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空野瑠理子
空野瑠理子
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空野瑠理子の小説

一通の手紙から始まる花嫁物語。

一通の手紙から始まる花嫁物語。

一通の手紙から始まる、溺愛シンデレラストーリー! 魔を祓う力を持つ者が権力と地位を得る時代。 ボロ家の養女、フェリシアは伯母に虐げられながらも下級料理番としてお屋敷で働き、貧乏な地獄の日々を送っていた。 そんなある日、フェリシアの家に一通の婚約の手紙が届く。 お相手は現皇帝に仕え、軍の中で絶対的権力を持つ軍師長、エルバート・ブラン。 フェリシアは逆らえず、エルバートの花嫁になることを受け入れ、ブラン家に嫁ぐことに。 そんな彼女を待っていたのは、絶世の冷酷な美青年で――!?  異世界で地獄の日々を送ってきた貧乏無能少女の運命が変わり始める。
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Chapter: 34話-5 月明かりの幸せ。
月は今まで見た中で一番美しく、その輝きは穏やかな海面に降り注ぎ、波一つ一つを宝石のように煌かせ、遠くの水平線まで光の絨毯を広げていく。そして足元の岩場に咲く美しき花々は、月光を浴して白く輝き、まるで星々が地上に舞い降りたかのよう。と、美しき光景に心を奪われた時だった。後ろからエルバートに優しく包み込まれる。「ご、ご主人さま?」「今宵、お前とこのように美しき月を見られて本当に良かった」「はい。ご主人さま、月、綺麗ですね」「海も花も月の光で輝いています」こうしてしばらくの間、エルバートに包まれたまま月を眺め、やがてエルバートが手を離すと互いに向き合う。「ご主人さまにお伝えしたきことがあります。聞いて下さいますか?」「あぁ」「ご主人さまが家にご婚約の手紙を届けて下さらなければ、きっとこのような幸せな未来は訪れず、こんなに美しい月も見られなかったと思います」「だからご主人さま、ありがとうございます」「愛しております」(ご主人さまに、この感謝の想いが、愛がちゃんと伝わっただろうか――――)「フェリシア」「は、はい」「私もお前を愛している」「だからもう一度、あの時のように名前で呼んでくれないか?」あの時とは恐らく、初めての夜のことだろう。フェリシアは意を決し、エルバートを見つめる。「…………エルさま」月光の下で名を呼んだ瞬間、エルバートの唇が優しく触れる。とても温かいキスだった。エルバートが唇を離すと穏やかな笑みを零し、フェリシアも優しく微笑む。その後、フェリシアはエルバートと並んで浜辺の流木に座る。すると、どちらからともなく、自然に寄りかかり、肩が触れ合う。そして。(ご主人さまの、この暖かな温もりを、ずっと、ずっと、感じていたい――)と、心の中で思いながら、海を見つめた。どれだけそうしていただろう。フェリシアは昇る日の光で目を覚ました。いつの間にか眠
最終更新日: 2025-07-30
Chapter: 34話-4 月明かりの幸せ。
「あの、ご主人さま? 魔は?」フェリシアは戸惑いながら問いかける。「やはりそう解釈したか。騙した形になってすまない」「私が婚約の手紙を出さなければ、こうしてお前とは出会えなかった」「だから同じように手紙でお前を呼び出すことにした」「お前とここの別荘で今宵、月を見ながら過ごしたくて」(だからいつもと違うお洒落な軍服を着ていたのね)フェリシアが心の中で納得すると、エルバートはフェリシアを離し、近くの別荘に目線を向ける。フェリシアもまた別荘を見ると、朧げではあるが、3歳まで両親と暮らしていた家と同じくらいの大きさの別荘があった。フェリシアは思わず涙する。「フェリシア、その」「もうっ」「ほんとうにすまなかった」「いえ、違うのです。生まれ育った家に帰れたようで嬉しくて……」「そうか」エルバートは安堵したようで、こちらをじっと見つめる。「フェリシア、ビーフシチューを作ってくれないか?」「はい、喜んで」フェリシアは承諾し微笑む。するとクォーツの馬車が遠ざかっていくのが見えた。フェリシアはエルバートとしばしの間馬車を見つめ、やがて馬車が完全に見えなくなると、フェリシアはエルバートと共に別荘まで歩いていく。そして、すぐさま温かみのある厨房でビーフシチューを作り始め、しばらくして完成した赤ワイン煮込みのビーフシチューを居間の木製の椅子に座るエルバートにお出しし、その隣の椅子に座る。すると窓から海が見えることに気づき、横長の机に並んだ状態で座ったまま、窓から時々海を見ながらそれぞれビーフシチューをスプーンですくって食べる。「やはり、お前のビーフシチューは美味いな」「あ、ありがとうございます」「だが、食べさせてくれたらもっと美味く感じるだろうな」(ま、まさか、ご主人さまが、あーんをご所望されるだなんて!)「わ、分かりました。では……」フェリシアはビーフシチューをスプーンで一口
最終更新日: 2025-07-29
Chapter: 34話-3 月明かりの幸せ。
エルバートはユリシーズの封を解き、手紙を取り出し開く。エルバート帝爵、フェリシア嬢、この度はご結婚おめでとうございます。私はハロルドと共に牢を出て貧しい領土に追放され、その地の長と兵士として日々懸命に働いております。私共の命があるのはあなた方のおかげです。これからもおふたりの幸せを心より願っております。読み終わると、フェリシアの両目が潤む。「ユリシーズ殿下、ハロルド様と前を向かれていて良かった」「そうだな」エルバートはユリシーズの手紙をテーブルに置き、ローゼの封を解き、手紙を取り出し開ける。フェリシア、エルバート帝爵様とのご結婚おめでとう。あなたのおかげで毎日有意義に暮らせているわ。あなたは私の誇りよ。ラン、あなたの母もきっと喜んでいると思うわ。これからも頑張りなさいね。「これまでの謝罪もなしか」「良いんです、幸せに暮らせているのならそれで」「そうか、強くなったな」エルバートに頭をぽんと優しく叩かれ、フェリシアは微笑んだ。* * *そして、春が終わりを迎える日。エルバートをいつも通り玄関で待ち続けるも帰って来ない。隣のリリーシャに「エルバート様を驚かせましょう」と提案され、せっかく淡い色調の優雅なドレスを着てお洒落をしたのにこれでは意味がない。「フェリシア様、もうじき帰られますよ、きっと」「そうですね」リリーシャに言葉を返したその時。警備を兼ねながら庭の手入れをしていたクォーツが玄関から駆け入って来る。「只今、アルカディア宮殿の使いの者から手紙が」クォーツに手紙を差し出され受け取ると、その場で封を切って手紙を取り出し開く。至急、アルカディア宮殿付近の花海岸まで来て欲しい。手紙にはそのことだけが記されていた。(ご主人さまが手紙で助けを求めるということはよほどのこと)ルークス皇帝を乗っ取った魔よりも強い魔が現れ、窮地に立たされているとしか思えない。「クォーツさん、今からご
最終更新日: 2025-07-28
Chapter: 34話-2 月明かりの幸せ。
* * *新婚5日目の早朝――廊下を駆ける足音が響く。「ご主人さま!」フェリシアはあるものを手に持ち、居間にいるエルバートまで駆けていくと、エルバートがこちらを見る。「フェリシア、どうした?」「先程廊下でディアムさんから頂きました」フェリシアは手に持っているものを差し出す。するとエルバートは受け取り、その一面を見る。「私達のパレードの様子が書かれた新聞か。完成したのだな」「まだ勤めまで時間がある。ここで共に見よう」「は、はい」返事をし、エルバートとソファーに並んで座るとエルバートが新聞を広げる。新聞には、自分とエルバートの姿がまるで絵画のように美しく愛に満ちた雰囲気で描かれていた。それだけに留まらず、『アルカディア皇国を救ったエルバート帝爵様と祓い姫のフェリシア嬢、壮大かつ幸せなパレードを披露! 世界をも超える祝福に涙!』との事が書かれており、嬉しさと恥ずかしさでいっぱいになる。「あ、あのご主人さま、ずっと気になっていたことが……」「なんだ?」「この結婚指輪は金でなくても大丈夫なのですか?」「あぁ、本来、貴族の結婚指輪は銀より価値の高い金で作るのが普通だ」「しかし、お前が私の髪の色が好きだと言ってくれた。それに応える為、金を銀に変えたのだ」(ご主人さま、わたしの為に……。嬉しいけれど……)「金を銀に変えたら貴族の指輪ではなくなるのでは……?」「あぁ、その通りだ。だから銀を使わず金に銀を混ぜて私の髪色に近いシルバーになるように特注で作ってくれとデザインを聞かれた時に頼み、出来たのがこの指輪だ」「そして、ダイヤも普通は輪の上に乗せるのだが、それだと引っ掛けたりして仕事にならない。よって指輪の中に埋め込むデザインにした」「それで満月のような形になったのですね」フェリシアは納得し、ふとエルバードから目線をずらすと、テーブルに置かれた2通の手紙に気づく。
最終更新日: 2025-07-27
Chapter: 34話-1 月明かりの幸せ。
* * *幸せなど訪れない。ましてや愛されることなどないと思っていた。けれど――――。「フェリシア、こちらを見ろ」フェリシアは玄関の外の扉前で頭を上げる。するとエルバートは優しく微笑み、早朝から手作りした昼食のサンドイッチが入った包みを受け取る。けれどそれだけに留まらず。頬に手をそっと触れられ、とろけるような甘い口づけをされた。その上、ディアム、リリーシャ、ラズール、クォーツに暖かな微笑みで見守られ、フェリシアは恥ずかしさでいっぱいになる。エルバートの唇が離れると、フェリシアは少し怒気を帯びた目でエルバートを見つめた。「も、もうっ! ご主人さま、朝からこんなところでっ」「夜だったら良いのか?」フェリシアは昨日の初めての夜のことを、抱き枕にされながら眠りに落ちていたことを思い返し、ますます顔が熱くなる。するとエルバートはふっと和やかな顔で笑い、昼食の包みを鞄の中に入れる。「では行ってくる」「行ってらっしゃいませ」微笑むと、エルバートに頭を優しくぽんされた。エルバートの瞳から愛されているのが伝わってくる。ご婚約の手紙を受け入れるしかなく、エルバートに尽すことを心に強く誓った日を懐かしいとさえ思う。(わたしは今、こうして、愛に、幸せに包まれている)* * *その晩のことだった。エルバートは朝とはまるで違い、不機嫌な顔でディアムを連れて帰ってきた。理由を聞きたいけれど、とても聞ける雰囲気では…………。「フェリシア様、大丈夫ですよ」「昼食が妻の手作り、しかもハムとチーズ、鹿の干し肉、ゆで卵、レタス、トマトを挟んだサンドイッチでさすが新婚さんは違うと、カイやシルヴィオ、メイド達に冷やかされただけですから」ディアムがスラスラと説明すると、エルバートがディアムに冷ややかな殺気を放つ。「いつものことですからどうかお気になさらず」ディアムが笑顔でフェリシアに向けて言うと、エルバートは
最終更新日: 2025-07-26
Chapter: 33話-5 花嫁の誓い。
「軍師長、ついに結婚したんですねー」「冷酷な鬼神のエルバートが結婚か。信じられないな」ふたりの言葉に続き、近づいて来たゼインとクランドールにまでも。「私も同感です。エルバート様、無事にご結婚出来て良かったですね」「全くだ。ほんとに結婚出来て良かったな」フェリシアは恐る恐るエルバートの顔を見る。するとエルバートは冷酷な表情をなんとか堪えていた。「エルバートよ、散々な言われようだな」ルークス皇帝がエルバートに声をかけ、側近と共に近づいてくる。「フェリシア嬢、ご結婚、おめでとう」側近があえて本当の父のように挨拶し、エルバートの表情が更に危うくなる。「あ、ありがとうございます」フェリシアが返すとルークス皇帝は、ふっ、と笑う。「ルークス皇帝、何が可笑しいのですか?」「エルバートよ、すまない。だが、本日はほんとうにめでたい」「我が本日この場に立つことが出来たのはお前達ふたりのおかげだ。感謝する」「そして、エルバート、フェリシア、おめでとう」「これからもふたり力を合わせ、光の道を歩んで行かれよ」フェリシアとエルバートは涙を堪えながら静かに頷いた。* * *その日の夜。ふたり用の部屋からバルコニーへ出て、月を見つめる。互いにお風呂は済ませたものの、エルバートの銀色の長髪は微かに濡れており、いつもよりも色香が増している。対して自分はただただ恥ずかしい。「フェリシア、疲れていないか?」「大丈夫です」「本当か?」フェリシアはこくんと頷く。するとエルバートは顔を近づけてくる。フェリシアもまた顔を近づけ、唇が優しく触れ合う。エルバートに髪を掻き分けられ、初めての深く長いキスが降り注がれる。倒れそうになるとエルバートが唇を離し、体を支えられる。「ここではやはり大丈夫ではないな」エルバートにお姫様抱っこをされ、フェリシアはエルバートに抱きつく。そして優しく部屋のベッドに座らされ
最終更新日: 2025-07-23
月灯りの花嫁。

月灯りの花嫁。

月影と呼ばれる少女が、やがて最強魔術師に愛され姉と家を救う、溺愛シンデ レラストーリー! 怪異を祓う様々な魔術師達が存在する時代。 平民の妹として生まれたリリシアは、魔術を持つ姉に続くと期待されていた。 だが、儀式の最中に姉共々、怪異に呪いをかけられ、姉は病に 伏せ、リリシアは月の下を自由に歩けない体に……。 そのことから母に「月影」と呼ばれ、虐げられる生活を送っていた。 18となったある日、リリシアは冷酷無慈悲と噂される最強魔術師・ル ファルの邸宅へ「嫁ぐ」名目で売られることになる。 リリシアは姉と別れ、心に強く誓い旅立つ。 姉と家を救い、月の下を歩けるようになってみせる。絶対に幸せになることを 諦めないと――。
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Chapter: 4話-6 星夜の押しかけ。
――もしも、自分の両親が、姉が、と思ったら、胸が苦しくなった。(けれど、わたしはまだ恵まれている……呪いはあるものの、みんな生きているのだから)場がしんみりすると、ルファルが静かに立ち上がる。気分を悪くし、部屋から出て行くものばかりだと思ったが、ルファルはその足取りで舞台のグランドピアノまで歩いていき、椅子に腰を下ろす。するとエルシーが目をキラキラと輝かせる。「ルファル様!? きゃっ! 今から演奏してくれるの!?」「お前の為じゃない」ふいに視線が重なり、リリシアの心臓が跳ねるもルファルはすぐさま視線をピアノの鍵盤へと落とし、演奏し始める。それはまるで、花嫁候補となる前、夜の宴に参加出来なかった自分へ向けられているような、今宵を祝福するような旋律だった。窓から差し込む月光に照らされたルファルの横顔は、あまりに美しく儚げで――静かに涙が溢れた。* * *「リリシアちゃん、今宵はありがとう。とっても楽しかったわ」ルファルの演奏後、邸宅の玄関の扉前でリリシアはエルシーにお礼を言われた。ぎゅっと両手を握られながらのふわりとした微笑みに、胸が熱くなる。「いえ、こちらこそ……、楽しかった、です」リリシアは伝えてからハッとする。星の魔術師にこんな返しは失礼だっただろうか?不安に思うと、エルシーにぎゅっと抱かれた。「きゃ~、可愛い!」どうやら、大丈夫だったようだ。リリシアは心の中で安堵する。が、エルシーは思いがけないことを口にした。「やっぱり、帰りたくない~! そうだわ、今宵はもう泊まっていこうかしら」(え……泊ま、る?)驚くのも束の間、ルファルの手によってエルシーから引き離された。「とっとと帰れ」「もう、薄情なんだから! じゃあ、リリシアちゃん、ルファル様、またね」エルシーが手を振り、リリシアも振り返す。その時だった。異様な気配を感じたのか
最終更新日: 2026-02-08
Chapter: 4話-5 星夜の押しかけ。
だが、隣からルファルのため息が聞こえ、リリシアは我に返る。 「うるさい。とっとと食べて帰れ」 「そうはいかないわ。今日はお祝いも兼ねてリリシアちゃんに会いに来たんだから!」 反論するエルシーにルファルは冷え切った視線を向けた。 「――やはり、書類は表向きの名目で、それが本来の目的か」 その声は震えあがる程にとても低い。 エルシーは眉を下げ、ぎゅっと握った拳を口元に添える。 「……だって、いつも『家に来るな』の一点張りで、ちっともリリシアちゃんに会わせてくれないんだもの。ルファル様とは同い年で付き合い長いから、ようやく素敵な花嫁候補さんが出来たって聞いちゃったら、どんな子かな、直接お祝いしたいなって思うのは当然じゃない」 「お前の祝いなど無用だ」 「ルファル様、ほんと冷たい~でもねでもね、今日、リリシアちゃんと会えちゃった! きゃ! だから、やっと伝えられる」 エルシーはまるでこれから結婚式の誓いを立てるかのような眼差しでリリシアを見つめる。 「リリシアちゃん、ルファル様の花嫁候補になってくれてありがとう。ルファル様を末永くよろしくお願いね」 「は、はい……」 「今日はいっぱいお祝いするね、リリシアちゃん」 「あ、ありがとうございます……」 リリシアとエルシーの間に花びらが舞っているかのような雰囲気が漂う。 隣のルファルは、エルシーの自分の姉のような発言と振舞いに何か言いたげだったが、口を噤(つぐ)み、呆れた表情を浮かべた。 するとエルシーはリリシアの首に視線を移す。 「そのリリシア様の首に付けているネックレス、シャイン皇帝に授かったものよね? シャイン皇帝の気配を感じるわ」 リリシアはぎくりとする。 「あ…………」 エルシーは星の魔術師……月除けの宝石だと見抜かれ、自分が“呪い月”であることがバレたのでは……。 「素敵ね!」 「え……」 「憧れのシャイン皇帝からネックレスを授かっちゃうなんてリリシアちゃん、すごい!」 ……どうやら、バレていなかったようだ。 リリシアは内心で安堵する。 「私なんて
最終更新日: 2026-02-07
Chapter: 4話-4 星夜の押しかけ。
* * *「このパイのお肉、おいし~」宴の部屋の席で夕食を口にしたエルシーが幸せそうに呟く。急遽、リリシアはこの場に豪華な料理を運び、そのまま慎重にお出ししたが、気が気でなかった。料理には自分が作った鹿肉が入った黄金のパイ包み焼きも含まれていたからだ。丁寧に焼き上げたものの、口に合うかどうか不安であったが、大丈夫だったよう……。リリシアは自分の席で、ほっ、と安堵の息を吐く。エルシーの肩に乗った精霊もすました顔でパイの横に添えた美しい花の葉をかじって食べており、その姿がなんとも可愛らしい。「……あれ、リリシア様、自分の料理は?」「あ、わたしは後で頂くので……」「そんなのだめよ! ほら食べて食べて!」エルシーがパパッと料理を一種類ずつ皿に取り、リリシアの前に並べる。「エルシー様、ありがとうございます」「リリシア様、そんなにかしこまらなくても大丈夫よ。エルシーでいいわ! 私はリリシアちゃんって呼んでも良いかしら!?」「は、はい……ではわたしはエルシーさんで……」「きゃ! 嬉しい!!」両頬に手を当てながら甲高い声を上げるエルシーをよそに、リリシアは皿の料理に視線を移す。「……こんなに……どうしよう……」「もう食べられるだろう」隣で食すルファルに言われ、リリシアは恥ずかしさでいっぱいになる。どうやら呟きがルファルに聞こえていたようだ。今までの習慣ですっかり夜はもうだめなのだと頭に記憶されていたけれど……、そうだ、もう夜は大丈夫なのだ。「い、頂きます」リリシアはフォークを手に取り、料理を食べ始める。そんな中、エルシーもパクパクと料理を食べ進めていく。幸せそうな顔で頬張る彼女の姿にリリシアは驚き、ルファルは、よく食べるな
最終更新日: 2026-02-06
Chapter: 4話-3 星夜の押しかけ。
「え……」リリシアは小さく声を上げた。(この方が星の魔術師だったなんて……そうとは知らず、わたし、無礼なことを……)「あ、あの……」リリシアは声をかけ、謝罪しようとする。が、エルシーの甲高い声に遮られた。「きゃ、今の星の魔術師ぽかったよね!? ばっちり決まってたよね!? ね!? ね!?」リリシアはエルシーに圧倒されながらコクンと頷く。その時だった。広間の扉が開く。「――おい、私の許可なく、何を勝手に入っている」低い声が響き、着替えたルファルが広間に入ってきた。「冷たい~。せっかく、ルファル様の仕事の書類を届けに来たっていうのに」「仕事の書類だと?」ルファルはエルシーから書類を受け取る。* * *ルファルが目を通すと、書類には、『一週間後、フェリカディア宮殿会議室にて、神魔会議を開く。全隊員参加せよ』と魔術語でシャイン皇帝の字が綴られていた。リリシアの儀式が終わった後、シャイン皇帝の私室にてふたりで話し合い、彼女の姉、ユエリアについては、呪いを軽減する呪い除けのブレスレットを手配するという形となり、神魔会議についての話に移ったのだが――。『リリシアを神魔会議に参加させたく思う』『お待ち下さい、リリシアを参加させれば会議は荒れ、彼女の身が危ないかと』『やはりリスクが高いか。ならば、リリシアなしで話を進めよう。――だが、日の光が降りてきた際はそれに従う。良いな?』との話に落ち着き、了承せざる終えなかった。しかしながら、今のところ、リリシアの参加はないようだ。「参加者は魔術師だけのようだな」「当り前じゃない。神魔会議なんだから」「神魔会議……?」リリシアが尋ねると、エルシーが説明する。「神魔会議っていうのはね、神魔術隊に属する魔術師全員が参加必須のシャイン皇帝の前で開く会議のことで、一週間後にその会議が宮殿で開かれて、今回は
最終更新日: 2026-02-05
Chapter: 4話-2 星夜の押しかけ。
書斎の扉が反動で閉まると、ルファルの手が腕から離れる。「……それでどこへ行こうとしていた?」(低い声……相当怒っているわ……)リリシアは胸の上にぎゅっと両手を重ね合わせ、口を開く。「ソフィラさんの元に母からの手紙が届き、居ても立っても居られず、宝石を届けてもらおうとソフィラさんのところへ……わたしは売られた身であり、お姉さまの元へは帰れない為、せめて宝石だけでもと……」ルファルの目が鋭く細まるもリリシアは話を続ける。「もしかしたらシャイン皇帝がわたしの呪いを解こうとした影響が、お姉さまにも出ているのではないかと思い、シャイン皇帝から授かったこの宝石をお姉さまに届けられたら効くかもしれないと思って……」「シャイン皇帝からの恩を仇で返すつもりか」ルファルが冷酷に怒鳴ると、リリシアの瞳が揺れる。「ですが、お姉さまが呪いにかかったのはわたしのせいなのです……だから……どうしても救いたいのです……」「私の時間をも無駄にしてでもか?」「ち、違……」「何が違う? 自分自身も救えていないくせに姉を救える訳がないだろう、ふざけるな」リリシアの右目から一筋の涙が流れる。ルファルが両目を見開くと、リリシアの身体がふらりと傾く。ルファルはとっさに腕を引き、リリシアの身体を支えた。「リリシア、言い過ぎた。すまない」「い、いえ、ルファル様のおっしゃる通りです……わたしの方こそ……申し訳ありません……」謝ると、ルファルは封筒から紐に通された宝石が入った小さな袋を取り出し、リリシアの首に付ける。「もう2度と自ら外すな。もっと自分を大事にしろ」「は、はい……」
最終更新日: 2026-02-04
Chapter: 4話-1 星夜の押しかけ。
* * *――夜が明けた頃。瞼を上げ、ゆっくり隣を見ると、ルファルはいなかった。リリシアは布団を顔に被せる。一瞬でも、もしかしたらルファルが寝ているのではないか。そんなふうに期待した自分が恥ずかしく、同時に少しの間一緒に寝たのは事実なのだと悟る。――ああ、このままずっと隠れていたい。だが、その思いも虚しく、廊下からコンコンと扉を叩く音が響く。「リリシア、起きろ。これより帰宅する」自分はこんななのに、ルファルは相変わらずのようだ。「か、かしこまりました……」「では、貴族専用の玄関で待っている」ルファルの足音が遠ざかっていくのが分かった。昨日、ルファルにお姫様抱っこでシャイン皇帝がいる部屋まで連れて行かれたこともあり、部屋の前で待たれる可能性も十分あったけれど、助かった……。(……今、会ってもどんな顔して良いか分からないもの)部屋のクローゼットを開くと、昨日、衣類保管室で着替えた正装のドレスがあり、誰がいつの間に持って来たのかは分からないが丁寧に掛けてあった。リリシアは素早く着替えを済ませ、髪を整え、部屋を後にする。そのまま、廊下を歩き、回廊階段を降りて、貴族専用の扉がある玄関でルファルと合流し、準備された外の馬車に、ルファルに続き乗り込む。やがて、昨日と同じ案内人が頭を下げる中、馬車が動き始めるもリリシアは意識してしまい、ルファルの顔を一切見ることが出来ず、気まずいまま、邸宅へと戻った。その後、邸宅の外の玄関先でソフィラを含め使用人達に出迎えられる。「ルファル様、リリシア様、おかえりなさいませ」使用人達が会釈し、リリシアはルファルの後に続いて歩き出す。するとソフィラに呼び止められる。「リリシア様、少し宜しいでしょうか?」「は、はい」「リリシア様宛てにミア・ベルフォード様より手紙が届いております」ソフィラの言葉にリリシアの身が凍り付く。「母が、わたしに手紙…&h
最終更新日: 2026-01-30
幸せな偽の花嫁。

幸せな偽の花嫁。

偽の花嫁が本物の愛を見つける、溺愛シンデレラストーリー! 聖姫の力が尊ばれる時代。 平民の長女シルヴィアは、能力を持たない「無能」として継母と継妹に虐げら れ、惨めな日々を送っていた。 そんなある日、継妹と間違われたシルヴィアは人攫いに遭い、命乞いの末、恐 れられる皇太子ハドリーの花嫁として身代わりを強いられる。 彼との出会いをきっかけに、シルヴィアは本物の愛を知り、奇跡が彼女の運命 を変えていく――。
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Chapter: 10話-2 国境の地。
* * * ハドリーは魔形を浄化するもどこか腑に落ちない。 辺りがやけに静かすぎる。 ど、くん。 ハドリーは突如、動けない程の異様な物凄く強い気配を感じた。 その直後、夜空がピキピキと割れ、開かれた蠢く稲妻のようなゲートから天にも届く程の巨体――黒い霧が人のような姿を成し、世界の闇を吸い込んだかのような虚無の魔形が現れた。 魔形は両掌を下に向ける。 すると無数の分身がハドリー達に向けて放たれた。 「戦闘開始!」 ハドリーが力強く叫ぶと、リゼルとフィオン達は鞘から剣を抜き、残りの騎士達も剣を構え、影のような無数の分身を斬り落としていく。 だが、苦戦し、本体の魔形に攻撃一つ出来ない。 こんな分身共に時間を取られるとは。 「くっ」 「切りがない」 リゼルとフィオンは息を荒げながら不平の言葉を零す。 そんな中、魔形が新たな分身を3体放つ。 放った矛先はこの場ではなく、帝都だった。 影のような分身は目にも見えぬ速さで夜空を飛翔し、遠ざかって行く。 (シルヴィア!) ハドリーは前線で冷徹に魔形を斬り伏せながらも、心中で初めて動揺し、制御を失いかける。 そして同時にシルヴィアへの守りたいという強き心情が、想いが爆発し、心が叫ぶ。 シルヴィアだから、傍にいてほしいという感情の名を。 彼女はもはや単なる偽の花嫁ではない、愛おしく、かけがえのない存在だと。 花びらが舞い、柔らかく微笑む彼女がふと頭を過る。 だからこそ、約束通り、シルヴィアの元に早く戻らねば。 そう自分の真の想いに気づき、強く決意した時だった。 魔形がハドリーの動揺を見抜き、想いごと打ち消すかのごとく、ハドリーに向けて闇のいかづちを轟音と共に落とした――――。 * * * シルヴィアが両目を閉じ、小さな株の蕾に触れている時だった。 首元からハドリーのネックレスに付いている魔法石が突如外れ、床に落ちる。 魔法石がパリン、と割れた。 シルヴィアの瞳が大き
最終更新日: 2026-02-07
Chapter: 10話-1 国境の地。
* * * 出立してからどのくらい時間が経っただろう。 ハドリーは宮殿でフィオン達と合流し、馬を走らせ国境を目指した。 その後、国境付近の森に入り込み、リゼルと共に高貴な馬を太い木にくくり、同じく馬をくくったフィオン達とテントを張ると、食事を取って森で夜を越す。 そのまま睡眠で体力も回復させ、日が昇る前に馬番を数名残して発ち、フィオン達を連れて歩を進める。 昼間は木陰や茂みに隠れ、慎重に進み、幾度かの休憩を挟みつつ、夕暮れ時に距離を稼ぐ。 そして、国境の地に辿り着いたのは、今宵のことだった。 目の前には荒れ果てた広大な草原が広がり、魔形の痕跡が残る不気味な石碑があちこちに転がっている。風が吹く度、雑草がざわめき、遠くで魔形による地響きが鳴り響く。 「行くぞ」 ハドリーの低い声に、リゼルとフィオン達は気を引き締め、歩みを進める。 すると、先行部隊が作ったテントが見え、その横を通り過ぎる。 やがて、草原の奥に足を踏み入れると、テントで寝ているはずの深手を負ったフェリクスが倒れている姿がハドリーの目に入った。 傍らには、彼を守ろうと一人の騎士が剣を握り締めながら膝をつき、周囲を固める数名の騎士達の顔は疲弊しきっており、今にも力尽きそうだ。 「ハドリー殿下!」 フェリクスを守っていた騎士が叫び、その声に他の騎士達の死んだような瞳が一瞬にして明るくなる。 「戦況をお伝え致します! 弱い魔形はすでに全て浄化済みでありますが、中位程度の強さの魔形の出現により、騎士長がやられ、戦闘不能の騎士達がいるテントに運ぼうと致しましたが、この場から離れようとせずシルヴィア様の薬を飲み、先程まで必死に戦い抜かれ、現在、劣勢となっている次第でございます!」 フェリクスを守っていた騎士の報告を聞いた瞬間、ハドリーは、より冷厳な雰囲気を纏う。 その雰囲気は誰も手出しするなと言っているかのようだった。 ハドリーは鞘から剣を抜き、身長数メートル程の、黒き破れた布で全身を覆い隠し、影の顔と両手のみを見せた、人に近いレイスらしき存在――負の魂を統べるような魔形に向かって一直線に駆けて行く。
最終更新日: 2026-01-31
Chapter: 9話-4 知らせと出立。
シルヴィアは今にも泣き出しそうになる。 期限の2日前は最後の朝餐だと思ったけれど、違った。 でも、今宵はほんとうに最後の――――。 「最後の晩餐だ、とでも思ったか?」 「え、いえ、あの……」 「らしくないことを言ったが、最後ではない」 ハドリーの言葉に力強さを感じた。 そうだ。ハドリーは必ず生きて帰るお人。 「殿下、戻られたらまた一緒に食べて頂けますか?」 「ああ、約束しよう」 シルヴィアはハドリーに優しく微笑んだ。 * * * 翌日の早朝。シルヴィアは書斎でハドリーの編み終わりの髪をシルクのリボンできゅっと結ぶ。 いつも以上に丁寧に、そして緩めにきちんと編め、シルヴィアは、ほっと息を吐く。 「殿下、出来ました」 シルヴィアはハドリーに小さな鏡を手渡そうとする。 だが、ハドリーは「いい」とそれを拒む。 「殿下?」 「お前が結ったのだから出来ているに決まっている」 シルヴィアはハドリーの言葉にぐっと胸を詰まらせる。 (そこまで自分の腕を認めて下さっていただなんて……) 涙を堪えつつ、やがてシルヴィアはハドリーと共に書斎を出て、玄関に向かう。 するとベルとリゼルに使用人全員、そして見た事のない護衛らしき青年が待っていた。 「ベル、信頼する護衛を一人残しておく。よって、家のことはメイド、執事、料理番、警備に全て任せ、護衛と共にシルヴィアを守り抜け」 「かしこまりました」 「リゼルは馬の準備を」 「はっ」 「私も手伝います」 ベルは気を利かせてか、リゼルと共に外に出て行き、護衛と使用人全員もまた出て行った。 「それからシルヴィア、これを」 ハドリーは正装のポケットからネックレスを取り出し手渡す。 「自分の力と繋がったネックレスだ」 「ありがとうございます、お守り代わりに致します。それであの……、付けて頂いても宜しいでしょうか……?」 「ああ」 ハドリーはシルヴィアの掌
最終更新日: 2026-01-24
Chapter: 9話-3 知らせと出立。
* * *──夜。シルヴィアは帰宅したハドリーを出迎え、一緒に玄関から中に入ると、ハドリーに腕を掴まれた。「……殿下? いかがなされましたか?」「夕食前に書斎で話がある」ハドリーの言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がよぎる。「かしこまりました」シルヴィアは了承し、ハドリーと共に書斎へと向かう。そして、ハドリーに続き中に入ると、シルヴィアは扉を閉めた。ふたりきりの書斎……しん、とした静かな空気が流れる。話の内容を聞かなければ。そう思うのに、口が動かない。棒立ちしていると、ハドリーが先にソファーに座る。「まずは座れ」ハドリーは隣の座面をぽんっと叩く。シルヴィアは頷き、ハドリーの隣に座った。「話しても良いか?」「は、はい……」答えると、ハドリーは真剣な眼差しでこちらを見つめる。「──シルヴィア、私は明日、国境に向け、ここを出立する」ハドリーの宣言に、シルヴィアは両目を見開き、固まった。──ああ。嫌な予感が的中してしまった……。「それは……前線に立つ、ということでしょうか……?」「ああ、フィオンも連れて行く」(そんな…………)前線には立たない、大丈夫だ、と言ったくせに。「……嘘つき」小声で囁くと、シルヴィアはハッとする。(今、殿下に、わたし…………)「嘘つき、か」「あ、聞こえ……申し訳……」「謝らなくて良い。本当のことだからな」シルヴィアはぎゅっと自分の手を握り締める。(わたし、最低だ……。殿下がどれ程の想いで出立
最終更新日: 2026-01-17
Chapter: 9話-2 知らせと出立。
* * *翌日の早朝。シルヴィアは玄関前でそわそわしながらハドリーの帰宅を待つ。ハドリーは昨夜、皇帝に緊急で呼ばれ、リゼルを連れて宮殿へと馬で向かった。早朝には一旦お戻りになるとのことだけれど、とても嫌な予感がする。シルヴィアが不安に思い、ぎゅっと胸に手を当てた時だった。高貴な馬に騎乗したハドリーの姿が両目に映る。同じく馬に乗るリゼルと共に戻ってきた。ハドリーとリゼルは馬から降り、こちらへ歩いてくる。「今帰った」「殿下、おかえりなさいませ」「ベルは、どうした?」「先程までお見えになりましたが、急用が出来たとの事で外されてみえます」「そうか」シルヴィアは会釈すると扉を開け、ハドリーと共に中に入る。「あの、殿下、緊急の用件とは……?」「──国境にてゲートが開き、厄災の刻が始まったと皇帝の元に知らせが届いた」シルヴィアは両目を見開く。「厄災の刻が……?」「ああ。フェリクスの騎士団が国境へと向かった」そのことを聞き、ふとあの金髪が頭に浮かぶ。「ではフィオンも……?」「いや、騎士団の半分は待機中であり、フィオンはまだ宮殿に留まっている」「そう、ですか……あの、殿下は……?」「私は前線には立たない」ハドリーの言葉に、内心安堵する自分が嫌になる。ハドリーは今も皇位継承をも望まず拒み続けておられ、言葉通り、国境に行く気はないのだろう。(けれど、近々殿下も…………)ハドリーは不安な心を読んだのか、ぽんと優しく頭を叩く。「シルヴィア、大丈夫だ」「はい……」それからシルヴィアは宮殿に通うのは危ないとのことで、当分の間、邸宅に留まることとなった。雑務をこなしながら、ハドリーに料理をお出しし、髪結いを
最終更新日: 2026-01-14
Chapter: 9話-1 知らせと出立。
* * *それからシルヴィアは宮殿へ騎乗したハドリーとリゼルと共に馬車で移動し、皇帝の間に足を踏み入れた。先を歩くハドリーに続いて玉座まで近づいていき、順に跪く。皇帝の隣に座る皇后は神聖なる姫そのもののお姿だった。「急に呼び出してすまぬの。妻がどうしてもシルヴィアに会いたいと効かないものでな」「陛下、このような場で妻呼びはお控なさって」「それでご用件は? 忙しいゆえ、手短に願いたい」ハドリーの言葉はいつにもまして刺のよう。(ここに来る前から殿下は嫌がられていたし、皇后様とは不仲みたい……)皇后はハドリーを無視し、シルヴィアに目線を向ける。「単刀直入に申し上げます。シルヴィア、貴女には通いで明日からわたくしの特訓を受けて頂きます」(え…………)「何を勝手な!」「ハドリー、口を慎みなさい。今、わたくしが話しているのよ」ハドリーは黙り、皇后を睨む。「厄災の刻が近づいて来ているのですから、満を持すのは当然のこと。特訓に加え、いくつか試作もして頂きますのでそのおつもりで」「かしこまりました」シルヴィアは深々と頭を下げた。その後、皇帝の間をハドリーと出る。「シルヴィア、封印は私が必ず解く。だから極力無理はするな」「殿下、ありがとうございます」* * *こうして、翌日の朝から、皇后の特訓が宮殿の中庭で始まり、レディーのたしなみも教わりつつ、午後は邸宅に戻り、雑務に追われ、夜はリゼルが帝都の花壇から摘んできた小さな株の蕾を咲かせる為、シルヴィアはベット側にその株を飾りながら眠ったり、祈ってみたり、蕾に触れ、発光と拒絶を繰り返す日々を送った。しかし、封印が解けることはなく、焦る気持ちが膨らむばかり。それを見透かされたのか、宮殿の中庭で皇后が深い息を吐く。「4週間で集中を切らすとは何事ですか」皇后は祈るシルヴィアを注意する。「申し訳ありません……」「全
最終更新日: 2026-01-10
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