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大正
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Romane von 大正

有給休暇は異世界で

有給休暇は異世界で

通称・有休強制消化法案が成立した未来、あらゆる手段で320日分の有休を溜めた男、小鳥遊正明(43)は、ついに有休の消化を始める。いろんな消化方法がある中に特別プランと名前の付いた個人名あてのダイレクトメールに従って会社を訪ねてみると、異世界転移して異世界で休日を過ごすプランがあることを説明される。小鳥遊はこのプランが自分だけへのオリジナルプランであることを察し、そのプラン通りに乗って異世界へ旅立つ。
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Chapter: 第10話:有休中の仕事
 30分待つことなく、武器だけ買いそろえた俺は南門へ向かった。その場で先に待っていたイアンちゃんと合流する。イアンちゃんはさっきより一枚二枚多く着込んだような服装で、頭には軽めの帽子をかぶっていた。 腰にはしっかりナイフを持ち、戦う準備は万端という感じだ。 実際にはもっと重苦しい装備もできたんだろうが、薬草採取ならこのぐらいで大丈夫だろう、という感じだな。「早かったですね。そういえば、武器も持たせずに待ち合わせに来てしまいました。今から急いで武器だけでもそろえに行きますか? 」「いや、アイテムボックスに入れてある。この通り」 アイテムボックスから手の中に滑らかな動きでショートソードを取り出すと、それで納得したのかおおっという声を出して反応する。「あんまり人前でアイテムボックス使いだって見せないほうがいいです。隠しておくほうがいいです」「そうか。あんまり使う人が多くないってことだな」「それもありますが、スリや盗みの犯人だと難癖をつけられることもありますからね。注意してください」 なるほど、俺の財布はこいつのアイテムボックスの中だ、と言いつけるわけか。そのやり口は確かに効果的だな。「じゃあ、外に出ようか。冒険者証を見せれば通行料はいらないんだよね? 」「はいです。私も冒険者証を持ってますから、問題なく通り抜けることができます」 南門を抜け、門を出る際に冒険者証を見せると、登録したてであることを確認される。「日が沈んだら門は閉まるからな。それまでに帰ってくるんだぞ」「はい、お気遣いどうも」「新人が毎回やらかすんでな。新人を見かけたときは一声かけることになっている」 なるほどね。注意喚起ご苦労様。さて、薬草が生えているという茂みのほうまで、少しピクニックと行くか。 行くまでの道中で、冒険者のシステムについてレクチャーしてもらう。冒険者ランクはSSSからFまでの9段階あり、SSSランクには常に一つの冒険者パーティーしか到達できないという厳しい掟と、現段階ではSSSランクは空席であり、空いた椅子をめぐって今S
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-22
Chapter: 第9話:残滓
 奴隷の中の一人の少女の鑑定を行ってみる。その鑑定の中身には驚くべき一つのスキルと一つの称号が書かれていた。「ケンセイ」「イセカイテンイシャノシソン」 片方は剣聖、もしくは拳聖、後は健聖という可能性もあるが、あまり健康そうには見えないので最後のはありえないだろう。どちらにせよ何かしら強そうなイメージが与えられる。問題はもう一つのほうだ。 異世界転移者の子孫。これはあれだろうか。俺以外の異世界転移者がこの世界に過去に存在していて、その転移者が残していった種が畑に植えられて、実った結果、ということなのだろう。おそらくはこの子は借金奴隷なんだろうな。母親が食うに困って売った、というところだろう。 同じ異世界転移者として気になるな。しかし、俺が助けたところでどうにかなるものなのか。俺だってあと319日たてば自分の世界に帰るのだ。そこまで責任を取れと言われても難しいし、しかし、これを見逃すのも……同じ有休消化者として、それはもっと難しい。 檻に近づいてその子をじっと見る。俺を見返すその子の目は深く沈んでいて、悲しみをたたえるだけになっていた。どれだけの間この子は奴隷として過ごしてきたのだろう。そして、いったいどれだけの間、この子に銀貨一枚の価値すら見出さず、普通の奴隷として売ろうとしてきたのだろう。 ほんの銀貨1枚。それだけの費用をかけるだけで、この子は剣聖か拳聖としての素質を見込まれて、より高い金額で販売されている可能性もあったわけだ。逆に言えば、それだけ期待をかける奴隷商がいたならば彼女は俺の前に現れることはなかったということでもあるな。そして異世界転移者である俺でなければ、彼女の価値を見出すこともなかったということになる。 これは、買えといわれているのと同じではないか。こんなイベントまで用意されているのだとしたら、神崎さんは趣味が悪いが、確かに異世界あるあるではないか。彼女を購入するためにはどうすればいいんだろう。「なあ、こいつらはいつ売りに出されるんだ? 」「明日の朝には。今は見せの時間だ。どうしても欲しけりゃ明日の朝一で店に来な。そうすりゃせめて人に見せられる服装をさせて店先に並
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-21
Chapter: 第8話:スキル確認
 アイテムボックス以外にどんなスキルが付与されているのか。それを確かめに行く必要があるな。「どこかでスキルを確認することはできないのかい? 」「それなら、そこの露店の占いばあさんに頼むといいです。各地にネットワークを広げていて、ばあさんはみんな鑑定の技能を持ってる凄腕ばかりなのです。なのに、銀貨1枚で鑑定してくれる格安便利ばあさんなのです」 そんな街に一人はいるセーブデータを記録してくれる教会の司祭、みたいな存在がこの世界にも存在するらしい。ただ、田舎にまではさすがに足を伸ばしていないらしく、このボコマズの町ぐらいの中都市には一人はいるようだ。そして、その占いばあさんの前までくる。「鑑定かい? 」 ばあさんが上目遣いにこちらを見る。「ああ、頼むよ。自分が何のスキルを持っているかよくわかってないんだ」「銀貨1枚だ、先払いだよ」 アイテムボックスから銀貨を出し、ばあさんに渡す。「アイテムボックスを持ってるのはわかってるんだねえ。じゃあしばらく待ちな」 ばあさんが俺の顔を見ながら目を光らせる。しばらくした後、ばあさんの目が光るのが終わり、結果がばあさんの手によって書き出されていく。「御同輩じゃないか。なんで自分のスキルも知らずにあたしに依頼するかねえ」 そう言われながら書き始められたスキル欄には、カンテイの文字が。鑑定。つまり、俺も鑑定スキルを持っているということなのだろう。確かに、異世界転移じゃ定番中の定番だ。それを持たせておいてくれたということか。神崎さん、隅々まで至れり尽くせりの異世界旅行をありがとう。俺、こっちでもしばらくたくましく生きてみます。 鑑定以外には、タイジュツ、ケンジュツ、ソウジュツ、アンキジュツ……などと並んでいき、どれもレベル1のものが付与されていた。それぞれ体術、剣術、槍術、暗器術などだろう。カタカナだけなので、同音異義語を含んでいる可能性はあるが、おそらくは冒険者としてある程度必要不可欠なものはインストールされている、と考えてみてもいいんだろうな。 スキルの中にアールエムティーというものが存
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-20
Chapter: 第7話:取引のお時間
 サイバルさんとの会食が始まる。サイバルさんの白パンはよくトーストされた、こちらで言う六枚切りの食パンのような弾力で、馴染み深いものではある。それが160円で食えるとなると、やはり十分物価は安いな。これでも世間が回っているということは、よほどの経済的な格差があるのか、それとも果てがない上が存在するのか。 まあそれはさておき、食事だ。温かいスープにパンを浸して食べ、パンの酸味を抑えつつも、決して柔らかくないそのパンをかみ砕き、咀嚼して胃に入れる。80円の食事ならこんなものか……現世でも、298円でハンバーグ弁当が食えるスーパーも確かにあったが、あれに比べればこっちのほうが少なくとも量はあるし腹は満たされる。量が足りなければ二つ頼めばいいだけだ。しかし、そろそろ顎にガタが来る年齢にこの黒パンの表面の硬さはちょっと来るな。 サイバルさんは白パンを優雅に食べ、そしてスープのほうもこちらより少し肉が多い。やはりお高いセットはそれだけ価値がある、ということだろう。 温かさと量だけはあるこの食事を無事に胃に詰め込み、顎が痛くならないかどうか心配する間に、サイバルさんも食べ終えて、ようやく腹と顎が落ち着いたところで商談に入る。「うむ、私の話はシンプルだ。その服を売ってほしい。おそらく、何かしらの取引で手に入れたものだとは思うのだが、その素材を研究してより良い服造りをするためにも物そのものが必要だ。ぜひとも協力していただきたい」「では、こちらの条件を。上から下まであなたのお店で、最高級品でなくてもいいのでそろえさせていただきたい。私はこれが一張羅なもので、これを渡してしまっては裸で生活しなければいけなくなる。その点はまずよろしいですか? 」「うむ! それぐらいは喜んで出させてもらおう。手付金代わりに受け取ってもらいたい。服の値段についてはまた別で……と考えているぐらいだ。そんな話でよければいくらでも乗ろう。それで、いくら出せば君のその服、譲ってくれるのかね? 」 うーん……実際問題どのぐらいなんだろう? 二度と手に入らないという意味ではそれなりに高級品であることに間違いはないのだろうが
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-19
Chapter: 第6話:この世界について
 食堂に入り、適当に空いた座席に座る。「リンカさん、ランチ二つで」 イアンちゃんが早速注文をする。通い慣れてる感じがするな。「あらイアンちゃん、久しぶり。ここに来るってことはお客さんかしら」「そうです、お仕事です。なので美味しいところをお願いします」「うちはいつも美味しいところしか提供してないよ! 」 いつものお互いの軽口なのか、嫌みっぽいやり取りではなかった。他の有休消化者も似たようなやり取りはしてきたんだろう。しばらくすると、温かそうなスープと肉の焼いた塊、そして付け合わせのようなパンが出てきた。パンは白パンではないので、お値段はそれ相応、ということなんだろう。「これがこっちで一般的な外食の形になります。これで銅貨8枚ってところですね。下手に自炊するより外食の方が安くすみます。たくさん利用してあげてください」「ここにはよく来るんだ? お互いに顔見知りって感じだけど」「そうですね、神崎さんからの紹介の方を連れてくるときは大体ここですね。後は時々おごってもらうのもここになります。ここ、高級ランチもやってて、銅貨16枚払うと白パンが出てくるんですよ! 」 なるほど、白パンはやはり高級路線なわけだな。しかし、一般庶民でもその気になれば手を出せる、ということまでわかった。そして、もう一つ分かったことがある。この銅貨一枚は10円ほどの価値ということだ。つまり、今日の昼飯代はイアンちゃんの分を含めても160円しか支払ってないことになる。 現世であれば2000円は軽く超えるところだろうに、確かに事前に伝えられている通り、物価は十分の一程度になっているのだろう。しかし、160円で白パン定食が食えるなら、毎日でもいいところだが、下手に毎食それを頼んで悪い輩に目を付けられる可能性もあるのだ、ほどほどにしておくべきだろう。 黒パンはほのかな酸味があり、ライ麦パンかな? と思う程度。白パンが当たり前の現世からすれば逆に高級路線のパン、と判断することもできるので、こっちに慣れるほうが逆に贅沢をしてる気分になってくるな。「さて、タカナシさん。まずはお金の話をしましょう」
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-18
Chapter: 第5話:冒険者ギルド
 町の中に入り、様子を見る。よく踏み固められた地面に、石造りの建物。およそ地震対策などが考えられていない、単純な造り。日本なら確実に揺れでつぶれているであろうその建物は、明らかに地震なんてものとは無縁であろうことが感じられる。 異世界の空気を胸いっぱいに吸い込む。酸味がかった、誰かの体臭にも似たその香りは、実際に誰かの、いうわけではなく、この世界の人々の衛生概念がそのぐらいであるか、こちらの世界の人々の体臭がひときわ濃いのか。とにかく酸っぱい匂いが少しだけ漂っていた。この匂いにも慣れていかなきゃいけないんだよな。「では、まずは冒険者登録しましょう。市民証も兼ねた身分証みたいなものですから、持ってない人は田舎者か犯罪者ぐらいのものになります」「異世界から来たのが犯罪じゃないなら取れるはずだな。何か取る際に制限とかそういうものはあったりするのかい? 」「基本的にはないですが、向こうで何かしら犯行を行った後にこちらに来ている場合、引っ掛かる可能性はありますが……ないですよね? 」「ないねえ。気づかないうちにやってる犯罪がなければ、だけど」「じゃあ大丈夫だと思いますよ。意識的に行わない限りは犯罪者チェックは機能しないはずですから」 なら心配ないな。そのまま街中を歩いていくと、だんだん人通りが増えてきて繁華街の様相を呈してきた。見たことのある野菜の屋台や、見たことのない食べ物らしきものまで並んでいる。あれは生で食べるんだろうか。それとも煮るんだろうか。「こっちの空気にはいずれ慣れますから、とりあえず今日は冒険者登録と宿を決めてしまいましょう。その後でいろいろこっちの世界の相場観や何やらを説明することになると思います。メモとかいりますか? あると便利ですよ」「そうだねえ。紙が高級品でなければいいんだけど」「そこそこ高級品ではありますけど、買えないほどの値段ではないですから大丈夫ですよ。一応通常使いできる程度には量産されている価格ではあります」 ふむ、やはり紙はまだちょっとお高い文明度らしい。そういえば最近は紙もお高くなってきているし、もしかしたら現実世界の文明度は少し後退
Zuletzt aktualisiert: 2026-04-17
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