結婚白紙にされた新幹線パーサーは、再会した御曹司ドクターに求婚されました。

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last updateLast Updated : 2025-08-13
By:  伊桜らなCompleted
Language: Japanese
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新幹線のパーサーをしている望月花耶はある出来事で傷心中。一夜を共にした相手の間に子供が出来、責任を取るために婚約したが入籍日に白紙にされる。悪阻で倒れそうになり助けられる。 休憩室で目が覚めると、懐かしい人がいて…。

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Chapter 1

妊娠発覚

الساعة الحادية عشرة ليلًا.

كنتُ أركض ليلًا في حديقة المبنى حيث يسكن أخي.

فجأةً سمعتُ من بين الشجيرات صوت رجلٍ وامرأة يتحدّثان همسًا.

"رائد، كنتَ تقول إنك في البيت بلا مزاج؛ جئتُ معك إلى هنا، فلماذا ما زلتَ على الحال نفسها؟"

ما إن سمعتُ حتى أدركتُ أن الصوت لزوجة أخي هناء.

ألم يخرج أخي وهناء لتناول العشاء؟ كيف ظهرا في الحديقة، بل بين الشجيرات؟

مع أنني لم أواعد فتاةً من قبل، فقد شاهدتُ كثيرًا من المقاطع التعليمية، وفهمتُ فورًا أنهما يبحثان عن إثارة.

لم أتوقع أن يكون أخي وهناء بهذه الجرأة! في الحديقة… يا لها من مجازفة.

لم أتمالك نفسي وأردتُ أن أتسمّع.

هناء جميلة وقوامُها رائع، وسماعُ صرخاتها حلمٌ طالما راودني.

زحفتُ على أطراف أصابعي إلى جانب الشجيرات ومددتُ رأسي خلسة.

فرأيتُ هناء جالسةً فوق أخي، وإن كانت تدير ظهرَها لي، إلا أن انسياب ظهرها كان آسرًا.

على الفور جفّ حلقي واشتعل جسدي وشعرتُ بالإثارة.

أمام امرأةٍ بهذه الإغراءات تعثّر أخي قليلًا: "هناء، أنا… الأمر غير ممكن."

ثارت هناء عليه قائلةً: "لا أمل فيك! في الخامسة والثلاثين وهكذا؟ ما نفعك إذن؟ حتى لو كان الأمر غير ممكن، ألا تُخرج شيئًا نافعًا؟ ولا حتى ذلك! فكيف أنجب؟ إن بقيتَ هكذا فسأبحث عن غيرك! إن كنتَ لا تريد أن تصير أبًا فأنا ما زلتُ أريد أن أصير أمًّا."

سحبت هناء بنطالها غاضبةً وخرجت.

ارتعبتُ ولذتُ بالفرار.

لم تمضِ برهة حتى سمعتُ أن هناء قد عادت.

أغلقت الباب بقوة فدوّى صوته، فقفز قلبي من الفزع.

ربَّتُّ على صدري في خلوّتي وأنا أفكر: يا لهول ما رأيت؛ لم أظن أن حياة أخي وهناء الزوجية بهذا السوء.

يُقال إن المرأة في الثلاثين تشتدُّ رغبتها؛ وهناء تبدو فعلًا غير مُشبَعة، وأخي بذلك الجسد النحيل كيف لها أن تكتفي به؟

أما أنا فربما… تفوّ!

ما الذي أفكر فيه؟ هناء زوجةُ أخي، كيف أطمع فيها؟

أنا ورائد وإن لم نكن شقيقين من الدم، إلا أننا أوثق من ذلك.

ولولا رائد لما كنتُ أنا الجامعي اليوم.

إذًا، يستحيل أن أطمع في هناء.

وبينما أنا غارقٌ في شرودي سمعتُ من الغرفة المجاورة أنينًا خافتًا.

ألصقتُ أذني بالجدار أتجسّس.

إنه أنينٌ حقًا!

هناء كانت…

اشتعل جسدي ولم أعد أحتمل، فبدأتُ إشباعًا ذاتيًا بصمت.

وفي الختام توحّدت الأصواتُ على جانبي الجدار.

هذا التوافقُ الغريب جعلني أشرُد من جديد.

وفكّرت: لو كنتُ مع هناء لكان بيننا انسجامٌ كبير.

لكن هذا مستحيل؛ فبيننا دائمًا أخي.

لا يمكن أن أخون أخي.

بدّلتُ سروالي الداخلي المبلّل ووضعته في حمّام الخارج عازمًا على غسله صباحًا.

ثم نمت.

ونمتُ حتى بعد التاسعة صباحًا؛ وحين نهضتُ كان أخي قد غادر إلى العمل، ولم يبقَ في البيت إلا أنا وهناء.

كانت تُعدّ الفطور.

ارتدت هناء منامةً حريريةً بحمّالات، فبان قوامُها الممتلئ أمامي بلا حجاب، ولا سيما امتلاءُ صدرِها؛ فعاد إليّ جفافُ الحلق.

"سهيل، استيقظت؟ أسرع واغتسل لتتناول الفطور." حيّتني هناء.

لم أمكث هنا إلا أيامًا قليلة، وما زلتُ غيرَ معتاد، فكنتُ متحفّظًا، فاكتفيتُ بـ"أوه" خفيفة ومضيتُ إلى الحمّام.

وبينما أغسل وجهي تذكرتُ أن سروالي الذي بدّلتُه البارحة موضوعٌ هنا.

وهناء تستيقظ قبلي؛ أيمكن أنها رأته؟

نظرتُ بسرعةٍ إلى الرف، وفوجئتُ: سروالي غير موجود!

وبينما أبحث هنا وهناك سمعتُ صوت هناء من خلفي: "لا تبحث، أنا غسلته لك."

احمرّ وجهي حياءً. ذلك السروال كان ملطّخًا، فحين غسلتْه ألا تكون قد رأت…؟ يا للحرج!

وكانت هناء تضم ذراعيها على صدرها، وتبتسم كأن لا شيء: "سهيل، أما سمعتَ شيئًا البارحة؟"

أخذتُ أهز رأسي إنكارًا؛ لا يمكن أن أعترف بأنني سمعتُها وحدها تعمل ذلك.

"ل… لا، لم أسمع شيئًا."

"حقًا؟ ألم تسمع أصواتًا غريبةً من غرفتي؟" كانت تُجرّبني.

"نمتُ بعد العاشرة بقليل؛ حقًا لم أسمع شيئًا."

ثم انسحبتُ هاربًا.

ولا أدري لماذا كنتُ أمام أسئلتها شديدَ الارتباك، وكانت عيناي تسقطان على صدرها بغير إرادةٍ مني، كأن سحرًا يجذبني.

جلستُ إلى المائدة آكل بصمت، ولم أكن حاضر الذهن، إذ جاءت وجلست إلى جانبي.

فكّرتُ: ما الذي تنويه؟ كنا نجلس متقابلين عادةً، فلماذا اليوم إلى جواري؟

وبينما أفكر لمستْ بسبابتها ذراعي لمسةً خفيفة، فشعرتُ بوخزٍ لذيذٍ يسري في جسدي كالكهرباء.

وتعجّبتُ في نفسي: إذًا هذا شعورُ لمس المرأة؟ يا له من أمرٍ عجيب.

"سهيل، كأنك تخافني، أليس كذلك؟"

"لا، غير أنني لستُ معتادًا بعد، فأتقبّض قليلًا."

"والناس يتعارفون من عدم، ولهذا يلزم أن نُكثر الحديث لنقترب أسرع وبشكلٍ أنفع. سهيل، أتعرف أسرع وأنجع طريقةٍ ليصير الرجل والمرأة مألوفَين لبعضهما؟"

لا أدري أهو وَهم، لكني أحسستُ أنها تُلمّح إلى شيء، فاضطربتُ ولم أعد أهنأ بالطعام، وكان الفضول يأكلني: ماذا تقصد؟

فتجرّأتُ وسألت: "ما هي يا هناء؟"

"الإنجاب!" حدّقت فيّ بعينيها البراقتين وقالتها مباشرةً.

اختنقتُ. قلتُ في نفسي: لمَ تقول لي هذا؟ إنها زوجة أخي، ولا يمكن أن يحدث بيننا شيء. أتراني مقصدَها؟ أخي لا يقدر، فهل علّقت أملها عليّ؟ لا، لا يجوز أن أخون أخي.

سحبتُ الكرسي مبتعدًا قليلًا: "هناء، لا تمزحي؛ لو سمع أحدٌ لأساء الظن."

ضحكت وقالت: "إذًا قل الحقيقة: هل سمعتَ شيئًا البارحة أم لا؟ إن لم تصدّق فسنتعمّق في الحديث."

كدتُ أفقد السيطرة من الخوف، فقلتُ مرتبكًا: "نعم، سمعتُ بعض الأصوات، لكن لم أقصد."

"هل كان أنيني؟ هل كان جميلًا؟" لم أتوقّع منها هذا السؤال.

احمرّ وجهي وكاد قلبي يقفز من صدري، ولم أعرف بمَ أجيب.

وفي تلك اللحظة جاء طرقٌ على الباب، فتمسّكتُ به طوقَ نجاة، وأسرعتُ أفتح.

وما إن فتحتُ الباب حتى رأيتُ امرأةً طويلةً ممشوقة القوام، ملامحُها شديدة الجمال، ونظرتها آسرة.

حدّقت بي بعينيها السوداوين الواسعتين وسألت: "من أنت؟"

وقلتُ متعجبًا: "ومن أنتِ؟"

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disney822
disney822
さた裏鞘あうゆらあくつこし?め
2025-08-27 12:58:27
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ワンナイトと婚約
翌日の夕方、私は薄暗くなりかけた街路を歩きながら、軽く波打つ吐き気に耐えていた。腹の奥がきゅっと締め付けられるような感覚と、体のだるさがまだ残っている。母子手帳とエコー写真を握りしめたバッグの中で、紙の感触が手のひらに伝わってくるたび、現実感が胸の奥にじわりと広がった。 カフェのドアを押して店内に入ると、すぐに名前を呼ぶ声が響いた。「花耶!」 声のする方を見ると、優仁が笑顔で手を振っている。あの夜とは打って変わって、いつもの柔らかい表情だ。私も自然に肩の力を抜き、彼が座るテーブルに近づき、軽くお辞儀をして隣に座った。「久しぶりだな、花耶」「うん、そうだね」 席に座った瞬間、胸の奥がきゅっと縮まる。あの夜以来、二人の関係は微妙に変わってしまった。けれども、今日ここに座っている自分は、まだ少しほっとしている自分がいることを認めたくなかった。「あの夜ぶりだな……なんか注文するだろう? 花耶はいつもフレンチトーストかな」 メニューを手に取り、ページをめくる。写真の中のフレンチトーストやケーキ、プリンに目を走らせながら、ふと目に入ったかぼちゃのプリンに指を置いた。「かぼちゃプリンにする」「かぼちゃプリン? 珍しいな……飲み物はカプチーノかな」「いや……ルイボスティーにする」「今日は控えめだな」 優仁が店員を呼び、注文をしている間、私は目を伏せ、胃の奥のむかつきと戦いながら、あの夜のことを思い出していた。 まだ私が社会人になったばかりで、仕事に少しずつ慣れ始めた頃。同期であり、高校時代からの親友の桃花に誘われ、恋活イベントに一緒に行ったときのことだった。あの場で優仁と出会った。 初対面の印象は「チャラそうな人だな」というものだった。派手な髪型、軽い笑顔、友人たちと冗談を言い合う姿。だけど話を重ねるうちに、その裏に誠実な人柄や気遣いのある性格が垣間見えた。連絡先を交換し、互いの仕事の愚痴を言い合う日々の中で、友人としての距離はすぐに縮まった。 けれど、好きだという気持ちは言葉にできず、関係を壊すのが怖くて、ずっと胸の奥に秘めていた。だからこそ、今まで通り「友人」として過ごしていたのだ。 ──あの夜までは。 月に一度、自分へのご褒美として行く、フランス料理の美味しいホテルレストラン。いつものように、心躍らせながらその夜もディナーを楽しんだはずだ
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白紙
優仁のご両親に挨拶を済ませ、私たちは結婚に向けた準備を始めた。形式ばった顔合わせや結納も、本来なら行うべきだろうけれど、私は妊娠していたし、安定期に入るまでは控えたほうが安心だということで、少し先延ばしになった。 それでも、心の中は不思議なほど穏やかで、幸せに満ちていた。プロポーズされてからというもの、優仁は以前よりもずっと優しく、そして甘くなった。ほんの些細な仕草や、言葉の端々に込められた気遣いに、私は日々胸をときめかせていた。彼が私を見つめるその瞳の中にある、変わらぬ愛情を感じるたびに、友人だった頃よりももっと深く、彼のことが好きになっていくのを実感していた。 妊娠の影響でつわりは依然として続いているものの、幸い検診も順調で、体調さえ許せば仕事も普通にこなせていた。朝、制服に袖を通すたびに、少しずつ母になる覚悟を心の奥で確認していく自分がいた。これまで抱えていた不安や迷いが、ほんの少しずつ光に変わっていくのを感じる。あの時、勇気を出して想いを告白して本当に良かった——そう思わずにはいられなかった。「最近、幸せそうね、花耶。体調はまだ戻ってないみたいだけど」 出勤前、優仁が微笑みながら声をかけてくる。私はふわりと笑って答える。「うん、ちょっとね。ふふ、また桃花にはちゃんと話すよ」「楽しみにしてるよ、今日も一緒だし、頑張ろっかね」 朝の空気はまだ冷たく、手元のカバンが少し重く感じる。更衣室に入り、白を基調とした制服に着替える。ピンク色のスカーフを取り出して、慎重に蛇腹折りをして襟の部分にある通し穴に通し、リボン結びを整える。その一連の動作さえ、心の中では“今日も無事に一日を始められる”という小さな安堵感と共に、慎重に行われていた。「花耶、スカーフ確認しよ」 互いに鏡を見ながら身だしなみを確認し合う。ささいな日常の中にある、二人だけのやり取りが、私にとって心を落ち着ける儀式のように感じられた。 出勤の打刻を済ませ、クルーミーティングに向かう。今日の乗務列車の運行情報を確認し、伝達事項や携帯品の確認を行う。その日常のリズムは、心のどこかで私を支えてくれる柱のようなものだった。けれど、どこか胸の奥には、まだ甘く危うい幸福の影が潜んでいることも知っていた。 そんなある休日。珍しく、つわりの症状がひどく、私はベッドの中で丸まっていた。吐き気と頭の重さ、
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友人の訪問
部屋のドアを開けると、そこにはいつも通りおしゃれで可愛らしい服装の桃花が立っていた。短めのフリルのついたブラウスに、柔らかい色合いのスカート。靴まできちんとコーディネートされていて、まるでそこだけ光が差したように華やかだ。「体調まだ良くなってないって聞いたけど、大丈夫?」 彼女の声は明るいけれど、どこか心配そうな響きがあった。私は軽く微笑みながら、首を振る。「うん。なんとか……明日は仕事だしね」 言葉には力がなかったかもしれない。正直、昨日の出来事が頭の中でぐるぐると渦巻いていて、涙が出そうになるのを必死にこらえているところだった。 桃花を部屋の中に招き入れると、定位置の一人用ソファに座った。しなやかに座る姿からも、彼女の落ち着きと明るさが伝わってくる。私はベッドに腰かけ、少し身を縮めるようにして体を休めた。「お土産買って来たよ、花耶が好きな焼きプリン」 彼女の言葉に、胸が小さく跳ねた。嬉しいという気持ちと同時に、心の奥に重く沈んでいる哀しみが波のように揺れる。「ありがとう。嬉しい……」 彼女が手渡してくれた紙袋には、駅前の洋菓子店のロゴが入っていた。プリンの他にも、色とりどりの果物ゼリーがいくつか入っていて、その彩りだけで少し心が和む。「こっちのゼリーはお見舞いだよ。こっちはお土産。プリンは一緒に食べよう」 ゼリーの冷たさや、プリンの濃厚な香りを思い浮かべるだけで、少しだけ体調が楽になる気がした。最近は吐きづわりが出て、ご飯もほとんど食べられなかったし、昼間のあんなことがあった後では食事どころではなかった。 私は桃花からプリンと使い捨てスプーンを受け取る。蓋をそっと開け、目の前に置かれたプリンを見つめる。柔らかく、ぷるんと揺れる表面。スプーンを入れると、濃厚だけれど甘さ控えめで、ほのかに香るカラメルの匂いが鼻に抜ける。 一口、口に運ぶ。久しぶりに味わう感覚。美味しい——そう思った瞬間、自然と小さく息を吐く。甘さが喉を通る感覚に、心まで少し軽くなる。涙で乾いた喉も、ほんの少しだけ潤うような気がした。「ねぇ、花耶?」 桃花の声に、はっと我に返る。「ん?」「何かあった、よね? 前は幸せそうだったのに、今は辛そうだし、今まで泣いてたんでしょう?」 ——さすが、桃花にはお見通しだ。 私は小さく息をつき、笑ってみせる。「……桃花にはお
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助け
目が覚めると、白い天井が視界いっぱいに広がっていた。淡い光が漏れる病室の天井は見覚えのないものだった。目だけでキョロキョロと周囲を見渡すと、ベッドの横には点滴の袋が揺れている。窓の外では、遠くから人の声や足音が微かに聞こえてきた。「……ここは……っ」 呟く私の声は乾いていた。頭の中で記憶をたどる。今朝、私は新幹線に乗っていたはずだ。大阪から東京へ戻る途中、車内でモバイルオーダーサービスの対応をしていた……。そして、次に思い出したのは、体がふらつき、誰かの腕に支えられたことだった。 ドアが開き、女性の声が柔らかく響いた。「望月さん、目が覚めましたか?」「……はい。ここはどこですか? あなたは」「ここはさくらファミリー総合病院です。私は看護師の和久井といいます。今、先生が来てくださいますので」 その声に少しだけ安心する。緊張と恐怖で固まっていた体が、わずかにゆるむ。 ドアをノックする音がして、白衣の男性が入ってきた。「初めまして、望月さん。私は産婦人科医の佐倉といいます。倒れられた時のこと、覚えてますか?」「いえ……でも、誰かに支えられたことは覚えています」 先生の穏やかな声に、胸が少し落ち着く。「そうですか。今回倒れられたのは、脱水症状と軽い栄養失調です」「栄養失調……?」 確かに最近、食事がまともに取れていなかった。吐きづわりで気持ち悪く、水すら思うように飲めなかったことを思い出す。今日もまだ何も口にしていない。胸の奥で小さく、焦りと自己嫌悪が渦巻く。「歩けていたのが不思議なくらいですよ。望月さんは妊娠悪阻という病気になります。点滴をしていくので、一週間の入院をしましょう。病室に移動しますが、よろしいですか?」「はい、……大丈夫です。よろしくお願いします」 「病気」と名前を付けてもらえただけで、なんだか少しほっとした。自分が弱くなったわけではなく、身体がちゃんとサインを出してくれたんだ——そう思えたからだ。「あ、先ほど友人の方が荷物を持ってきてくださったので、一緒に運びますね」 言葉の最後まで聞こうとしたのに、安心感と疲労に押され、再び意識が薄れていった。 次に目を開けると、外は真っ暗になっていて、病室の雰囲気も少し違っていた。「部屋が違う……そういえば病室変わるって言ってたな……それに、一週間の入院か……所長に話をしない
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出会い
出会い入院して四日目。吐き気やめまいで起き上がるのも一苦労だったけれど、今日はほんの少し体調が安定していた。一時間ほどベッドに座っていることもでき、桃花と話すときのように、軽いおしゃべりもできるようになった。「こんにちは、望月さん。調子良さそうですね」 扉の向こうから佐倉先生の声がした。声だけで少し安心する。「あっ、先生。こんにちは! はい、悪阻が始まってから一番体調が良いです」 微かに頬が熱くなるのを感じながら、目は自然と窓の外の光に向けた。まだ外は夏の柔らかな日差しに包まれている。「それは良かったです。以前話をしていた清水川を連れてきました。今、よろしいですか?」「あ、わかりました。お願いします……」 佐倉先生が一度病室を出て手招きすると、背の高い男性が入ってきた。栗色の長髪は緩くパーマがかかっており、後ろで一つに縛られている。センターパートの前髪が顔を優しく縁取り、大人の色気が自然と漂っていた。目元は少し厳つく、初対面の私には近寄りがたい印象もあるが、その佇まいからは柔らかい人柄も感じられた。「小児外科医の清水川です。少し見た目は怖いかもしれませんが、怖くないですよ」 佐倉先生の冗談に、清水川先生は小さく「どんな紹介だよ」と苦笑していた。二人の間に自然な仲の良さがあるのを感じる。「小児外科医をしています、清水川伊誓といいます。先月まで名古屋の連携病院で働いていて、望月さんが倒れた日に東京に戻ってきたんです」「そうだったんですね……。そんな日にご迷惑をおかけしてしまって」 疲れ切った私のことを休日のようにしてしまったかもしれない——申し訳なさで胸がいっぱいになる。「いえ、それは気にしないでください。僕がしたくてやったことなので」 その言葉に、ほんの少しだけ心の荷が下りた。「それでも、本当にありがとうございました。清水川先生のおかげで助かりました。感謝しています」 私が視線を向けると、どこか見覚えのある表情に胸がざわついた。学生時代、同じ学校でよく話してくれた金髪の男子に似ている——でも、今目の前にいるのは黒髪の男性だ。失礼ではないだろうか、と緊張が込み上げる。「あの、望月さん」 遠慮がちに呼びかけられ、思わず顔を上げる。「は、はい。なんでしょう」 声が震えてしまい、慌てて視線を落とす。「僕は、望月さんと同じ学校に通っ
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再会
 退院の日、朝。 私は佐倉先生から退院してもOKとの許可を正式にもらって退院の準備をしていた。入院着から桃花が持ってきてくれたワンピースに着替えると、病室にドアがノックされて入ってきたのは桃花だ。「おはよう、花耶。退院おめでとう」「桃花、お迎えありがとう」 桃花は車の免許をとっており、車持ちだ。だから寮まで帰るのに送ってもらうために来てもらったのだ。本当にありがたい。「いいのよ、今日は休みだしさ。調子は大丈夫なの?」「うん。点滴も今はしなくても良くなってるし、大丈夫」 荷物をまとめて使用していたベッドを少し綺麗にしてから病室を出た。それから会計のところに行き、入院費を払う。払っている最中に車を取りに行った桃花を待っていると名前を呼ばれた。「あ……清水川先生」「今日退院でしたね、望月さんおめでとうございます」「ありがとうございます。清水川先生にもとてもお世話になりました。お話ができてよかったです」 そんな会話をしていると、桃花が私の名前を呼んだ。その同じタイミングで「いちかせんせー」と呼ぶ男の子の声が聞こえてきて清水川先生は男の子の方に行ってしまった。先生もお仕事中だし、仕方ないとはいえもう少し話がしたかったななんて思ったりするのだが私も桃花がそばにいたため彼女を見た。「さっきの清水川さん、だよね? 結構仲良しじゃん」「うん。入院中に話し相手になってもらってたから」「へぇ、そうなんだ。なんか怖そうだなって思ったけど、花耶にはすごい優しい顔するんだね。それに、学校が同じだったなんて運命じゃん。もう花耶は恋とか結婚とか考えてないの?」「もう、いいんだ。それに私にはこの子がいるから、それだけでいいの」 話をしながら歩いていると彼女の車が止めてある場所まで到着して乗り込んだ。  *** 退院をして二日、私は所長の提案でつわりが治るまでの間有給をうまく使いながらの出勤をすることになり今日はその初日だった。「おはようございます」「おはよう、望月さん。そうだ、紹介するわね。あなたがいない時に入る|月岡《つきおか》くん。まだパーサーになったばかりの二年目だけど、優秀でねチーフパーサーになったんだよ。九州支所から異動してきてもらったの」 所長はさわやかそうな男性を連れてきて紹介してくださった。“パーサーになったばかり”だと所長は言っていた彼は
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頼れる人なんていない、
頼れる人なんていない 佐倉先生に出迎えられた私は、清水川先生とはお礼を言って別れ産婦人科へ向かう。産婦人科の中にある処置室①と書かれた部屋に入ると、診察を受けた。「なんとなくだけど話は聞いたよ。検診の帰りだったんだね、今は体の調子はどう」「少しだけ、いいです」 私は母子手帳を出すと先生に渡した。「ありがとう、一度拝見するね」 佐倉先生は母子手帳を受け取ると、今日の検診で検査をしてもらった結果のページを開いた。「体重、結構減ってるね。食べたり飲んだりするの辛い?」「そうですね、少し」「そうだね、じゃあ、今回も点滴をしよう。……じゃあ、点滴室に案内するね」 そう言うと看護師さんがやってきて点滴室へと案内して下さった。点滴室のベッドに寝転がると手早く看護師さんは点滴の用意をしていた。「望月さん、背中を少し上げた方がいいですか?」「え、あっお願いします」「分かりました。じゃあ動かしますね」 ビーッと機械音が聞こえてきて背が少し上がると、知らない間に点滴は始まっていた。「では何かあればこちらのナースコールで呼んでください。ベッドの高さを変えたい時はこのリモコンでお願いします」 そう言って看護師さんは掛け布団を足元に掛けると、出て行った。それと入れ替わりで佐倉先生が入ってくる。「失礼します、望月さん。連絡できる人、この前連絡した桃花さんでいいかな?」「はい、大丈夫です。ありがとうございます」「ううん。望月さん、眠れてないみたいだし、少しでも眠れるなら寝なよ。じゃあまた様子見に来るから」 佐倉先生が出ていくと急に静かになる。室内は明るいが、防音になっているのかとても静かで天井を見ているとなんだか眠くなってくるのがわかる。それに身体も軽くなっていくのがわかって段々うとうとして目を瞑った。 目が覚めるとちょうど点滴が終わったみたいで看護師さんが後片付けをしているところだった。「あ、望月さん。おはようございます、お疲れ様でした。ちょうど点滴が終わったところでした。もうすぐ佐倉先生もいらっしゃると思うのでお待ちくださいね」 看護師さんは優しい笑みを浮かべて部屋を出ていくとその数分後ノックの音が聞こえてきた。佐倉先生かなと思って何も考えずに返事をすると、入ってきたのは佐倉先生じゃなくて清水川先生だった。「こんにちわ、さっきぶりだね。先ほどよ
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元婚約者
元婚約者の訪問 応接室から移動して近くにあるよく行った喫茶店に優仁と入った。「それで、なんの話があるの? 私には話すことはないんだけど」 席に座りすぐに私は切り出した。すると優仁は「なんで教えてくれなかったんだ」と突然睨みつけながら呟いた。「……え? なにを」「君のお父さんのことだよ。再婚していたのは知っていたけど、まさか望月製薬さんの社長だったとはな。瑚乃美よりも上じゃないか……なんで教えてくれなかった?」 なんで義父のその情報を知っているの?私の口から義父のことも両親のことを誰かに話したことはない……ということは調べたの?「言うタイミングなんてなかったでしょ、それに義父は母と結婚してから社長から退いて田舎で暮らしているんです。今は義父の甥が社長をしてます」「は? 田舎?」「はい。義父は田舎のスローライフが夢だったようなので」「はぁ、まぁいい。婚約の白紙は撤回だ。今すぐ結婚しよう」 そう言ってカバンから婚姻届を取り出した。それはすでに記入済みで、混乱する。だから深呼吸をして落ち着かせて問いかけた。「あなたには瑚乃美さんがいらっしゃるでしょ? 瑚乃美さんはどうするの?」「瑚乃美とは別れる。母にも伝えた。今回はわかってもらえたから安心してほしい」 別れる?あんなにイチャイチャして、私のこと捨てたくせに?「……っ、けんな」「嬉しいだろ? 俺のこと大好きだもんな」「はぁ?」 気づかなかったけど、自意識過剰なの?あんなに酷く振ったくせに、少しでも自分に優位になることがあれば簡単に別れたり付き合ったりするんだ……本当にクズだ。「あなたとは結婚できません。私は、大嫌いですから」「は? 強がんなよ。それにお腹には子がいるんだから。俺の子だろ」 ドヤ顔をした彼はこれで了承するだろうと考えているのだろう。自信満々の表情をしている。「この子は私の子ですっ! あなたの子じゃありません!」 つい感情的になってしまい、叫んだ。このままこの人と話をする必要はない。そう思い、持っていた千円札をテーブルに置いた。「もう話すことはないです。私のことは忘れて彼女と幸せになってください」 優仁の目を見て言えば、そんな強く言うとは思っていなかったのか表情が不機嫌になった。この人といると危険だと本能で思ったここから去ろうと立ち上がり席から離れようと歩きだす
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両親への報告
両親への報告 優仁の訪問から一ヶ月が経った。「今日もよろしくお願いします」 悪阻も落ち着いて今は安定期に入り、仕事は時短には変わらないが体調はなんとか以前のように戻ることはないが注意をしながら働くことができるようになっていた。出勤をして今日一緒に乗車するチームのいるテーブルへ向かう。そこにはもう顔馴染みとなった月岡さんがいた。「望月さん、おはようございます。よろしくお願いしますね」「あ、月岡さん。おはようございます! こちらこそよろしくお願いします」 つわりがひどい時は月岡さんにチーフパーサーの地位を取られた気がして悔しいとずっと思っていたが、彼の人なりを知って仕事への姿勢を見て今では一緒の勤務の時は心強く感じるようになっていた。それに月岡さんは結構相性が良いことと私と苗字が似てるからと“お月様コンビ”なんて呼ばれるようになるくらいには仲はいいと思う。「東京駅十時四十八分入り十時五十二分発新大阪行き、望月さんは車掌業務をよろしくお願いします。名古屋から多目的室利用ありますので無理のないように介助をよろしくお願いします」「了解です、よろしくお願いします」 パーサー同士で身だしなみのチェックをし、当直長のところへ向かう。先ほど月岡さんに言われた時間と身だしなみの細かい確認などの指示をされてからホームへ向かう。ホームでは通り過ぎる乗客に礼をしながら新幹線を待っていると乗車する新幹線がホームへ入ってきた。それを確認し、お辞儀をすると新幹線に乗り込む。「おはようございます」「おはよう。じゃぁ、引き継ぎ始めるね――」 引き継ぎが終わり交代をすると、販売ワゴンなどの準備や補充をして整えた。するとお客様の乗車がはじまり、出迎えを始めた。 新幹線は時刻通り東京駅を出発をする。私は車内放送のためにアナウンスマイクの場所まで行くと受話器を持つ。「本日は新幹線をご利用くださりまして誠にありがとうございます。この電車は、|花椿《はなつばき》号新大阪行きです。この電車の自由席は一号車から五号車、十二号車から十六号車です。停車駅と到着時刻をご案内します――」 到着駅と時刻をアナウンスをし、運転手と車掌、パーサーを言うと次の停車駅とドアは左側に開くことを伝えると次は英語でのアナウンスをして受話器を置いた。 それから名古屋駅に到着すると申し送り通り、多目的室利用の車
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