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羽の赦し記録者
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Novel-novel oleh 羽の赦し記録者

堕天使に寵愛を。そして、全ての魂に、グレイスを。

堕天使に寵愛を。そして、全ての魂に、グレイスを。

幾千の人間を己の傲慢で殺し尽くした災厄の暗殺者、死を作り続けた罪人が自分に求めていたのは『自らの死』だった。 しかし、彼に訪れた突然の死でも、それを見ていた人間を超越する存在は安寧を許してくれなかった。 訪れたのは祈りを念頭にして魔術を扱う、罪と徳がそれぞれ暗躍する世界。そこで彼は愛する者を守るために魔術という祈りを武器にあらゆる苦難に立ち向かう。 謎が解き明かされたら出るのは真の救済か?それとも絶望か? 本当の善と悪とは一体何なのか……? これは『沈黙思想譚(ちんもくしそうたん)』という『祈り』の真なる意味を考える話である。
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Chapter: 第3話 異世界へ、もう一度だけ、愛する人へ祈りを捧げるために
(嗚呼、またこの夢か) 『へへ、やったぜ!!』 『ざまぁーねぇーな!!』 視界が真っ赤に染まるのを感じる中、不協和音にも似た男達の度し難《がた》いほどに汚い声が耳に響く。 例えるなら、銃弾が耳から入り込み、頭蓋《ずがい》の中で貫通せずに跳弾を繰り返し、脳を変形させる勢いで響き回る……そんな錯覚すら襲ってくる。 言葉という名の『狂気』と『凶器』は、この夢を見るたびに視界を赤く染め上げ、俺の心を発狂させるように蝕《むしば》んでいく。 聞くに堪えない声……。 仮に手の内に鼓膜を突き破れる棒のようなものがあったなら、迷わず突き刺しているだろう。その確信を抱かせながらも、声は無情に響き続ける。 (ふざけんな……思い出させるな……!!) 護《まも》り切れなかった過去。思い出すだけで憎悪に身を焦がすその記憶が蘇るたび、これ以上怒り狂ったら自分はどうなってしまうのかという、根源的な恐怖に支配される。 怒りのあまり、得体の知れない何かに侵食されてしまうかもしれないという恐怖と絶望は、筆舌《しつぜつ》に尽くし難いものだった。 俺が『特別な何者でもなかった』という現実。そしてそれに気づけなかった自分に、宛て先のない後悔を突きつけられる時間《あくむ》。 視界が歪み、醜悪《しゅうあく》な声と共に雨音が耳を打った。 ……あのとき。 目の前で、大切な命が消えた。 俺が今まで自らの手で行ってきたことを、そっくりそのままやり返されたように……。 自らの心が引き裂かれる痛みによって、初めて被害者の気持ちを知った。 俺は勘違いしていた。 ……。 ――圧倒的な。 絶対的な……。 ―――見るに堪えない。 俺の傲慢《ごうまん》。 (もう……) 己が強者であるつもりでいた。 どこの誰とも知れぬ有象無象《うぞうむぞう》に殺されることなどない。だから守れると思っていた。 (やめてくれ……!!) でも、それは──この時間を与えられる度に。 (歪む……やめてくれ) 狂死《きょうし》しかねないほどの痛みと共に。 突きつけられた。 (これ以上はやめてくれ……!!) まるで、全身に凌遅刑《りょうちけい》を下されているかのような絶望感。 (なんでもする……!!) 本当に強かったなら、《《あいつ
Terakhir Diperbarui: 2026-08-11
Chapter: 第2話 殺されてもいい?その言葉の真意をまだ知らない
風に紛れて、誰かの声に似た何かが響く。 それが風自体が発した音であるかのように。 『これは、とある誰かの昔話だ。好きな姿勢で、好きな間隔で、好きな時間に聞いてくれればいい。それは読者のあなたに委《ゆだ》ねよう……』 『では、準備は出来たかな?……始めよう』 『 ―――ひとりの青年がいた。彼は“死”だけを信じて生きていた。何故、そうなったのか?』 その説明の前に、人間が不気味に口角を釣り上げたような間合いが空いた……。 そして、その誰とも分からない声は、再びあなたの脳内に再生される。 『それは簡単に説明できる。生きるには金がいる。そして、金は人間が持っている。ならば、人間から奪えばいい』 『___ただ、それだけだ……。だが、その方法には少なからずいくつかの弊害が生まれることは、皆も想像がつくだろう』 『まず、抵抗されるかもしれない。しかし、それは青年にとってなんの問題もなかった。抵抗されない方法は、簡単だった』 『殺せばいい──そうすれば、残りの弊害《障害》も……』 青年の考えは、まさに悪魔と言っていいものだった。 その考えに至った理由も。 それがもたらす青年にとっての利点も。 まるで本当に悪魔が耳元で囁いたとしか思えない程に……残忍な理由だった。 『誰かに反撃される可能性は、証拠《しょうこ》を残さなければ……いい。その方法が、最も反撃も証拠も残りにくい。スラム街。生まれた子どもが三日後に餓死《がし》することが、珍しくもなかった場所。青年は、物心ついたときにはもう、独りだった。腹が空き、腐《くさ》りかけのリンゴを盗んだ。それが彼の“人生のはじまり”だった』 『しかし、数分後には店主に見つかって路地裏《ろじうら》で殴《なぐ》られ、ゲロと血でぐしゃぐしゃになっても──許されなかった。もう一発でも殴られたら死ぬ。幼子であった青年がそう思った瞬間、なにか死に抗う方法が無いかと思って、ただ反射的に手を無造作に伸ばした。「死にたくない」という気持ちだけで』 また、不自然な間合いが空く。 そして、熱狂の渦にいる者が発するように、その声はひどく興奮しているように聞こえた……。 『そして、それを手に持ってしまった。見つけてしまった。手に取ったのは割れた瓶《びん》』 『無意識に……。ただ、"死にたくない"とい
Terakhir Diperbarui: 2026-08-10
Chapter: 第1話 己が奪った命の重みを、その暗殺者は自分が殺される時に知った
この話は、幾千《いくせん》の屍《しかばね》を築いた暗殺者の青年とそれを取り巻く者達の祈りが紡《つむ》ぐ、ファンタジー救済譚。 しかし、忘却は祈りを鈍《にぶ》らせる。 まるで歴史が風化して曖昧になるように……。 祈りが届かない者の名は、声にすらならず、風に消える。 ーーーもし、その風に感情があったのなら……風は何を思って消えたのか? 闇は光より先に、祈りはその名を呼んだ。 闇より届いた祈りは、果たして誰の祈りだったのか? 彼らは祈ったのではない。 世界を変えるために……裂いたのだ。 世界は祈りでは変わらないのか……? それとも……。 あなたがもしなにか祈りを抱いているならば……それを手放さない理由は……? これは『祈りとはなにか?』という問いを、思想そのものの物語に置き換えたもの。 祈りを見つけるために、罪に塗れた青年が見た世界。 そして……その序章。 --- 熱い。熱い。熱い……。 胸を素手で──いや、《《骨の腕》》でぶち抜かれる感触は、想像以上だった。 それが既に命に届く致命傷であるという事を理解しようとするが、彼はまだ現実を認識しきれずにいた。 歴戦の暗殺者であると自惚《うぬぼ》れていた自分への、神からの『他人の痛みを知れ』という最後通告のような激痛。 今も、筋肉と内臓に無理矢理割り込んできた異物が、ギチリ、ギチリと嫌な音を立てている。 脳は『その事実を受け入れろ』と無慈悲に告げているが、同時に最後の慈悲をかけるように血液とアドレナリンを一気に駆け巡らせ、痛みを何とか抑え込もうとしているようだった。 ───それでも、彼が感じているその痛みは絶大だった。 死にかけるような傷など、青年は何度も負ってきた。 自分は痛みに鈍くなっていると思っていた。 ーーーだが、それが間違いだった……。 死に際になって、己がいかに無知であったかを青年は思い知る。 内臓を無作為《むさくい》に弄《まさぐ》ろうと押し寄せる異物の感触。 それが少しでも動く度に、鋭い痛みが全身を支配する絶望感は、言葉にできないほどだった。 「はぁ……はぁ……」 喘息患者のような呼吸を繰り返す。 痛みという刃が凄まじい速度で青年を突き刺し、敗北感と共に世界が暗く沈み始める。 世界から音が
Terakhir Diperbarui: 2026-08-10
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