LOGIN高校生の陽菜は、中学の頃に付き合っていた元カレ・伊月のことが今も忘れられないでいる。 ある日、陽菜の母が再婚することに。しかし、母の再婚相手との顔合わせの日に再婚相手と共にやって来たのはなんと、元カレの伊月だった! 親同士の再婚で、陽菜は伊月の家で暮らすことになるが、同居初日に陽菜は伊月から「親の前でだけ仲良くすれば良い」と言われてしまう。 それでも、陽菜がピンチのときには助けてくれたりと、何だかんだ優しい伊月に陽菜はますます惹かれていくけれど……。 「俺は陽菜のこと、妹だなんて思ったことない」 義兄になった元カレと、甘く切ないラブストーリー。
View More『俺、菊池さんのことが好きなんだ』
中学2年生の1月。初雪が降った日の放課後。
誰もいない教室で私・菊池陽菜(きくちひな)は、ずっと好きだった同級生の佐野伊月(さのいつき)くんに告白された。
『菊池さんが良ければ、俺と付き合ってくれないか?』
『……っ、はい。よろしくお願いします』
私の返事は、もちろんOK。憧れの佐野くんと両想いだなんて、泣きそうなくらいに嬉しかった。
だけど……幸せは、長くは続かなかった。
『……俺たち、別れようか』
3月、校庭の桜の蕾が膨らみつつある頃。中学2年生が終わるのと同時に、私たちのお付き合いも終わりを迎えた。
あれから2年。高校1年生になった今でも私は、密かに佐野くんのことを想い続けている。
**
3月中旬の、ある日の朝。
「やばい。もう時間だ」
高校の制服姿の私はスクールバッグを肩にかけ、慌てて自宅の玄関へと向かう。
菊池陽菜、16歳。肩下までの黒髪ストレートヘア。身長150cmと小柄で童顔のせいか、実年齢よりも下に見られることが多い。
「それじゃあ、お母さん。いってきま……」
「あっ。ちょっと待って、陽菜」
言いかけた『いってきます』は、お母さんに途中で遮られてしまった。
「何?」
「あのね、陽菜。今日、あなたに大事な話があるから。学校が終わったら、なるべく早く帰ってきてくれる?」
「……?うん、分かった。それじゃあ、行ってきます」
大事な話って何だろう?と首を傾げながら、私は走って家を出た。
私が通う高校は、家から徒歩20分ほどのところにある。
「はぁ、はぁ……っ」
どこまでも晴れ渡る空の下を、私は全速力で駆け抜ける。
時折ふわりと頬を掠める風は温かく、近くの土手に咲く濃いピンク色に染まる河津桜は、ちょうど見頃を迎えた。
冬が終わってやって来た春を、全身で堪能したいところだけど。学校に遅刻しそうな私は、ただひたすら通学路を走り続けた。
**
ふう……いつもよりも家を出るのが少し遅くなったけど、何とか予鈴までに間に合った。
「佐野くん、おはよぉ」
1年4組の教室に入ると、可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。
そちらに目をやると、窓際の佐野くんの席が女の子たちで賑わっている。
佐野くん、ほんとよくモテるなぁ……。
「ねえねえ、伊月くん。昨日のドラマ見たー?」
「……見てない」
女の子に話しかけられるも、窓の外に顔を向けたままそっけなく答える彼。
佐野くんは、基本女の子に無愛想だけど。黒髪短髪のイケメンで、成績優秀。この学校のバスケ部エースでもある彼は、中学の頃に付き合っていた私の元カレだ。
私は、佐野くんをこっそり見つめる。
中学2年生のあの日。憧れの佐野くんから告白されて、本当に嬉しかった。
人気者の佐野くんの彼女になれて、学校のみんなから羨ましがられたし、それと同時に女の子から妬まれた。
──『なんであんな地味な子が、佐野くんの彼女なの?』
「っ……」
昔のことを思い返していたら、胸の辺りが苦しくなって、私は教室の床に視線を落とす。
あの頃の私は、自分に自信が持てなくて。かっこいい佐野くんの彼女が私でいいのかな?って、ずっと思っていた。
それに加えて私は、好きな人の前だといつも緊張して上手く話せなかったから。
いつしか私たちの間には、距離ができてしまって。佐野くんと話したり、一緒に帰ることも次第になくなっていったんだよね。
……って。過ぎたことに、いつまでも落ち込んでちゃダメだ。早く自分の席に行こう。
そう思い、私が顔を上げたそのとき。
「!」
ふいにこちらを向いた佐野くんと、目が合ってしまった。︎︎︎︎︎︎
「ねえ、伊月くん。今日のデートの記念に……良いでしょ?」私は、小首を傾げてみせる。「っ、そんなふうに可愛くされたら、嫌だなんて言えないだろ……」「えっ?」「いや……写真、良いよ。撮ろう」「ありがとう!」やっぱり、伊月くんは優しい!それから伊月くんとツーショット写真を何枚か撮って、私たちは再び園内をまわった。お化け屋敷に行ったり、メリーゴーランドでメルヘンの世界に浸ったりと、遊園地を思う存分に楽しんだ。そして、夜。帰る前に、観覧車に乗ろうということになった。観覧車の高度が上がっていくにつれ、眩しい夜景が広がっていく。「うわあ、キレイ!」有名な巨大観覧車というだけあって、見える景色も迫力がある。「……っ!」うっかり真下を見下ろしてしまい、その高さに足がすくんだ。「大丈夫だよ」伊月くんが、優しく肩を抱き寄せてくれる。狭い空間の中、隙間なくぴったり寄り添うと、伊月くんの爽やかな香りがふわっと漂って、距離の近さにドキッとした。「ねえ、伊月くん。今日は楽しかった。家族にも認めてもらって、こうやってデートができて……夢みたい」私は、伊月くんの肩に頭を預ける。「陽菜、俺もだよ。今日、陽菜と一緒にここに来られて本当に良かった」伊月くんが私の手を握り、目を細める。「陽菜……俺、あの頃、母さんが家を出て、家族が壊れたことをずっと引きずってた。父さんの笑顔が消えたのも、俺のせいなんじゃないかって思っていたときもあった」伊月くんの声が、少し震える。「でも、陽菜と暮らして、お前の笑顔や頑張る姿を見て、俺も変われた。父さんや翔子さんの幸せも、陽菜のおかげで守ることができたんだ」私は、伊月くんの頬に手を当てて微笑む。「伊月くん、私もだよ。中学の頃は自信がなくて、いつもビクビクしてた。でも、伊月くんと家族になって、あなたをもっと好きになって……メイクや勉強を頑張って。最近は、自分のことも好きになれた。伊月くんのおかげだよ」伊月くんが、私の額にそっとキスを落とす。「陽菜、好きだよ」「私も、伊月くんが大好き。これからもずっと、一緒にいようね」私たちのゴンドラがちょうど天辺に差し掛かり、自然と二人の唇が重なった。観覧車の窓の外には、キレイな星空が広がっている。遊園地のネオンも星空もきっと、私たちのことを祝福してくれている。そんなふうに思えた
両親に交際を認めてもらった、次の週末。私は、伊月くんと初めて“恋人としてのデート”に出かけることになった。行き先は、地元の遊園地。昔、お父さんが生きていた頃、お母さんとお父さんと三人で来た場所だ。遊園地の入り口は、色とりどりの風船や子どもたちの笑い声で賑わっている。「今日の陽菜、すげー可愛いんだけど」「えっ、ほんと!?」伊月くんに唐突に褒められ、思わず顔が赤面してしまうのを感じながら答える。︎︎︎︎︎︎今日の私は白のワンピースに、ナチュラルメイク。髪は、いとこで美容師の明里ちゃんにアドバイスをもらって、ハーフアップにしてみた。ちなみに伊月くんは、カジュアルなシャツにデニムというシンプルな格好だ。「い、伊月くんも……すごくかっこいいよ」「陽菜、もしかして緊張してる?」伊月くんが、私に手を差し出しながら笑う。「う、うん、ちょっとだけ。今日は、伊月くんとの初めてのデートだし……それに、世間の目とか少し気になるかなって……」正直に言うと、伊月くんがクスクス笑った。「陽菜は真面目だな。世間の目とか気にする必要ないよ。ここには俺らが義理の兄妹だってことを、知ってる人なんていないんだから。今日はめいっぱい楽しもう」ニコッと笑いかけてくれる伊月くんの顔は、まるで太陽みたいに眩しくて、私の不安を溶かしてくれる。「うん、そうだね!」私は彼の手をぎゅっと握り、遊園地の中へと駆け出した。◇最初に向かったのは、園内でも人気のジェットコースター。──プルルルル。発車のベルが鳴って、ジェットコースターが動き始めた。お父さんたちと来たときは、まだ幼稚園生で乗れなかったから。ここのジェットコースターに乗るのは、今日が初めての私。下から見ていたときは、そんなに高いと思わなかったけど。実際に乗って頂上に向かってみると、結構高いんだ……。私は、今になって少し怖気づいてしまう。「陽菜……もし怖いのなら、こうし
この沈黙が、私には永遠のように感じられて。やっぱり……伊月くんとのことは、許してもらえないのかな?と、不安でいっぱいになる。「陽菜、あなたがそんなに強い気持ちでいるなんて……お母さん、知らなかった。あの小さかった陽菜が……」ハッとして俯いていた顔を上げると、お母さんの目には涙が浮かんでいた。「父さん、俺も陽菜と同じ気持ちだ。いくら反対されても、俺たちの気持ちは絶対に変わらない。俺は、これからもずっと陽菜と一緒にいたいんだ」伊月くんの言葉に、光佑さんは静かにメガネをかけ直す。「そうか……伊月、お前がそんなふうに本気で話す姿は、初めて見たよ。伊月の気持ちは分かった。だけど、陽菜ちゃんを幸せにできるのか?世間からの目もあるし、そんなに簡単なことじゃないぞ」伊月くんの瞳が光った。「父さん……俺、陽菜を絶対に幸せにしてみせる。たとえ世間にどんな目で見られたとしても、陽菜の笑顔を守るために、俺はどんなことでもする」伊月くんの声には、かつての女性不信を乗り越えた強さが宿っていた。「あなたたちが、こんなにも真剣に、私たちに話してくれたこと。その勇気と、お互いを思いやる気持ちが、どれほど本物か……私にはちゃんと伝わったわ」お母さんの言葉に、光佑さんが微笑む。「伊月、陽菜ちゃん。君たちの気持ちが本物なら、父さんはもう反対はしない。だけど、ちゃんと責任を持って、二人で乗り越えてほしい。世間体よりも何よりも、君たちの幸せが一番大切だ」込み上げた涙の粒が、頬を滑り落ちた。「お母さん、光佑さん……ありがとう」伊月くんの手が、私の肩をそっと抱き寄せる。「父さん、翔子さん、ありがとう。俺、陽菜を絶対に幸せにするから」伊月くんの決意にお母さんが微笑み、ケーキを切り分ける。「それじゃあ、このケーキ、みんなで食べましょうか?家族みんなで、こうやって笑い合えるのが一番よね」「そうだな、翔子さんの言うとおりだ。陽菜ちゃん、伊月、これからも家族として、恋人として、ちゃんと支え合ってくれよ」「はいっ」私は伊月くんの手を握りしめ、笑顔で頷いた。リビングの窓から見える夜空には、星がキラキラと瞬いている。伊月くんと恋人になれたこと、家族に認めてもらえたこと……全部、夢みたい。でも、これからもっと彼と幸せになるために、私……頑張るよ。テーブルを囲む四人の笑い声が、リビ
「……」リビングは、水を打ったようにシンと静まり返る。お母さんの目は大きく見開かれ、光佑さんはメガネを外して額を押さえた。「……え。陽菜、伊月くんと付き合ってるってどういうこと?」お母さんの声は、震えていた。いつも優しいお母さんの顔が、こんなふうに硬くなるなんて……私の胸が、チクンと刺されたみたいに痛んだ。「そのままの意味だよ。私は中学生の頃から今もずっと、伊月くんのことが好きなの。最初は、妹として彼のそばにいられればいいって思ってたけど……やっぱり無理だった」涙が滲みそうになるのをこらえ、私は言葉を続ける。「最初はずっと黙っていようと思ってた。でも、お母さんも光佑さんも大切な家族だからこそ、ちゃんと話したかったの」伊月くんも、静かに口を開く。「父さん、翔子さん。俺も、陽菜のことが好きだ。妹としてじゃなく、これからは恋人としても陽菜を幸せにしたいと思ってる」彼の声は落ち着いていたけど、その瞳には揺るがない決意が宿っていた。「ちょっと待ってくれ」光佑さんが低く呟き、眉間に皺を寄せる。「陽菜ちゃん、伊月。君たちが……付き合ってる?こんな話、いくら何でも急すぎるよ。だって君たちは、義理の兄妹なんだぞ?」「そうよ。陽菜……血が繋がっていないとはいえ、あなたたちは兄妹なのに、恋人だなんて。世間にどう思われるか、考えたことある?」お母さんの声が鋭く響いた。「私たち家族が……バラバラになっちゃうかもしれないじゃない。陽菜、こんな大事なことを、どうして急に……」その言葉に、涙がこみ上げた。お母さんがそんなふうに言うなんて、想像していなかったわけじゃない。でも、実際に聞くと、心が締め付けられるように痛んだ。「お母さん……ごめん。でも、私……」言葉が詰まり、うつむいてしまった。涙が、ぽろりと膝に落ちる。「陽菜」伊月くんの手が、私の手をぎゅっと握り直す。その温もりが、今の私の唯一の支えだった。「父さん、翔
【〈第20位〉菊池陽菜】う、うそ。私が20位!?今まで掲示板に自分の名前が載ることなんてなかった私は、開いた口が塞がらない。「へえ。菊池さん、20位なんだ」背後から突然声がして、振り返ると……そこには、クラスメイトの森本さんと彼女の友達数人が立っていた。以前、伊月くんファンの森本さんたちに強引に空き教室に連れ込まれ、ひどいことを言われた私は、彼女たちを前に顔が引きつりそうになる。「菊池さんが珍しく20位なんて&hell
真剣な顔つきの伊月くんに聞かれて、私は胸が跳ねた。 「陽菜、最近急にメイクしたり髪を染めるなんて……もしかして、他に好きなヤツでもできた?」 「えっ!?」 ほ、他に好きなヤツって!どうして突然、そんな……。 「なあ、答えてよ」 伊月くんが私の後頭部に手を入れて、髪をすくう。 「〜っ」 伊月くんは、何度も同じ仕草を繰り返して。その度に、はらりと首元に髪の毛が落ちてくすぐったい。 「伊月く……やめて」 「陽菜がちゃんと答
ファンの子たちにキッパリ言うと、伊月くんは颯爽と歩いていく。 「えーっ!」 「うそーっ!?」 それと同時に、体育館中に女の子の悲鳴が響き渡る。 「嘘でしょ!?あの伊月くんに、彼女がいるなんて」 「そんなの信じられない〜!」 まさか、伊月くんがファンの子たちに『彼女がいる』って、公言するなんて……! 「陽菜」 「えっ?」 名前を呼ばれて顔を上げると、いつの間にか伊月くんが目の前に立っている。 「練習、見に来てくれたんだな。サンキュ」 伊月くんは、私の頭をくしゃりと撫でる。 ちょ、ちょっと待って!伊月くんったら、どうして普通に話しかけてくるの?! ここは学校で、ファンの
「あんなの気にするな。陽菜は可愛いし、何より俺は……お前のことが好きだから。それで良いだろ?」 伊月くんが、私の肩にそっと手をまわしてくれる。 「うん、そうだね。ありがとう」 不思議。伊月くんの言葉ひとつで、モヤモヤしていた心が一気に晴れたよ。 ……と、思ったものの。 「ああ、可愛くなりたい……」 「陽菜ーっ、どうしたの?」 朝礼後。机に肘をついてぼーっとしていると、目の前には羽衣の顔。 お団子ヘアがトレードマークの羽衣は、今日も元気いっ