LOGIN通称・有休強制消化法案が成立した未来、あらゆる手段で320日分の有休を溜めた男、小鳥遊正明(43)は、ついに有休の消化を始める。いろんな消化方法がある中に特別プランと名前の付いた個人名あてのダイレクトメールに従って会社を訪ねてみると、異世界転移して異世界で休日を過ごすプランがあることを説明される。小鳥遊はこのプランが自分だけへのオリジナルプランであることを察し、そのプラン通りに乗って異世界へ旅立つ。
View More20分歩いて、オルハヌスのダンジョンへたどり着いた。「そういえば、イアンちゃんご飯は? 」「今日は抜きの日なのでだいじょうぶなのです。お二人はちゃんと持ってきていますか? 」「俺のアイテムボックスに入っている。だから大丈夫だ」 イアンちゃんにもダイエットの日、みたいなものがあるらしい。決して生活に困っているわけではない、というのは前に聞いたので、純粋に女の子には飯を抜いておきたい日というのが定期的に存在するのだろう。 セルフィにはちょっとまだ早い話かな? とセルフィを見つめていると、ハテナマークが付いているような顔でこちらを見つめ返す。 さて、さっそく入場をしよう。入り口にいる衛兵に挨拶をしながら進もう。お疲れ様でーす。「まて、お前たち見ない顔だな。冒険者証を提示してくれるか」 顔パスには程遠い、というか初回だから仕方ないか。黙って冒険者証を提示する。「ふむ、C、E、Eランクか。なら大丈夫だな。Cランクの君が引率かな」「そうなのです。今日は、ですがきっちり今日中に体に覚えさせる予定なのです」 イアンちゃんが胸を張って先輩風を吹かせる。イアンちゃんCランクだったのか。だとすれば立派に胸を張るだけの実力はあるということだな。「ならば大丈夫だな。落ち着いて先輩の言うことを聞くんだぞ」 ぱっと見俺のほうが年上のはずだが、それでもイアンちゃんを先輩呼びするということは、冒険者は完全実力主義ということなんだろう。こういうところからも情報の一端を仕入れることができる。「じゃあ行くですよ。どんなモンスターが出るかはわかってますか? 」「来る前に冒険者ギルドで調べたから一通りは。とりあえず二層までは問題なく潜れるかな、と思っている。ただ、弓矢持ちのゴブリンが出てきたらまた話は変わってくると思うけどね」「その認識で合ってると思うのです。なので、とりあえず二層までは行くのです」 ダンジョン内部は土と石の入り混じる壁の中に、光る鉱石が所々にちりばめられて、なかなかに綺麗だ。「この光る鉱石は希少品だっ
調べものを終えてさっそくオルハヌスのダンジョンへ行こうと、冒険者ギルドの出入り口へ差し掛かったところで前から声がかかる。「あ、やっと見つけました。タカナシさん発見なのです」 イアンちゃんだった。なんだか久しぶりに見える。「やあ、おはよう。お仕事? 頑張ってね」「いえ、タカナシさんに用事なのです。ちゃんと有給休暇でこの場所を楽しんでいらっしゃっているかのアンケートというか、普段の過ごし方についていろいろと説明を聞かなければならないのでお話を聞きたいのです」「うーん、今からオルハヌスのダンジョンへ行こうと思ってたんだよね。行きながらじゃダメかな? 」 イアンちゃんの仕事に付き合う必要は十分にあるとは思うのだが、こちらもそれなりに生活がかかっている話なので、気軽にいつでもOK、じゃあ今日はダンジョンは後日にして……とも反応しがたい。「いいですよ、私も同行するのです。 オルハヌスのダンジョンへ行こうという話なら、西門よりも北門のほうが近いですからそちらへ向かうのです」 イアンちゃんが同伴してくれるなら心強い。初めての場所にはやはりガイドがつきものだ。イアンちゃんをよく見れば、既に戦闘をする格好で冒険者ギルドに来ている。 おそらくは銀の卵亭で俺とセルフィが出掛けたことと、冒険者装備に着替えてから出かけたという話を仕入れて、急いで装備だけでもそろえてここにいるかどうか探しに来たんだろう。「じゃあ、行きがけに話に答えながら向かおうか。何もしないよりもそのほうが効率的だし無駄がない」 イアンちゃんが向かう途中に紙とペンを用意してくれていたので、そのアンケート項目に答えていく。 あなたはきちんと有給休暇を取れていますか? これは「はい」だな。 生活のために無理をしているとか、働きすぎてろくに休みが取れない状況にありますか? これは「いいえ」だな。休もうと思えば休める程度には生活資金を得られている。 早く有給休暇を終えて職場に復帰したいと思っていますか。これは……今はまだ「いいえ」だな。セルフィが奴隷か
食べ終えて財布の重さもありがたく、それにつけても顎の痛さよ。 一句出来た。こっちの世界には俳句なんておハイソな趣味はないかもしれないが、文化的な側面としてこういうものを流行らせて、いいものを詠んだ奴には賞金が出るような仕組みを広めるのも悪くない気がしてきた。 さて、昨日はしっかり肉を採ったし、今日はダンジョンか薬草か……薬草だとついでに肉も取れるし、前回も中々の収穫量を誇ったが、採りに行ってまだ日が浅いか。さすがにそう数日で薬草がモリモリ育つとも思えない。ここはダンジョンへ行くべきだろうか。「むむむ……今日は何をしようかねえ」「なにも思いつかないなら休みにしてもよろしいのでは? 」「二日前に休んだばかりじゃないか。そうそう休みばかり取っていては体がなまってしまうし、うっかりしている間に経済の発展に追い抜かれてしまう」「よくわかりませんが、思いつかないなら、とりあえず冒険者ギルドへ行って、調べものや依頼を探すのが良いと思いますが」 なるほど、現地に近い所へ行って決める、というのか。それも悪くないし、そういえばギルドの書棚に調べものをする、というタスクもあったな。とりあえず冒険者ギルドに行くのは確定でいいらしいな。「よし、じゃあセルフィの言う通り、まずは冒険者ギルドに行って何をするにしても対応できるようにしていこう。着替えて出発だ」「はい、行きましょう」 部屋に戻って冒険衣装に着替える。そろそろちゃんとした装備をそろえてもいいような気がしてきたな。軽い胴当てのような、急所だけうまくカバーしてくれるようなものがあればいいんだが、そういうものを探す日にしてもいいかもな。 親父さんに声をかけて弁当を受け取ると、いつも通り出かける。今日は直接どこかに行くわけではないのでその分儲けは少なくなるだろうが、許容範囲ということにしておこう。 冒険者ギルドに到着し、調べもの。セルフィに依頼を見てもらいつつ、書棚で魔法に関する書物を見つける。時空魔法については前に調べたので、暗黒魔法や聖魔法、空間魔法についての物を探す。
予想どおり、バチクソまぶしい日差しで目が覚める。もう慣れた。 ここに泊まる間か、もしくは……そうだな、この星の地軸が良い感じに傾いているならば、という条件付きになるが、日の昇る角度が変わればこれもマシになったり、少し遅れて起きたりすることができるのだろう。 目を覚まして井戸まで行き、身支度を済ませて塩と歯ブラシで歯を磨く。この原始的な歯ブラシにも慣れてきたが、ナイロンでできた歯ブラシが懐かしくもなる。やはり、産業革命から始まる近代化の波によって、公衆衛生用品にも劇的な変化が起きたのは間違いないだろう。 ここでは房楊枝がせいぜいだが、地域によっては木の棒に動物の硬めの毛を植え付けた原始的な近代歯ブラシの原型で歯を磨いているのかもしれないな。そういう商品を探し出して流通させるだけでも一儲けできそうな気はする。ただ、利益率的に美味しい商品ではなさそうだ。「おはよーございます」 朝は血圧低めなセルフィがよたよたと起きてきた。今日もまだお眠らしいが、井戸から水を汲んでやって顔を洗うと、いつものセルフィに段々戻り始めた。「んー……よし! 今日もばっちり! 」 顔を洗って歯を磨いて、髪を結びなおして、いつものセルフィの形に戻る。そして、着替えて今日も洗濯をするが、今日からは清潔魔法に加えて石鹸を使っていくことにした。固まった分の石鹸をこすりつけて、汚れている部分に付けて洗濯板でこすり落とす。 どうやら、石鹸成分はきちんと作用しているのを太陽の元ではっきりと確認できた、昨夜は火魔法で照らしながらやっていた。 殆どが色と臭いが頼りで、明確に汚れが落ちていたかはわからなかったが、今は太陽の下、よくわかる。黒いよごれや皮脂が塊で出てきているのを実感している。 こんなに汚れていたのか……と思うほどだが、これはまだ現代人思考が抜けていない証拠だろう。他のみんなはもっと薄汚れた格好や清潔レベルで活動をしているのだ。 自分とセルフィだけでも綺麗にしておかないとな。セルフィに石鹸を少しこすらせて、手を綺麗にさせる。「手
コボルトファイターは武器も立派な割に動きのほうがついてこれてない。それが分かっただけでも儲けだ。もし、こちらのほうが確実に早く動けるならば一方的にボコることができるので美味しいモンスターだと言えるだろう。 だが、コボルトスカウトは斥候と名前がついている以上、素早いモンスターである可能性が高い。ナイフも持っているようだし、それだけ危険であるかもしれない。苦手なのはこっちかもしれないな。 しばらくコボルトファイターを倒して三層をうろうろしていると、コボルトと同じぐらいの大きさでナイフを持った、コボルトっぽいものがタタタッと駆け寄ってきた。自然に出てきたので普
教えたがりのおじさんから情報を得て、食事も無事にし終えた。どうやら四層ではコボルトフェンサーやコボルトバーサーカーなど、より戦闘意欲と武器の鋭いモンスターが襲ってくるらしい。とりあえず三層に降りてみて、そこで戦えるかどうかを確認したほうがいいだろうな。「さて……二層の地図も出来上がったし、三層まで行ってみるか」「大丈夫ですか? 三層のモンスターはより強いとさっき聞きました。ご主人様はまだいけますか? 」「二層でも大丈夫だったし、三層もきっと大丈夫だろう。とりあえず行くだけ行ってみて、ダメそうなら戻ればいいさ。今
次のコボルトを探す。探さなくてもその辺にうろうろしているが、この中で一番近いコボルトを探す。できれば同時に三匹以上の集団には出会いたくない。こっちは二人、同時に相手にできるのは二匹が限界だ。 もっとこなれてくれば複数モンスターにも対処できるようになるかもしれないが、こちとら戦闘はまだ三日目なんだ。そこまで手慣れたベテランでもないし、もしかしたら戦闘開始三日目でダンジョンに潜るというのも無謀な話だったのかもしれない。しかし、実際にできてしまっていることを考えたら決して無謀な策ということでもないらしい。 さて、俺の番だ。コボルトは決して大きい体格をしていない
パナメラのダンジョンに入場する。入った先では人が幾人もいて、臨時パーティーの募集やそれぞれの持ち物の確認、今日の探索予定などを確認していたりする。ダンジョンの中で確認していてもいいのかとも考えたが、どうやら第一階層はモンスターが出てこないらしい。さすが初心者向けダンジョン、緩いものだな。 実際に活動するのは一層の途中から、ということらしい。楽しみにしすぎて地図も何も持ってこなかったおかげで、自分で地図を作りながら進まなくちゃならないな。「とりあえず奥へ行くか。この辺はまだ安全というより何も出ないらしい。モンスターが出るところまでまず行こう。戦ってみてから
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