ANMELDEN元暗殺者の青年が死神に心臓を奪われ、自身の罪や孤独を悟りながら絶命する。最期に妻との誓いを胸に願った時、運命の歯車が動き出す。罪と赦し、祈りを問い続ける残酷で静かな贖罪のファンタジー『黙想思想譚』の序章。
Mehr anzeigenこの話は元暗殺者の主人公とそれを取り巻く者達の祈りが紡《つむ》ぐファンタジー救済譚。
しかし、忘却は祈りを鈍《にぶ》らせる。 まるで歴史が風化して曖昧になるように……。 祈りが届かない者の名は、声にすらならず、風に消える。 もし、その風に感情があったのなら……風は何を思って消えたのか……? 闇は光より先に祈りはその名を呼んだ。 闇より届いた祈りは果たして誰の祈りだったのか? 彼らは祈ったのではない。 世界を変えるために……裂いたのだ。 世界は祈りでは変わらないのか……? それとも……。 あなたがもしなにか祈りを抱いてるならば……それを手放さい理由は……? これは祈りの思想のそのものの物語に祈りとはなにか?を置き換えた。祈りを見つけるための罪に塗れた青年が見た世界。 そして……その序章。 --- 熱い。熱い。熱い……。 胸を素手で──いや、(嗚呼、またこの夢か)『へへ、やったぜ!!』『ざまぁーねぇーな!!』 視界が真っ赤に染まるのを感じて不協和音にも似た男達の度し難い程に汚い声が耳に響く。 例えるなら銃弾が耳から入り込んで頭蓋の中で貫通しないで跳弾を繰り返して、俺の頭の中を変形させる勢いで響きまわる……そんな感覚すら襲われせる。 まるで言葉という名の狂気と凶器は俺の中でいつもこの夢を見る度に視界を赤い線を周りにつけながら……自分の心を発狂させるように蝕んでいく。 聞くに耐えない声……。 仮に手の内に鼓膜を突き破れる棒みたいなものがあったら迷わず突き刺しているだろうという確信を持ちながらもその声を聞く度にこう思わせる……。(ふざけんな……思い出させるな……!!) 俺が護り切れなかった思い出すだけで憎悪で身を焦がして胸に秘めた記憶を思い出してしまう度にこれ以上……怒り狂ったら自分はどうなってしまうのだろうという根源的な恐怖が支配する。 怒りのあまり、己が分からない何かに侵食されるかもしれないという恐怖と絶望は筆舌に尽くし難いものがあった。 過去に俺が『特別ななにかではなかった』という現実とそれに気づけなかった俺に宛先の無い後悔を突きつけられる時間《あくむ》。 視界が歪んで、耳の中に醜悪な声と共に雨音が聞こえた。 ……あのとき。 目の前で、大切な命が消えた。 俺が今まで自らの手で行ったことをやられたように……。 自らの心の痛みで初めて被害者の気持ちを知ったこと。 俺は勘違いしていた。 ……。 ――圧倒的な。 絶対的な……。 ―――見るに堪えない。 俺の傲慢。(もう……) それは己が強者であるつもりでいた。 どこの誰ともわからぬ相手に殺されることはない、だから守れると思っていた。(やめてくれ……!!) でも、それは──この時間を与えられる度に。(歪む……やめてくれ) 先程も言ったように狂死しかねない程に。 突きつけられた。(これ以上はやめてくれ……!!) まるで、全身に凌遅刑を下されているかのような絶望感。(なんでもする……!!) 本当に強かったなら、あいつを失わずに済んだのかもしれない。(頼む……!!これ以上は……!!) あんな結末は迎えなかったかもしれない。(――――あ……、思い出した……) ……人には、手の届く範囲があ
風に紛れて誰かの声に似た何かが響く。 それが風自体が発した音であるかのように。『これは、とある誰かの昔話だ。 好きな姿勢で、好きな間隔で、好きな時間に聞いてくれればいい。 それは読者のあなたに委ねよう……。 では、準備は出来たかな? 始めよう。 ―――ひとりの青年がいた。 彼は“死”だけを信じて生きていた。 何故、そうなったのか?』 その説明の前に人間が不気味に口角を釣り上げたような時間の間合いが出来た……。 そして、その誰かも分からない声は再びあなたの脳内に再生される。『それは簡単に説明できる。 生きるには金がいる。 そして、金は人間が持っている。ならば、人間から奪えばいい。 ただ、それだけだ。 だが、その方法には少なからずいくつかの弊害が生まれることは皆も想像がつくだろう。 まず、抵抗されるかもしれない。 しかし、それは青年にとってなんの問題もない。 抵抗されない方法は、簡単だった。 殺せばいい──そうすれば、残りの弊害……』 そしてその青年の考えはまさに悪魔と言っていいものだった。 その考えに至った理由も。 それがもたらす青年にとっての利点も。 まるで本当に悪魔が青年に耳元で呟いたとしか思えない程に……残忍な理由だった。『誰かに反撃される可能性は証拠を残さなければ……いい。 その方法が最も反撃も証拠も残りにくい。 スラム街。生まれた子どもが三日後に餓死することが、珍しくもなかった場所。 青年は、物心ついたときにはもう、独りだった。 腹が空き、腐りかけのリンゴを盗んだ。それが彼の“人生のはじまり”だった。 数分後には店主に見つかって路地裏で殴られ、ゲロと血でぐしゃぐしゃになっても──許されなかった。 もう一発でも殴られたら死ぬ。幼子であった青年がそう思った瞬間、なにか死に抗う方法が無いかと思ってただ地面を反射的に手を無造作に……「死にたくない」という気持ちで伸ばした』 また、不自然な間合いが空く。 そして、熱狂の渦にいる者が発するようにその声はあなたにとって興奮したように聞こえた……。『そして、それを手に持ってしまった。 見つけてしまった。 手に取ったのは割れた瓶。 無意識に……。 ただ、"死にたくない"という感情の一心でそれを店主の首に突き刺した。 その時、呼吸が止まり、腕がただ
この話は元暗殺者の主人公とそれを取り巻く者達の祈りが紡《つむ》ぐファンタジー救済譚。 しかし、忘却は祈りを鈍《にぶ》らせる。 まるで歴史が風化して曖昧になるように……。 祈りが届かない者の名は、声にすらならず、風に消える。 もし、その風に感情があったのなら……風は何を思って消えたのか……? 闇は光より先に祈りはその名を呼んだ。 闇より届いた祈りは果たして誰の祈りだったのか? 彼らは祈ったのではない。 世界を変えるために……裂いたのだ。 世界は祈りでは変わらないのか……? それとも……。 あなたがもしなにか祈りを抱いてるならば……それを手放さい理由は……? これは祈りの思想のそのものの物語に祈りとはなにか?を置き換えた。祈りを見つけるための罪に塗れた青年が見た世界。 そして……その序章。 --- 熱い。熱い。熱い……。 胸を素手で──いや、骨の腕でぶち抜かれる感触は、想像以上だった。 それだけで既に命に届く傷だと至っているという事を彼は理解しようとするが、まだ現実を認識出来ないでいた。 それはまるで敗北を知った自分を認められないでいる歴戦の暗殺者であると、自惚れていた自分への神から『他人の痛みを知れ』と最後通告のよう痛みである。 今も、筋肉と内蔵が無理矢理入ってきたギチリ、ギチリ。と言わせている異物を認識しているようで脳が『その事実を受け入れろ』と無慈悲に告げているが、脳は最後の慈悲をかけるように血液とアドレナリンが一気に駆け上がらせて痛みを何とか抑えているようだが……。 ───それでも彼が感じているその痛みは絶大だった。 死にかけた傷なんて青年は何度も負った事がある。 青年は自分は痛みに鈍くなってると思ってた。 だが、それが間違いだった……。 今なら青年があまりにも己が無知だったということを死に際で理解した。 内蔵を無作為《むさくい》に弄ろうと押し寄せる異物の感触。 そして、それが少しでも動く度に鋭い痛みが全身を支配する絶望はなんとも言えなかった。「はぁ……はぁ……」 喘息患者のような呼吸を繰り返す。 ……痛みという刃が凄まじい速度で青年を突きつけて敗北感と一緒に世界が暗くなり始める。 世界が無音となり、視界の周りがだんだんと深い闇色に蝕まれていく……。「ぐばっ……!」 喉の奥から鉄みたいな