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伊桜らな
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Novels by 伊桜らな

国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。

国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。

 日本舞踊家の家に生まれ、自身も師範を持つ百合乃は日本舞踊家として指導をしたりして充実した毎日を送っていた。ある日、父からお見合い話をされ顔合わせすることになる。顔合わせ当日、やってきたのは亡くなった姉と婚約者だったイケメン華道家・月森流家元の月森郁斗だった。  
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Chapter: 17.幸福な愛を、君と。
あの夜、張るお腹と多量出血した私は救急車で搬送された。なんとかお腹の子は無事で切迫流産の可能性があると言われ、安静にするために五日間の入院となっている。今は二日目だ。 「はぁ」 ベッドに運ばれて入院着に着替えるとすぐに張り止めの点滴を打たれた。説明はあったが、いろいろ動揺してしまい分からなかった。 だけど、何故か常に運動会後の筋肉痛みたいなのがあってすごく硬いものを噛んだ後のアゴの疲れみたいな……そんな感じが続いている。 副作用なんだろうけど辛い。 赤ちゃんのためなら、と思うようにしているが動悸とか発汗やらと症状がある。 それに一番辛いのは、あれから報道されているニュースのことだ。 「熱愛……かぁ」 郁斗さんと京都支部代表の娘さんの熱愛報道。最初は信じていなかったけど、あの日からずっと報道されていて精神がすり減っていくのを感じていて情緒不安定が続いている。 この日、何度目かの溜め息を吐くと病室のドアがノックが聞こえて返事をした。 「こんにちわ〜百合乃さん」 「あ、茉縁ちゃん。来てくれたんだ。ありがとう」 やってきたのは茉縁ちゃんで、食事会ぶりだ。あの時、勝手がわかっているアキさんには家の留守を任せた結果、救急車を呼んでくれて救急車に乗って病院まで付き添ってくれたのは茉縁ちゃんだった。 その時、名前を鳳翠と呼ぶのはややこしいので本名で呼んでもらうことにして私も親しみを込めて“さん”付けから“ちゃん”付けにしている。お友達みたいで少し嬉しい。 「ううん。退屈してるんじゃないかなって思ったので、来ちゃいました。友達で百合乃さんと同じくらいに入院で退屈だって言っていたのを思い出したので……それに今日はお伝えしたいことがあったので」 「伝えたいこと?」 「今日の十三時、ドラマと同じテレビ局でやっている【昼から|1《ワン》!|2《ツー》!|3《スリー》!】という情報番組、知ってます?」 「えっと、新人アナウンサーがMCをしている番組だよね? よく見るよ」 「良かったです。理由は言えないですが、きっと見てくださいと言われましたので……あ、友人の時も持って行ったのですけどキューブパズルを暇つぶしになるといいかなって思って持ってきたのでよかったら遊んでください」 茉縁ちゃんはそう言って私にそれを渡した。昔やってことがあるパズル
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-12
Chapter: 16.郁斗side
「これはどういうことなんだ!」 目の前のスマホには俺と京都支部での案内役だった女性が二人で写っている記事が表示されていた。 「……俺も何が何だか分からない」 「は?」 俺は現在、自宅近くのとある一室で友人で百合の兄の蒼央と向かい合い尋問されている。 こちらに着いたのはつい一時間前のことで新幹線から降りてすぐに蒼央に捕まり連行され、何がなんだかわからないままここに連れられてきた。 その時も何が何だかわからなかったが今も全く、こんな記事が出ているなんて知らなかった。 「理由や事実かはどうであれ、結果記事になった。ちなみに、この記事は百合は知っている。まだ俺も会っていないから状況はわからないが」 「……っ……」 百合ちゃんが……だけど、ネットニュースになっているのだから知っているか。それにお互いそれぞれ有名になっているのだから、そろそろテレビのニュースになっている頃か。 「なんで、会ってないのに蒼央が知っているんだ」 「食事会の最中にネットニュースを見たらしい。その時いたのは郁斗が呼んだ出張シェフの瀬戸さん、月森家の家政婦アキさん、郁斗の弟子のミヤビくん、百合が呼んだ脚本家の本郷くん、俳優の里谷さんと舜也さんだ。もう皆帰るところだった時間だったので全員揃っていた」 「……そうか」 「それと黙っておくのはフェアじゃないから言っておくが、百合が救急車で運ばれた」 え?百合ちゃんが!? 「無事なのか!? 大丈夫なのかっ? もしかして俺のニュースのせいかっ」 「それは違うと先生も言っていた。切迫流産の可能性があるから入院することになった。郁斗のせいではないが、今すぐ百合に会わせるわけにはいけない。郁斗に熱愛報道が出たのは事実だし、一瞬でも辛い思いをしたことも事実。結婚を許した時の条件を忘れているわけじゃないんだよな?」 「忘れていない。忘れることなんてあるわけないだろう」 「当たり前だ。郁斗は、なんとしてでも早急に解決させろ。家はメディアがいるから帰れない。百合は、うちに連れて行く。安静がいいらしいからな」 だが、どうやって解決させればいいんだ……ネットニュースになっているならテレビでも報道されているかもしれない。 「わかった。よろしく頼むよ」 そう俺がいえば部屋のインターフォンが鳴った。部屋に入ってきたのは絢斗だった。絢
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-12
Chapter: 15.ネットニュース
ドラマが始まり、早いことで最終回を迎えていた。クランクアップはつい先日に終えたばかりだ。第一話の放送以来、実家には教室への入会希望や入門体験が絶えず来ているらしく兄は事務の人と嬉しい悲鳴をあげているらしい。 私はというと妊娠四ヶ月に入ろうとしていて検診も順調で、二週に一回だったのが次からは四週に一回にと言われたばかり。まだ報告は身近な人にしか報告してない。今後のお仕事については、ドラマが終了したタイミングで安定期に入るまでは日本舞踊の師範としてのお仕事を少しずつセーブし始めようと千曲の当主である父と次期当主の兄に相談して決めたばかりだ。 「やっぱり俺、明日のお仕事はキャンセルしようかな」 郁斗さんは今日から月森流華道会京都支部の展覧会に行くことになっている。これは妊娠する前から決まっていたことだし、彼は家元だし一泊二日だから問題ないと思う。 「何言ってるの? 私は大丈夫、お義母様も来てくださるし、病院の送迎は綾斗さんがしてくれます。郁斗さんは心配しないで郁斗さんのお仕事をしてください」 「そうだけど……心配なのは心配なんだよ」 「それにまだ報告が出来てないんですから、キャンセルしたら色々模索されます」 「そうだな。終わったら早く帰るから、おとなしく待っていて」 そう言って私に頭を撫でてから渋々出かけて行った。郁斗さんを見送ると、お仕事もお休みだしやることがあんまりなくてテレビをつけた。 朝の情報番組を見ながら昨夜にフィルターボトルにて準備していた氷出しの玉露を取り出してグラスに注いだ。それをちびちびと飲んでいると、スマホが鳴った。 スマホの画面には数少ないグループラインで新しいグループの表示が見えた。茉縁さんと本郷くん、舜也さんのグループラインだ。その下に【里谷茉縁】と表示されておりそれをタップする。すると、トーク画面が出てきて、こんばんわというスタンプとメッセージが出ていた。 【こんばんわ、里谷です。お疲れ様です。本日、夜、最終回を迎えます。そこで、打ち上げも兼ねてですが、都合が良ければドラマを一緒に見ながら食事でもどうですか?】 打ち上げに食事会……なんと魅力的なお誘いなの!誰かと食事会だなんてあまり経験がないからとても嬉しくてワクワクしてしまう。 早速、郁斗さんに聞いてみよう……今、妊娠中だし安定期前に外で食事なんて
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-12
Chapter: 14.ドラマと報告
妊娠が分かった夜、私は家でくつろいでいた。 体調は病院に行ったからかとてもよく、悪阻の症状はいまのところはない。 「あの、郁斗さん……これは?」 「あ、うん。さっき、電子書籍で買った本に妊娠初期にいい食べ物が載っていたからそれ見て作ったんだ」 テーブルの上にはまるで定食ですか?と思える料理が並べられている。定食屋さんかなと思えるくらいにずらっと並んでいて、どれも美味しそうだ。 「ありがとうございます、郁斗さん。美味しそうです」 「でしょう? 悪阻の症状ないみたいだから普通の食事にしてみたんだけど、食べられないなら残していいからね」 主食はたんぽぽチコリ入りのご飯に、副菜にはほうれん草のお浸しとモロヘイヤとお豆腐の味噌汁、主菜は蒸し鮭でデザートにはヨーグルトが並べられている。お茶は朝仕込んでおいた氷出し煎茶だ。普通に淹れると、カフェインが豊富だが氷や水の低温で抽出すればカフェインを抑えられるといわれているため今の私にはぴったりのものだ。 相変わらず郁斗さんのご飯はどれも美味しくて、ご飯屋さんができるのではというくらい盛り付けも綺麗。 「美味しかったです。郁斗さんのご飯ならずっと食べられます」 「それは良かった。顔色もいいし、安心したよ」 「心配かけてしまってごめんなさい。今更ですけど郁斗さん、お仕事は大丈夫だったんですか?」 「大丈夫。ホテルの方は早く終わってね、打ち合わせをしていただけだから。あ、打ち合わせはもう纏まっていたし今日は元々終わっていたから」 それなら良かったけど、私のために中断して帰ってきたなんてことは申し訳なさすぎる。郁斗さんにも、お仕事で関わっている方にも。 「まぁ、打ち合わせ今回は初回だしいつもお仕事させていただいているところだから勝手がいいんだ。だから気にしないで」 「はい」 「仕事も大事だけど、もっと大事なのは百合ちゃんだから。じゃあ、お片付けするから百合ちゃんはお風呂入っておいで」 私もお片付けをすると言ったが、お風呂沸いたからと言われてしまい私はお風呂に直行することになった。 お風呂から上がり、テレビのあるソファに座れたのはドラマが始まる十五分ほど前だった。 「百合ちゃん、飲み物持ってきたよ」 「ありがとう。郁斗さん……これは、カフェラテ?」 「コーヒーじゃなくて、たんぽぽチコ
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-12
Chapter: 13.お茶会
ドラマ撮影が始まって一ヵ月が経ち、放送第一回目が始まる日を迎えていた。宣伝で、茉縁さんと舜也さん二人が朝から有名な情報番組【月→(から)金までmorning】にゲストで出演していた。 『本日から始まるドラマ、“花明かり”から里谷茉縁さんと舜也さんがきてくださいました――』 アナウンサーが二人を紹介し二人も「おはようございます」と挨拶をしている。こうやってみると、本当に今日からドラマが始まるんだなぁと実感する。 『どんな話なんですか?』 『えー……私が演じる美咲は普通にいるOLは求婚され入籍直前で婚約破棄をされるのですが、日本舞踊に出会って日本舞踊に魅せられていく話です』 それから予告映像が流れる。 「百合ちゃん、どうぞ」 「あ、ありがとうございます。郁斗さん」 私のいるテーブルの前にコーヒーの入ったマグカップが郁斗さんによって置かれる。さっきまでコーヒー豆の挽く音がしていたから彼が淹れてくれたのだろう。いつもならいい香りだと思うのに、今日は何故か香りがきつい、気がする。どうしてだろうか…… 「このコーヒー百合ちゃん好きだって言っていただろう? だから買ってきたんだ」 「ふふ、ありがとうございます」 私はマグカップに口をつけ、一口飲む。香りは苦手だけど、相変わらず美味しい。 「そういえば、今日はお祖母様と約束してるって言っていたよね? 本家に行くのかい?」 「はい。もうドラマのお仕事終わっているのでテレビ局には今日は行かないので。それにお祖母様にお誘いをいただいて……ドラマが放送されるお祝いだって言っていました。でも郁斗さんはお昼はお仕事なんですよね?」 「うん。結婚式を挙げたホテルでパーティーがあるから会場ディスプレイを頼まれてね」 「そうなんですか、頑張ってくださいね」 郁斗さんはツアーが終わっても大忙しで、会場ディスプレイや展覧会の花に家元としてのお稽古とお仕事がたくさんある。本当は私が付いて支えるべきなんだろうけど私も忙しかったのは言い訳か……だけど、ドラマが終わったら師範の仕事は引き継いでもらい華道の方に力をいれていこうと思っているし彼のお手伝いもできるようになるだろう。 「本家行くなら俺が送って行くよ。顔を見せようと思ってるんだ」 「ありがとうございます、郁斗さん」 「全然。それより、百合ちゃん。調子悪
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-08
Chapter: 12.撮影とおかえり
クランクインからひと月が経った。私は現在、撮影場所で日本舞踊監修としてのお仕事をしているが、今は見学中だ。準備期間は長かったのに撮影はもう半分は終わってる。 「なんとも贅沢だなぁ」 目の前で、俳優さんが演技をしている。普段の指導している時の彼らとは別人のようで、すごい。 本当は、日本舞踊のシーンがない時は来なくていいんだけど見たくて来てしまっている。迷惑にならないように隅っこだけれども。 「お疲れ様です! 鳳翠先生」 「茉縁さんもお疲れ様です。とっても良かったです」 「ありがとうございます。でも撮り直しですね、多分」 茉縁さんはそう言うと、監督がいる方を見た。 「納得してない顔してるから――」 「おーい里谷さん! ちょっとこっち来てー」 彼女の言う通り、監督が彼女を呼ぶ声が聞こえてそちらに行ってしまった。 それからも昼まで見学しているとスマホがブーブーと震えた。スマホの画面を見れば郁斗さんからメッセージ通知が出ていた。それをタップすると、LINEのトークページが開く。 【今、帰って来ました。テレビ局の近くにいるんだけど時間が合えば迎えに行くよ】 え!帰るの三日後って聞いていたけど早く終わったのかな。 【帰ってくるの三日後って言ってませんでした?】 【仕事は昨日のパフォーマンスで終わりだったんだ。他の仕事は急いで終わらせてきたんだ】 そうなのか。せっかくだし、迎えに来てもらおうかな…… 【じゃあ、お迎えをお願いできますか?一緒に帰りたいです】 そうメッセージを送ると、話し合いが終わった本郷くんに近づき声を掛ける。 「本郷くん、私帰りますね」 「月森さん。あ、わかりました。……じゃあ、下まで送りますよ」 「えっ、でも私勝手に見学に来た人ですし……本郷くん、さっきまで演出家の方とお話をしていましたよね?」 さっきまで監督の隣にいる演出の人と話し合いをしていたし、忙しいのではないだろうか。ただ声をかけただけなんだけどなぁ 「もう終わったから。それに早めの昼にしようと思って一階のカフェに行くから」 「それならいいんですけど……」 了承すると、本郷くんは荷物を持ってくるからと控え室に行ってしまったので私はスマホを見ると【良かった。近くに来たら連絡する】とメッセージが来ていた。 なので【了解です
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-01
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
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Chapter: もちもちベーグル
もちもちベーグル 「おはようございます、今日からよろしくお願いします」 あれから一週間経ち、私は念願だった厨房で働かせて貰えるようになった。 「あぁ、よろしくな。メル嬢」 ただ、条件がついたんだけど――。 『厨房で働くのはいいんだけどね、俺たちの養女にならないかな』 『養女? オスマンさんの、娘になるってことですか?』 『そう。今、メルちゃんは微妙な立場なんだよ。異界人であり聖女である、庶民のようで庶民じゃない。公爵家にいるからね』 「改めて、メル・フタバ・セダールントです。皆さまよろしくお願いいたします」 「メル嬢、まずは皿洗いと下ごしらえからな」 「はい」 私は、セダールント公爵家の養女になったけど厨房では見習いから始めることにした。料理長からはパン担当でいいと言われたけど、それはオスマンさんからの条件のひとつでもある。 「ディーン、教えてやれ」 「は、はい……! メル様、よろしくお願いいたします!」 ディーンという青年は先日|王都学園《アカデミー》を卒業したばかりで銀色の髪をマッシュヘアの可愛らしい子だ。 「こちらこそよろしくお願いします!」 「えっと、それじゃあじゃがいもの皮むきからやろうか」 じゃがいもなら得意だ、昔カレーにハマってたときがあったんだよね。 「じゃあ……ってできるね、だよね」 「はい、よくやってたので」 なんか申し訳ない、と思っていると私の前にボンっと置かれた。 「メルにはこれだ、剥き方も綺麗だし今日はじゃがいも係な」 「わかりました」 じゃがいもを無心で皮を剥いていき、あっちの世界でいう乱切りをした。それを調理部門に持って行ったりしてなんだか学生時代していた飲食店のバイトのようで楽しかった。 「メルちゃん、ご飯食べよう」 「うん」 それからお昼ご飯を食べると、私は自分の部屋に戻った。 *** 十四時になり私は厨房に戻ると、パン生地を広げて生地を伸ばして棒状にし輪っかに形成して閉じる。閉じ目を下にしてそれを十個ほど作ると、鍋に水を貯めて沸騰させる。蜂蜜を少し入れると、生地をお湯の中に入れて片面ずつ二十秒ほど茹でる。 「何作ってるんですか? メルさん」 「うん? ベーグルよ」 「ベーグル? あ、石窯に入れますか。俺やりますよ」 アルくんは鉄板を持ち、それを
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-06-12
Chapter: 舞台裏1/思い出のフレンチトースト
「――まだ、部屋に篭っておられるのか?」 「はい、あれから一度も……食事もいらないと言われてしまいました」 ――ここは王宮。玉座の間。そこにいるのは男性が二人。公爵家当主であるオスマン・セダールントと国王陛下であるレクサス・エリザベス・エミベザだ。 「本当にジーク(あやつ)は……聖女様を追い出すなど」 「私は、私欲でメル様に頼ってしまいました。申し訳ありません」 「だが、怪我を負った者は元気なのだろう?」 「はい、傷などなかったかのように……それに、一年前に倅が怪我によって受けた症状も完治いたしました」 オスマンの息子・ギルバートは、昨年の討伐で大きな怪我を負い後遺症が残った。半年間のリハビリを経て三ヶ月前に復帰したばかりだった。 「ほぉぅ……」 こればかりはオスマンも驚いた。医者ですらもう治らないだろうと言われていていたし、前よりは劣るが討伐にいけるようになった時は奇跡だと言っていたほどだった。 「やはり、聖女だからか……?」 「それはまだ分かりませんが、あれほど見事な聖魔法は見たことがありません。ですが、メル様がいた世界には魔法自体が存在しないらしいのです。自分から不思議な力が現れて戸惑われているのでしょう」 「そうか。オスマン、聖女様を頼む。何か必要ならば言ってくれ」 陛下はそう彼に言うと何かを考え込むような表情になった。 「御意」 オスマンはそう答えると玉座の間を去った。 *** 「旦那様、お帰りなさいませ」 オスマンが公爵邸に帰ると、もう二十時だった。 「ただいま……」 出迎えてくれたのは妻のエミリーと休暇中のギルバートだ。 「メルちゃん(彼女)の様子は変わらないかい?」 「ライラから聞いた話ですが、まだ部屋にも入らせてもらえないとのことです」 「えぇ、私も外から声をかけてはみたんですが返答すら返ってきませんでした」 ライラには返事するが「一人になりたい」と言うだけ。数日前まで笑顔を見せてくれたのが夢だったように思える。 「あの、旦那様。これメルちゃん……いえ、メル様に作ったんです」 「それは?」 料理人のアルベルトは「前に賄いで作っていただいたんです」と笑みを溢した。 「……君はメルちゃんと仲がいいのかい?」 「仲がいいというかお師匠
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-08
Chapter: 2.ふわふわの丸パンとヒール
[ふわふわの丸パンとヒール] 翌朝、ウキウキしながら起きると早いけど昨日作ったパルムの瓶を見に行くことにした。部屋に入ると、被せた布を取り、蓋を開けた。開ける瞬間に炭酸のようなシュワっとした音が聞こえた。一度匂いを嗅ぐと、あぁこれだ……と感動する。 「異世界にも酵母菌はあるんだなぁ」 私は瓶に蓋をし、上下に振りまた布を被せた。それを数日繰り返した。今まで退屈だった日々が、こっちに来て初めて充実している。 「あっ! メル様っこちらにいらしていたのね!」 「あ……ライラ。ごめんなさい。でもね、やっと出来たのよ!」 「……え?」 これで、ふわふわなパンが出来る! 「今から、パンを作るのよ!」 私は、すぐに行動した。すぐに厨房に行き、少しだけ使わせてもらえるようにお願いをした。 「メル様、何をされるんですか?」 「ふわふわのパンを作ろうと思って」 料理人さんに小麦粉にバター、卵とミルクをもらった。小麦粉を山にして真ん中を開けるとその中に卵とミルクを入れてそこにパルムの酵母菌を入れる。それを粉っけがなくなるまで捏ねる。捏ね終え、濡れ布巾を生地に被せ寝かせる。 「バター柔らかいかなぁ」 バターが柔らかくなったのを確認し生地に練り込み、一つの塊にする。また、布巾を被せると寝かせからパンチをした。 「メル様!? 一体何を……」 料理人さんの声は気にせずに、再び濡れ布巾を被せて一次発酵をする。 「温かい場所に置いておきます」 「えぇっ!? それだと腐りませんか!?」 「大丈夫ですよ」 それから一時間ほど経ち、二倍ほどに膨らんだらガス抜きをする。生地を八個に分けて丸く丸めると、鉄板に乗せた。 「今から焼くんですか?」 「いえ! 今からまた布巾を被せます」 「またですか? 時間かかるんですねぇ」 濡れ布巾を被せると、また温かい場所で二倍になるまで二次発酵をする。 「あの、石窯を温めてもらってもいいですか?」 「はいっ! もちろんです!」 料理人さんに石窯を温めてもらっている間に生地は二倍になったので、布巾を取り料理人さんに焼いて貰うように頼んだ。 しばらくすると、厨房内は香ばしい懐かしい匂いが漂ってきて笑みが溢れる。 「美味しそうですね! いただいてもいいですか?」 「
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-27
Chapter: 1.硬すぎなパンと酵母菌作り。
「メル、食パン焼き上がったから持っていって」 「はーい」 厨房にいるお父さんに言われ焼き上がった食パンをトレーに置き、お店に運ぶ。 「食パン焼き立てでーす」 食パンを並べてからハンドベルを鳴らす。すると、お店のドアが開きお客様が入ってきた。 「いらっしゃいませ!」 「メルちゃん、おはよう。今日も一斤ください」 お父さんが営むパン屋【lumière(リュミエール)】は天然酵母を使ったふわふわパンで有名で近所からは勿論のこと、市外からも来てくださるお客様もいる人気店だ。 「はい。ありがとうございます」 私、双葉(ふたば)愛瑠(める)はパン屋【lumière】の一人娘でありこの春に製パン専門学校を卒業したばかりのブーランジェだ。 「メル、クロワッサンも焼けたよ」 「あっはーい!」 お父さんに返事をしてお客様に「何か有ればお呼びください」と言い厨房へ向かった。 夢だったお父さんと一緒にブーランジェとして働くことも叶って、充実した毎日を送っている。 楽しくて楽しくて、仕方ない。 「お父さん、前掃いてくるね」 「おぅ、ゴミも出しといてくれ」 お父さんが指を差したゴミと箒を持って裏口を出ると、見たことのない模様が地面に描かれれば私を光が包んだ。 *** 「――お目覚めですか? 聖女様」 眩しさがなくなり目を開けると、思い切り起き上がった。周りを見渡せば、全く知らない光景が広がっている。 「聖女様?」 それに目の前には知らない女の子が心配そうに見ていた。 「あの、誰でしょうか?」 「すっ、すみません! 私は、侍女のメリッサでございます」 「じじょ?」 優しく微笑むメリッサという女の子は何故か聖女様と私を呼んでいる。 聖女ってなんなのか、それにここはどこなのか知りたいのだけど…… 「その“聖女様”ってどういうことでしょうか? それにここはどこでしょう?」 「ここはヴァルシア大陸の三大大国のひとつ、エミベザ王国です」 「は、はぁ」 ヴァルシア大陸?エミベザ王国?そんな国、知らない…… 「私、ジーク様にお伝えしてきますね!」 「えっ、ちょっと待って!」 メリッサは私の声をスルーをし、部屋を出ていった。放置されても困るんだけど、と考えているとそれから
ปรับปรุงล่าสุด: 2025-04-27
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