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第40話

last update Huling Na-update: 2025-06-23 17:10:00

自分のことのように喜んでくれる羽衣を見ていたら、何だか私まで目頭が熱くなってきた。

「ありがとう、羽衣」

羽衣はいつも私のことを応援してくれて、たくさん相談にものってくれて。どんなときも、私の味方でいてくれた。

だから、こうして羽衣に嬉しい報告ができて本当に良かった。

**

ホテルを出てクラスごとに博物館を見学した後、班ごとに分かれての自由時間。

「佐野〜、陽菜ちゃんと二人だからって、一線は越えたらダメだからな?」

亜嵐くんがニヤニヤ顔で、伊月くんの腕を小突く。

「長谷川に言われなくても、分かってるよ」

「そうか〜?まあ、俺と羽衣ちゃんのことは気にせず、二人でごゆっくりー!」

ありがとう、亜嵐くん。

羽衣と亜嵐くんに手を振ると、私と伊月くんは並んで歩きだす。

「陽菜」

ごく自然に、伊月くんが私の手を掴んだ。

「その……街中ではぐれたりしたら、ダメだろ?」

そっか。手を握られて最初ドキッとしたけど、そういうことか。

「って、今のはうそ。本当は、俺が陽菜と手を繋ぎたかったから」

伊月くん……。

「うん。私も手を繋げて嬉しいよ」

伊月くんから伝わってくる温もりに、胸がくすぐったくなる。

手を繋いだまま、歴史ある街並みを伊月くんと歩く。

「へえ。ここ、恋愛成就の神様が祀られている神社なんだって」

たまたま通りかかった大きな鳥居がある神社の前で、伊月くんがスマホを手に呟く。

見たところ、カップルや女性の参拝客もかなり多い。気になるなあ。

「せっかくだし、行くか?」

「うん!」

伊月くんと一緒に、神社に足を踏み入れる。

「このハート型の絵馬に名前を書いて愛を誓うと、ご利益があるらしい」

「ふふ。ハート型の絵馬、可愛い」
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