮かんでしまったからとそっちのけになっちゃう)どうしても頭の中では、家で何かそれらしいことを出来るものがないか模索してしまう。——数十分後……。パソコンの画面で仕事に向き合いつつ、アイデアを練っているうちにあることを思い出す。(あっ! そういえば、昨日偶然見つけた番組でこんなことしてたわ!)それは、テレビでチャンネルを変えていた時に流れていたバラエティ番組のことだった。
最終更新日: 2025-06-09