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桃口 優
桃口 優
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Novels by 桃口 優

もう一度あなたに逢えたら

もう一度あなたに逢えたら

 主人公は、忘れることができない後悔があった。そのことを思い出していると、突然どこかわからない世界に飛ばさせた。そこは過去の世界で、前にうまくできなかったプロポーズのやり直しを主人公はしようとする。でも、それはうまくいかなくて⋯⋯。
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Chapter: 五章
 彼女の涙に、優しさを感じた。 どうしてこんな温かみのある涙を今流すのだろう。 考えの中に入り込みそうになったけど、なんとか我に返り涙を流した理由を聞いた。「紗奈、どうしたの?」「これは、『幸せの雫』だよ」「幸せの雫?」 僕は聞いたことのない言葉だったけど、すごく興味が湧いた。「うん。最高の幸せを感じた時にだけ流れる涙のことをそう呼ぶのだよ。子どもの頃、お母さんに絵本読んでもらった時に教えてもらった」「それならよかった」 僕は彼女の涙が悲しみからくるものでなくて安心した。それと同時に、子どもの頃に教えてもらったことを今も素直に信じている彼女がとても純粋だなと思った。「私は今、幸せをいっぱい感じているよ」「本当?」「本当だよ。私がこれまでに嘘ついたことあった?」「嘘をついたことはないね」 彼女と出会った時の頃から思い返していたけど、嘘をついている彼女はどこにもいなかった。「でしょ」 彼女は「頭をなででー」と自分の頭を僕の方へ近づけてきた。 僕たちにとってこれは結構頻繁にあることだ。日によって甘える側が変わることもある。 結婚してからも僕たちは付き合っていた頃と変わらずずっと仲がよかった。むしろ、結婚してからの方が仲がよくなった。彼女といる時間が増えて、彼女のことをより知っていったら、もっと好きになった。 僕は彼女の頭をなでながら、彼女の目を優しく見つめた。「あと、それと⋯⋯」 彼女は少し下を向いた。「それと?」「私は葵央に黙っていたことがある」「その時が話す時じゃないと紗奈が感じたなら、気にすることはないよ」「そう言ってくれてありがとう。でもずっとこれでよかったのかなと考えていた。葵央を何度も過去の世界に行かせたのは私なの」「そうだったのだね」 自分の意志ではなかったから、過去に来た経緯が少しわかった。でも、負の感情は浮かんでこなかった。「びっくりしただろうし、怖かったよね。本当にごめん」「大丈夫だよ。でも、どうして僕に過去に行ってほしかったの?」 僕にとって過去に行った意味は十分あったけど、彼女にはどんな理由があるのか知りたかった。「ただもう一度葵央に逢いたかったから」「逢いたかったから?」「そう。私があの世に行ってから星に願っていた。あの世でもこの世と同じように夜になると星がきれいに見えるのだよ。
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
Chapter: 四章
 どれぐらい走ったかわからない。 ここの景色は見たことがあるところだけど、どこかもどこにいけばいいかわからない。 でも、辛さは全然なかった。 彼女に会えるなら、これぐらい本当に微々たるものだから。 僕は前にいる人の間を駆け抜ける前に、ちらっとその人の後ろ姿を見ていた。 彼女の姿なら、後ろ姿を見るだけでわかるから。 彼女が特別特徴的な髪型をしているわけじゃない。僕には彼女だと一目でわかる目に見えないレーダーが頭についている気がする。「紗奈!」 何人もの人を追い抜かしていき、僕は彼女をやっと見つけた。「葵央、そんなに慌ててどうしたの?」 肩で息をしている僕を見て、彼女は少し心配そうな顔をしていた。 そんな顔を何度もさせたくないなと、僕は心が痛くなった。「突然現れてびっくりしていると思うけど、今僕のことはいい。大丈夫だから。そんなことより紗奈に今すぐ伝えたいことがあるのだけど、ちょっといいかな?」「うん、いいよ」 僕は彼女の手をとって、走り出した。 ここは道路だから、もう少し落ち着けるところに移動したかった。 静かそうな公園を見つけたから、そこに行き公園のベンチに座ってもらった。 決して最高の場所と雰囲気でないことはわかっている。でも、僕はこの世界にどれだけの時間いられるかわからないからここに決めた。「紗奈さん。僕と結婚してくれませんか?」 僕は膝立ちになり、彼女の顔をまっすぐに見つめた。「はい」 彼女は、僕の言葉を受け取って頷いてくれた。「去年プロポーズをしてくれたところなのに、また愛を伝えてくれて本当にありがとう」 僕は彼女の言葉からここは二〇一五年の世界だとわかった。そして、奇跡的に望んでいた世界に来られて安心をした。「初めてプロポーズをした時、全然スマートにできなくてごめん。紗奈はもやもやした気持ちがずっと残っていたよね」 本当は、その日からずっとプロポーズについての話題を避けていたことも言いたかった。でも、今は二〇一五年の世界にいるからそれを言うとややこしいことになるから言わなかった。「そんなこと気にしなくていいのに」 彼女は優しく微笑んでくれた。それだけなのに僕は心が軽くなったのを感じた。 「僕は大切な人とはどんなことでも真剣に向き合うことの大事さを、紗奈に教えてもらった。紗奈には、何度でも思いを伝えた
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
Chapter: 三章
 僕はあの日からプロポーズのことを話題に出すのを避けていたことに気づいた。 今頃になってやっとわかり、僕はかなり申し訳ない気持ちで心がいっぱいになった。 そう思いながらで、プロポーズのことについて一度もネガティブな言葉を言わない彼女の優しさを同時に思い出した。 そして、その優しさが恋に落ちた瞬間のことを僕をまた思い出させた。  その時は、彼女がサークルに入ってから初めての夏休みを迎えようとした時だった。 彼女がサークルに入って初めて会話をしてから、二人の距離がぐっと縮まったのは、好きな歌手の話をした時だった。好きな歌手が同じで、さらにどこが好きなのかも同じだったからだ。 共通点があるというより、そんな深いところまで同じことに驚いた。どこが好きかなんて人それぞれで無限に近いほど数があるから。 あの時のことは、今でもよく覚えている。 「そんなことってあるー?」って、部室で大声を出し、笑い合ったから。 他にも夢見がちか現実的かという話になった時も、夢見がちと同じだった。その時の僕は二人の間に同じことが増えることがただ嬉しかった。  それから僕たちは自分の感情も追いつかないほど、すごい速度で仲をどんどん深めていった。 僕と彼女にたいして、同級生たちは「もうサークル中にいちゃつかないでよ〜」と冗談まじりにからかってくるようになったまでだ。 でも、そんな時は僕が同級生に何かを言うより先に、彼女が「先輩、違いますよ。山崎先輩が優しいから、色々話を広げてくれるだけですから」と言い、場をいつも収めてくれていた。 僕からしたら、こんな風に僕を守る言葉を自然と言ってくれる彼女の方が何倍も優しい。 彼女は一般的に顔はかわいい上に愛嬌もある。僕が同級生たちに彼女と仲良くしていることを妬まれる可能性はゼロではない。 彼女がそこまでわかっているのかまではわからないけど、彼女の人を明るくする才能に僕が救われていることは間違いのないことだ。 一方で、そんなにはっきりと『違う』と言われるとちょっとだけショックを受けている僕もいた。 僕は最近彼女のことばかり考えるようになっていたから。 明日から大学は夏休みに入る。うちのサークルは夏休みに集まることは数回しかない。 だから、彼女とはしばらく会えないようになる。 普段はサークルがある日は毎回顔を合わせていた。でも
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
Chapter: 二章
 僕はお店に向かいながら、彼女との出会いの続きを思い出していた。 僕が入っている大学のサークルの見学に来た次の日に、「入部したいです」と彼女は再びやってきた。 僕が所属しているのは、ダンスサークルだ。 でも、多くの人がダンス未経験ということもあり、他のサークルと比べてもかなりゆるい感じだ。 その頃僕は大学三年生だから、彼女とは二歳差がある。 先輩だからといって特別えらいわけでもないと僕は考えているから、挨拶をしに彼女のもとに行った。 彼女は、「あっ、山崎先輩ですよね?」と先に声をかけてきた。「えっ、そうだけど。もうすでに自己紹介しちゃってたかな?」 僕は、予想外の言葉に驚いた。「名前合っててよかったです。あっ、お話するのは初めてです。昨日見学に来た時に、他の先輩の方が山崎先輩の名前をよく呼んでいましたので、名前を覚えました。でももう一度来ると、名前が合っているのか急に自信がなくなってきて⋯⋯」 彼女は顔を少し赤くしていた。  僕はサークルの部長ではないけど、新入生受け入れの準備などを積極的にすることが多い。 僕は、人と話すことが好きだから。 見学にきた数人の子の中で一際元気な子が一人いて、その人がこの子だったと、僕はすぐに頭の中で情報が一致した。「そうだったのだね。わざわざ覚えてくれていてありがとう」「私はダンス未経験ですから、先輩の方々の名前ぐらいは早く覚えておこうと思ったのです」 その考え方は僕にはなかったもので、珍しさを感じた。さらに、形式的ではなく素の前向きさを感じとれた。「すごいけど、そんなに気合い入れなくても大丈夫だよ。うちのサークルに入る人のほとんどがダンス未経験で、サークル内の雰囲気もわいわいとした感じだから」「未経験者の方が多いんですね。経験者の方ばかりだとどうしようと思っていました」 彼女から緊張の糸がほどける音がした。「じゃあ、これから簡単にサークルについて説明するね」「よろしくお願いします」 サークルについての説明が一通り終わった後、僕は彼女にまた話しかけた。「あっ、よかったらだけど、最後に名前をもう一度教えてもらってもいいかな?」 この時の僕にやましい気持ちは一切なかった。 僕が覚えること全般が苦手だから、初めに名前を聞いたけどちゃんと覚えられてなかっただけだ。「私のですか? いいですよ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
Chapter: 一章
 忘れることができない後悔がある。 何をしても変わらないのに、心にしこりのようにずっと残っている。 基本何事も夢見がちな僕が一つだけ現実的に考えるようになったのは、あることが関係している。   そんな事を思い出していると、どこからかオルゴールのネジをゆっくり回しているような機械音が聞こえてきた。 そこから聞こえる音楽を聞いているうちに、僕の意識は落ちていった。 目を開けると、僕はさっきまでいたところと違うところに立っていた。 慌てて周りを見渡した。街路樹がたくさん植えられていて、おしゃれでありながら落ち着いた雰囲気があるところだ。 やや遠くには、美容室が何店も並んでいた。 人は多いけど若い人はあまりおらず、まるでこの街の雰囲気に人が合わせているかのように感じた。 僕はさらに前を見つめると、電飾がきれいに飾りつけられたオブジェがいくつかあった。 その時、僕はデジャブを感じた。 前方から真上に視界を移すと、太陽がまだ浮かんでいた。時間帯的に夕方になる少し前ぐらいだろう。 だから、電飾もまだ鮮やかな光りを放っていないのかと納得がいった。 隣を見ると、妻の紗奈(さな)がいた。 それらの情報から、僕は今どこにいるのかなんとかわかった。 まずここはワンランク上のデートスポットとして雑誌に載っていたところの『代官山』だ。 そして、この風景だけでなく僕がここに彼女と一緒にいることから、ここは二〇一四年のクリスマスだとはっきりとわかった。 そうわかったのは、僕が彼女とこれまで代官山を訪れたのは、この時の一回っきりだからだ。 「代官山にデートに行こう」と僕が伝えると、僕よりも少し年下の彼女は「ドレスコードがあるお店に行く予定かな?」と事前に聞いてきた。 僕は知的な女性に魅力を感じる。 だから、そういうところまで瞬時にしっかり考えられる彼女を誇らしく思っている。 彼女の好きなところをあげると、いくら時間があっても足りない。それほど僕は今も彼女に心を奪われてる。 彼女は淡いピンク色のパーティードレスを着て、化粧もいつもよりきっちりとしている。 見るのは今回で二回目なのに、彼女のドレス姿に見とれてしまった。 彼女は普段かわいらしい服を着ていることが多く、化粧もそんなに濃くないことが多い。 きっと普段と違うからだと、僕は胸のドキドキに理由をつ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-29
君を救えるなら、僕は

君を救えるなら、僕は

 主人公である佐藤 祐希が、恋人の山瀬 華菜といつものようにデートをしてたときのことだ。  突然彼女が涙を流し、「こんな人生もう嫌だ」という言葉を口にする。  主人公は驚きながらも、その言葉に隠された彼女の思いを知って彼女を救いたいと思うが……
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Chapter: 二十二章 「わかり合えないよ」
「涙って、複雑だね」 彼女は、ゆっくりと顔を上げた。 今彼女は涙を流していた??「どういうこと??」「今、悠希の私を思うまっすぐな気持ちが嬉しくて涙が出た。涙を流した理由は、それがかなりの割合を占めてることは確かなことだよ。でも、実は私の心にずっと浮かんでいる別の感情があって、それも関係して『涙』という形で外にあふれたのだと思う。涙がもっと単純で、一つの感情だけで流れればいいのにね」 彼女の横顔は、大人っぽいけど寂しそうだ。 僕は子どもの頃から我慢して涙を流さないように生きてきたから、涙の仕組みはよくわからなかった。 「同じ体験をしないとわからないこともある」と彼女はさっき言っていた。その言葉が突然ずしりとのしかかってきた。 彼女のために涙はどうして流れるかすぐに考えてみた。同じじゃなくても、わかることができると彼女に伝えたい。 人はどうして、どんな時に、涙を流すのだろうか? 多くの場合、ある言葉や行動を受けて、何かしらの大きな感情が自分の中で生まれたからではないだろうか。 つまりは、感情の放出だ。 それはずっとため込んでいたものもあれば、今の気持ちだけの時もあるだろう。 きっと涙とはあふれるもので、流している本人もその時はそんなに難しいことを考えていない気がした。  もちろん、『嘘泣き』などのようにわざと泣いている場合は、これらからは除外される。 だからだろう。涙を流しながらも、涙について彼女が冷静に分析をしている姿に、僕はさっき寂しさを感じたのだろう。 涙について深く考えて悩む人もたぶん多くはないだろう。 そして何より涙を流している時ぐらいは、誰かに甘えて頼っていいのにと僕は思う。人間はそんなに強い生き物ではないのだから。 でも、彼女はそれを一切しない。いつも一人で何でも解決しようとする。一人で平気なふりをする。 彼女が平気なふりをしていることに、僕はやっと今気づけた。本当は全然平気なんかじゃないのに、彼女は笑顔を見せる。 僕は、彼女を抱きしめた。「華菜をずっと苦しめている別の感情って何?」  僕は、彼女に聞いた。 彼女が自分から助けを求めないなら、僕が行動を起こせばいいだけだ。 先ほど伝えた僕の思いだけではまだどうにもできないものがあるなら、もっと彼女に関われば変えられるかもしれない。 普段はしない行動も、す
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-22
Chapter: 二十一章 「僕が君を救いたい理由」
「まずは、僕の覚悟を伝えるね」 彼女を救いたい理由を言う前に、僕の覚悟を先に伝えた方が納得してもらえるか思ったからだ。 彼女は、小さく頷いてくれた。 今僕の胸は、恋のドキドキとは違う意味で音を激しく鳴らしている。「僕の覚悟は、どんな否定も弱い自分も完全に覆すまで決して諦めないことだよ。この思いは、決して中途半端な思いじゃない。僕は、何があっても折れないよ」「えっ!?」「今、そして未来を生きていく上で華菜を失う以上に辛いことは、僕にはない。やっとそのことを堂々と伝えられるようになった。華菜が辛い顔をしてると、僕も心が痛くなった。最初はなんでかわからなかった。人が悲しんでる顔を見るのが好きな人はなかなかいないだろうけど、この気持ちは、同情とかとは少し違った。それがやっと何かわかった。本気で思うからこそ相手の苦しみは、自分の苦しみでもあるんだね。僕も一緒に苦しませてほしい。そして、二人で前を向くための行動をしようよ。その苦しみに押しつぶされないだけの『愛』が僕にはある。華菜を守りたい。僕が笑顔にしたいと思うよ」 彼女はまだ驚いていたから、僕は少し戯けた。「僕って意外と根性があることを知ってた? 周りの人がなんと言おうと、華菜すらも『無理だよ』と言おうと、そんなの気にしない。障害の話もしてたけど、僕たちの間に乗り越えられない障害なんてないと僕は思ってる。だって僕たちには、確かな『信頼』があると思っているから。これまで一緒に過ごした月日がある。『障害』って、確かに大変なものもあるよ。でも、自分たちで『障害』と呼び、諦めているものもあるんじゃないかな。そして、どんな大きな障害も少しは抵抗できる気がする。さっき華菜が言ってたものに強いて名前をつけるなら、道に落ちているただの『石ころ』だよ。そんな小さなものは気にもならない。僕が、簡単に払い退けて覆すよ」 僕は、この時間が二人の関係をさらに深められることを祈りながら話す。「それに、僕にダメな部分があってそのために華菜を救えないのなら、何がなんでもそんな自分を変えるよ。華菜のために自分を変えることを嫌だとは思わない。全然大変でもじゃない。そんな大変さより、華菜の幸せを僕自身が奪うことの方がずっと苦しい。そのためなら、僕はいくらでも強くなるよ」「悠希、そこまで考えていてくれたのね」  彼女の表情が、少し柔らかく
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-21
Chapter: 二十章 「そもそも違いすぎるよ」
 彼女は、はっきりとしない僕をキリッとにらんできた。 でも、彼女の表情から怒りはなぜか感じられなかった。「そもそも私と悠希は、違いすぎるよ」 否定されるとその物事だけでなく、僕自身を否定されたように感じる。 「しっかりしろ!」と自分自身に言葉を投げかける。僕は『言葉』の力をまだ信じているのだろうか。それとも他人には効果がなくても、辛い時僕は『言葉』に救われてきたから自分には使うのだろうか。「まず、私たちは性別が違うよね?」 彼女は、落ち着いた声でそう言った。「それはそうだね」「性別が違うこと。悠希はきっと『たったそれだけ?』と思うよね。でも性別が違うことで、結構ズレは出てくる。その違いで、悩むことや相手に求めることはかなり違うんだよ」 彼女は、僕の目を見つめた。「女性は、私と同じようにありのままの自分を全部受け入れてほしいと思う人が圧倒的に多い。聞いてほしいけど、助言を求めていないこともよくある。一方、男性はありのままの自分を見せたくないし、そもそも自分の弱さを認めたくないと思う人が多い。そこには、男性のプライドの高さが関係している。女性からしたら大したことないと思うことでも、男性は大切に思っているということもある。どちらも自分勝手と問題視しないことはできるよ。でも、悠希はそうはしたくないんでしょ? 性別によって、こんなにも違いがあることを悠希は知っていた?」「知らなかった」 彼女の言う通りで、僕はそこに気づくことができていなかった。 また、違うからいってそこを軽視したくないし、ちゃんと理解したいとも思っている。 それが相手を受け入れることだと思っているから。「まあ、知らないことは珍しくはないと思うよ。人は意外と物事について深く考えていないから。みんな考えているように装っているだけ。私は人生の中で考えることが何度もあったから知ってるだけだから。でも、これで違いがあるのがはっきりとわかったよね」 彼女は、どうしてそんなにせつない顔をして、違いをわざわざ教えてくれるのだろう。 まずわかったことは、考える機会がたくさんあったということは、それだけ彼女の人生は大変なことが多かったということだ。「さらに、もう一つ悠希に教えてあげるよ。悠希も多くの男性と同じようにプライドを持っているよ」「僕が、プライドを?」 それは、ついさっき自分自身
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-20
Chapter: 十九章 「勝手に『一緒に』しないで」
「私を、美琴や悠希と勝手に『一緒に』しないで!」 彼女は、もう一度はっきりと言った。 さらに、美琴だけじゃなく、『僕』も突然話に登場してきた。 なぜ今僕の名前が出てくるのだろう。 僕自身は、彼女のことに『僕』は何も関係ないと思っている。 そして、彼女の目は曇っていた。「一緒じゃない?」 僕は、彼女の言葉を繰り返した。 彼女の言葉の意味も、今なぜ彼女の目が曇ったのかも僕にはわからなかった。 でも、僕は「わからない」という言葉がいつもどうしても言えない。 相手は僕のために答えるのは面倒だろうと考えてしまう。だからその思いをわざわざ表現せず、話をなんとなく合わせるように僕はなっていった。 それでも会話は、それなりにできていたからいいかと思っていた。 きっと答えてもらえないだろうという自信のなさも関係しているのだろう。 『自信』というものはなかなか厄介もので、さまざまなことや物の邪魔をする。 それとも、僕にも『プライド』というものがあるのだろうか。 僕にも少しはプライドがある? そんなことを今まで考えたことなかったから、頭に浮かんだ言葉に驚いた。 『自信』か『プライド』かまたそれ以外のものか僕にはすぐにわからなかった。 自分のことでさえこんなにわからないなんて本当に僕はおかしい。 彼女のことを考えていくうちに、僕自身が受け身なままだと人を救うことはできないとわかってきた。それなのに、すぐに変わることを僕はできていない。 これじゃあダメだ。もっと努力をしなきゃ。その方法はわからないけど、僕は自分の足りないところを見つけると早く補いたいといつも思う。 まずは、彼女の話に集中することにした。「確かに美琴は、私のせいで苦しんでいた。悠希も今もきっと苦しんでいる。その点では、私も、美琴と悠希と同じカテゴリーだよ。でも、同じことはたったそれだけだよ? 私と美琴は全く違う人で、悠希に関しては性別すら違う。何に苦しんでいるかは全く違うのに、それを一括りするのは少し強引すぎない?」「僕はそんな、」「そんなつもりじゃない? それは悠希の気持ちだよね。私にそう伝わってしまったなら、それはそういうことなんだよ」 彼女は僕の言葉を先回りして言った。その言葉は僕の言いたい言葉そのものだった。どうして僕が言おうとしたことが彼女にはわかるのだろうか。 
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-19
Chapter: 十八章 「過去編② 過去がつながる」
 美琴がいなくなった屋上で、僕はふとさっきスマホがずっと通知を知らせていたということを思い出した。 思い出したのは、きっと僕が無意識的に現実から目を背けたかったからだと思う。 美琴が死んだことを、僕は受け入れられなかった。 スマホの画面を押すと、たくさんのメッセージと着信が表示された。 僕は、それを一つずつゆっくりと確認していった。 こんなに通知がきていることは、初めてのことだった。「悠希、今どこにいる?」「悠希に会いたいな」「怖いよ」 メッセージの中には、美琴がいた。 でも、その美琴からはいつもの元気さや明るさは感じられなかった。 不安で苦しんでいる美琴が、僕を探している。 着信のすべてに留守電が残されていて、再生すると今はもう聞けるはずのない声が聞こえてきた。 それは、さっきまで目の前にいた美琴の声だった。 まさかもう一度美琴の声が聞けるとは思ってもいなかったので、僕はじっくりと耳を傾けた。 メッセージとは違う内容のことを話していた。でも、伝えようとしていることは同じだった。 僕はスマホから美琴が現れるはずがないとわかっているのに、聞きながらいつの間にかスマホの先に手を伸ばしていた。 声は聞けるのに、もう美琴の笑顔を見ることができないなんて残酷すぎる。 メッセージも着信も、すべて美琴からのものだった。 しかも、それらは美琴の姿が突然消えてから、見つかるまでの間に送られたものだった。 美琴はこんなにも僕に助けを求めていたのに、僕はそれに気づくことができなかった。 ただ必死に探していた。見つけることができれば、何かできると思っていた。それが最優先事項だと疑いもしなかった。 でも、現実は彼女と対面した僕は、彼女を救うことはできなかった。 何が最優先事項だと思った。 救うどころか、僕は間違いを犯したのだから。 人間は間違いを犯す生き物だとよく言われるけど、犯してはいけない間違いというものがある。間違えてはいけない判断というものがある。「僕が代わりに死ねなかったのかな。彼女の苦しみだけを背負っていけなかったのかな」 そう思わずにはいられなかった。 僕は、スマホの電源を切った。 今は誰とも話したくなかったから。 そもそも僕が頼られていたなんて今初めて知った。どうしてダメな部分が多い僕を美琴は頼ってくれていたのだろ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-18
Chapter: 十七章 「過去編① 吉川美琴とのお話」
「今から話すことは、僕と元カノのある話だよ。聞いていて、気分が悪くなったらすぐに言ってくれていいからね」 僕はそう前置きをした。 本当はどこまでの話を恋人に話すべきなのか僕はわかっていない。何を話さなければいけなくて、何は話さない方がいいという明確な線引きは世の中にないから。 一層のこと誰かが明確に線をひいてくれたらいいのにと思う。 元カノの話を現在の彼女にするのはあまりよくないのはなんとなくわかっている。しかし、あの日の話はかなり特殊な内容だから、彼女にも伝えておくべきことかもしれないと思った。「もしよかったら、華菜が何を感じたか教えてほしい。また、僕という人間を今一度見定めてくれてもいい」「うん」「実は、華菜の涙を見てすぐにその話を華菜にできなかったには、もう一つ理由があったんだ」「もう一つの理由?」 彼女は意外そうな顔をしていた。「うん。僕は前に元カノの涙を見たことがあって、その時に元カノをを救うことができなかった。いや、僕が何もできなかったからさらに傷つけて、取り返しのつかないこととなった。華菜の涙を見た時、正直元カノのことを思い出した。そして、また救うことができないかったらどうしようと思うと華菜に対して、発言するのも行動するのも怖くなった。人は何かある度に考えて成長するとよく言われるのに、僕は前と全然変わっていなくて弱いままだ」 彼女は何も言わず、話を聞いてくれている。「華菜にとって、涙とはどんなもの??」「涙? 感情の塊かな」 彼女は突然話が変わったのに、しっかり答えてくれた。「そうなんだね。いや、きっと僕の考え方が変わってるだろうね。僕は、涙は美しくて人を魅了するって思う。あんなに透き通ったものは、他にはなかなか見つからないと思う。でも涙は、美しいと感じさせるだけの強い感情があるから流れるんだよね。僕は昔も、華菜の時も、それに気づけていなかった」 僕は彼女に、元カノとの出会いなどをまず簡単に説明した。 そして、あの日何が起きたか話し始めた。 学校の屋上で、僕が美琴をやっと見つけて声をかけた後のことだ。 空は、雲一つなく晴れ渡る。 美琴は、それから僕のことをじっと見つめてくるけど、何も言葉にしない。 僕は、僕でその間何もできずにいた。 ただ時間だけが、流れていた。 美琴のもとに近寄ることも、何か言葉をかける
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-17
寄り添う者

寄り添う者

主人公は色々な人と出会い、その人の人生に触れていく。 それが主人公の抱える孤独と向き合うことで⋯⋯。
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Chapter: 三節 「寄り添う」
僕はさらに、これまで関わった人を再び思い返すことにした。 僕にとってターニングポイントであったから。 愛に生きた人、夢に生きた人、自分の足で未来を見つけて再び歩き出した人。 彼らは孤独を感じていた。 心が折れてしまった時もあった。見ているだけで辛そうだった。 僕もその気持ちに同調してしまう時もあった。 でも、必死に孤独と闘っていた。 決して今という時間を生きることを諦めることはなかった。 僕はその人たちが亡くなってしまうことを止めることは一度しかできなかったけど、その人たちの心の支えに僕はなれていたのだろうか。 彼らの思いにちゃんと寄り添えていたのだろうか。 僕がいることで、孤独と感じる時間が少なかったかははっきりとはわからない。 素敵な顔を僕に見せてくれる人もいた。生きたいという思いが段々強くなったのをしっかりと感じた時もあった。 それらは、寄り添えていた感覚を僕に少しだけ与えてくれた。 一方で、彼らに出会うことで、僕が教えられることもあった。僕自身が強くこともできた。 それは、愛情や夢や希望という思いや感情の強さだ。どんなに辛くても、彼らはそれをずっと信じていた。それらがあったから、生きることに自ら終止符を打つという選択をしなかった。思いとは、人に生きる力を強く与えるものだった。 思いの強さがこれまでだと僕は知らなかった。 彼らの懸命に生きた姿は、僕の心の中にずっと残っている。 忘れることは決してない。 でも、未だに看取り方について後悔は残っている。 もっと彼らのために何かできたのではないかと思う。僕の配慮が足りなかったのではないかとも感じる。 看取ることは、ただ最期の瞬間に立ち会うというだけではなかったから。 その人の苦しみや痛みを知り、残りの人生を今まで生きてきた時間よりも素敵なものにすること。そして、今まで生きてきてよかったと感じられること。 看取ることには、それらを手助けすることも含まれていると僕は彼らを看取って強く感じた。 もちろん、看取る人も一緒に辛くなる時もある。暗い感情を近くでずっと受け止めているのだから、そうなることはおかしなことではない。 看取ることは、誰でもできることではないのかもしれない。 でも、その人が本当に大切な人なら、自分を必要としてくれるなら、孤独な思いを少しでも軽減させる行動を
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-25
Chapter: 二節 「孤独な人と向き合う理由」
 涼華の死があった次の日から、僕は人がいつ亡くなるのかわかるようになった。 最初は何が起きているのかわからなかったから、かなり混乱した。 正直その時の僕はタイミングが悪いと思った。 あと数日早くこの能力が宿っていたら、彼女が亡くなる前に駆けつけることができたから。 人生はいつも思い通りにはならないものだと痛感した。 一方で、これは自分の今までの行いによるものだとも思った。 誰よりも大切な人が孤独に感じているのに僕は何も感じとることができなかった。病気だと知っていたのに、涼華との時間をしっかりとることができていなかった。いや、僕自身はしているつもりだったけど、それはただの自己満だった。 僕は完全に取り返しのつかない間違いを犯した。 信頼されている恋人の僕だからできることってきっとたくさんあったのに、僕は本当に何をしていたのだろう。 あの日から僕はずっと後悔をしている。自分のこともたくさん責めた。いくら責めても、僕は何者にも変われないけど責め続けた。この苦しみは、僕が一生背負い続けけなければいけないとも思っている。 だから、こんな能力が宿ったと思っている。たくさんの人の最期の瞬間に立ち会い、自分が彼女にしたこと、孤独な人の気持ちを知り寄り添うことの大切さを誰かがわからせようとしているのかもしれない。 あの時の僕は、向き合うこともせず、逃げ出して、あまりにも中途半端だった。 そんな覚悟で誰かを元気づけることなんてできるはずがないのに。 孤独の中にいる人の手をとり、生きた意味や納得のいく最期の形を一緒に見つけるためには、その人の抱えている辛さ全部に寄り添わなければとてもできない。 寄り添わなければ、相手をわかろうとしなければ、相手に信頼されることはない。 信頼されなければ、きっと心のうちの悩みを話そうとは思わないから。 しかも僕の場合、短い期間で相手に信頼される必要がある。 中途半端な言葉は、相手の元に届く前に暗闇に飲み込まれてしまう。 それじゃあ誰一人も救うことなどできない。 でも、この能力を正しく使えれば、ある人が亡くなる前にその人に寄り添い、最期を僕が看取ることができる。苦しみではなく、少しでも幸せを握りしめて、この世から旅立つことができると僕は信じている。また、前回会った川嶋 美優さんのように本来は亡くなる予定だった人に希望を
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-24
Chapter: 一節 「過去のお話」
 二年前の出来事だ。 その日は、雨が降っていた。 雨は、記憶を思い出させる効果があるのかもしれない。実際に僕は今まで寄り添ってきた人といる時に、雨が降るととある過去のことを思い出した。 僕はその時、涼華という女性と付き合っていた。 彼女はとにかく明るい女性だった。彼女の明るさに僕が何度救われたかわからない。 でも、病気を患っていてあと何日生きられるかわからないと医師に余命宣告を受けていた。 僕はそのことを付き合う前に知っていた。それでも彼女と付き合いを始めることを選択した。付き合うことをやめようとは一切思わなかった。命が残り少ないことと恋をすることは関係ないと当時の僕は思っていた。 今思えば、彼女のことや先のことを僕は何一つ考えられていなかった。 「やめておいた方がいいよ」と後ろ向きな言葉を彼女が一度だけ言っていたのを今でも覚えている。そのことについて僕は彼女としっかり話し合わなかった。 それが後悔の始まりだろう。 僕が一人になっても、何か困ることは浮かばなかった。でも、ちゃんと彼女とそのことについて話し合うべきだった。 病気のことを知った上で、彼女を最期の瞬間まで愛そうと、何があっても一緒にいようと心に決めていた。だけど、その思いは伝わることはきっとなかった。 僕はただただ自分のことしか考えていなかったのだ。 彼女の両親から今すぐ来てほしいと連絡があった。 僕の中で、嫌な予感はどんどん膨らんでいった。 それは、僕が予想していたより遥かに大きな感情だった。 突然怖くなって身体が震えた。 僕は、息を切らして彼女の元に駆けつけた。 横になっている彼女はとても穏やかな顔をしていた。 周りの人に目を向けると、僕のように慌てている人はいなくて皆下を向いていた。何かを話している人もなぜかいなかった。 この静けさはなんだろう。 嫌な汗がどんどん流れてくる。「涼華は、今さっき命を引き取りました」 涼華のお母さんは、そっと僕に近づいてきて静かにそう告げた。 お母さんの声は、とてもか細かった。普段はこんな感じではない。それほどまでに心身が弱ったいたのだろう。 僕はそれをきづくこともできなかった。「そんな⋯⋯」 僕はその先が言葉にならず、その場で泣き崩れた。色々な感情が混ざりあって僕の体の中で暴れていた。情けないけど、立っていること
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-23
Chapter: 五節 「信じられるもの」
 彼女から屋上に来てほしいと連絡があった。 屋上は僕たちが初めて出会った場所だ。僕たちの関係は、ここから始まった。 そこから彼女は少しずつ、他人を知り、自分を知っていった。 色々なことに触れ、考え方を深めていった。 今はもうあの時の彼女ではない。 あのときの彼女は何も信じていなかった。 短期間で彼女は本当に急激に成長した。 屋上に呼び出すと言うことは、きっと彼女は大事な話したいのだろう。 空を見上げると満月が浮かんでいた。「笑わないで聞いてくれる?」 彼女はまだ僕の方を向いていない。 優しい青色のロングスカートがふわりと揺れている。「はい、ちゃんと聞きます」 僕の言葉を聞いてから、彼女は僕の方を振り向いた。 彼女のあどけない顔が、今日はしっかりしているように見える。「私、孤独にも負けないものがやっと見つかった」 彼女は嬉しそうに笑った。「何ですか」  僕はドキドキした。彼女が出した答えはなんだろうか。 彼女には孤独死せずに、この先ずっと生きてほしいから。「自分自身だよ」 彼女は僕に近づいてきた。「私、わかったよ。私は『生きること』自体が怖かった。ただ怖かった。だから今まで逃げていた。できないことからも、不幸なことからも、私自身からも、本当に全てのことから。一度も向き合ったことがなかった」 僕は彼女に温かい視線を送った。 彼女の不幸な境遇は、色々な要因から起きていたと思う。それをどう捉えるかも確かに大切だ。「そして、淑子さんや尊君の信じるものに触れて、私はこのままじゃダメだと強く思った。彼女たちは、もっと生きたいのに生きることができなかった。もっとやりたいことがあるのにできなった。私は違う。死ぬ運命じゃないのに、生きることから逃げていた。そして、向き合ってみれば、変えられることもあるかもしれないと思った」 僕は二人の話を話してよかったと思った。彼女にはしっかり僕の思いが届いていた。「私が信じられるものってなんだろうってずっと考えてた。その答えがやっとわかった」  彼女はゆっくりと深呼吸した。「それは自分自身。物事に向き合えば、辛い思いになる時もきっとある。でも、それを乗り越えられるかどうかは自分自身にかかっていると思った。心を癒すこと、物事の捉え方を変えるのは本人がすることだから。私は私を信じたい。簡単なこと
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-22
Chapter: 四節 「孤独と対峙して」
「助けて」 夜中に彼女から電話があり、僕は急いで彼女の家に向かった。 僕は心が大きく乱れることがあったのだろうと思った。 電話越しの声が震えていた。 家に着くと、彼女はキッチンで包丁を首に押し当てて泣いていた。 電気もついていない部屋から彼女の泣き声だけが響いていた。 この部屋はまるで彼女の心の中を表しているかのようだ。 彼女は独り言のように話し始めた。「ふとした瞬間に、私って独りだなと感じる。そうするとどうしようもないぐらい死にたくなる。その感情を止められない。私って弱い?」 彼女は死にたい理由を初めて僕に話してくれた。 メンタルが弱ることは普通なことでもある。「弱くないです」 僕はしっかりと彼女の目を見て話した。「本当に?」「本当です」 僕は彼女の手から包丁をゆっくりと切り離した。「でも、独りだよね?」 彼女の目から涙がこぼれそうになっていた。「僕がそばにいます」「歩さんだって、ずっとそばにはいてくれないよね。私が自殺しないとわかればきっといなくなっちゃうんだよね。そんなの嫌だ。ずっとそばにいてよ」  彼女の本心がどんどんあふれてくる。 僕のしていることもちゃんと理解していて、聡明だとも感じた。 誰しも独りでは生きていけない。 人は、頼り支え合っていいものだ。 彼女は独りになることを強く恐れていた。 いや、もうこれ以上独りでいることに耐えられなくなっていたという方が正しいかもしれない。 彼女の心は思っていたよりずっといっぱいいっぱいのようだ。「確かに、僕は美優さんが孤独で自殺をしてしまうことを防ぎにやってきました。それが終わっても、僕たちの関係が完全になくなることはありません。いつでも会えますよ」「ホントに? 歩さんは私のことを裏切らない?? 私をおいてどこかにいってしまわない?」 彼女は自分と闘っていた。前に進もうとしていた。 彼女は今また誰かを信じようとしている。それをすることは彼女にとってとても勇気のいることだっただろう。 だからこそ僕はその気持ちに応えたい。「大丈夫ですよ」「ありがとう。私頑張る」 それは、彼女と心が触れあった瞬間だった。 それから数日が経ったある日のことだ。「歩さんが看取った人の話をもっと聞かせてくれない?」 今僕は彼女の部屋の中にいる。 そう話す彼女はなんだ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-21
Chapter: 三節 「彼女を知りたい」
 季節がまた前に進んだ。 木々は枯れて、寂しさを感じされる。 僕は毎日美優さんに話しかけるために家に行っている。 それはできる限り彼女に気にかけていたいから。 自殺衝動はなかなか完全になくならない物だ。そのことで本人も辛いと思う。 原因を取り除いたらもう大丈夫というほど簡単なものではない。 彼女が自殺をしそうになることは僕がいる時にはなかった。 そして、少しずつだけど、僕たちの距離は縮まっていった。もちろん、だからといって完全には安心はできない。「美優さんの好きなことってなんですか?」 今僕たちは彼女の部屋で、話をしている。 テレビやこたつがあるだけのシンプルな部屋だ。 彼女は上を見上げ、考えているようだ。 僕は彼女が話すまで決して急かさないことにした。じっと待つことにしている。どんな感情でも彼女の思いや気持ちを止めたくないから。 まだまだ彼女のことで、知らないことが多い。 今まで二人の人を看取った経験から、何かをやらないで後悔するのはもう嫌だった。「うーん。特にないかな。最近はやる気も出ないし」 彼女は少し申し訳なさそうにそう言った。「ないと辛くないですか?」「もうそんな感覚もわからなくなっちゃったかな」「そうなんですね。美優さんがよければですが、またゆっくり探してみませんか?」「気が向いたらね」 彼女は完全には否定はしなかった。 だこらこそ、僕はもう一歩踏み出してみた。「もしよければ、自殺したいと思う理由を教えてもらってもいいですか?」「それは……」 彼女は急に落ち着きがなくなった。「大丈夫ですよ。今じゃなくてもいいし、もし話せたらいいですから」「うん。色々あるけど、辛いことが重なったからかな」「教えてくれてありがとうございます」「そんなお礼を言われるようなことを言っていないよ」「そんなことないです。美優さん今確かに頑張ってくれました。辛いと言うこと自体大変なことですから」「そうなんだね」 彼女にイマイチ響いている感じはしなかったけど、今はそれでもいいかと僕は思った。 ゆっくり生きていくことは決して悪いことではないから。むしろ、多くの人は生きることを急ぎすぎている。「じゃあ、嫌いなことはなんですか?」「それは話出すととまらないぐらいあるよ。いいの?」「はい。いいです。僕はどんなことでも、何
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-20
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