Share

本当の彼女

Author: 煉彩
last update Huling Na-update: 2025-08-12 20:13:35
「だって、海斗のこと信じてたから。絶対にそんなことする人じゃない」

 海斗の手を思わず握ってしまった。

「あー。ダメだ。くるみ、可愛すぎる」

 会社では見せない私だけの彼の姿、これからもずっと私だけの彼氏であってほしい。

 そう、彼のことを守りたいと思った時、私は心の底から海斗のことを好きになってしまったことに気がついた。

 さっき海斗に抱きしめてもらった時に、離れたくないと思った。

「海斗、本当にごめん。私、ちゃんと彼女役になる自信がなくなっちゃった」

 これ以上海斗と一緒にいると、もっと好きになっちゃう。

「どうして?今日の挨拶とか、疲れたよね。ごめん。もうそんなことさせないから、普通にそばにいてほしい」

 海斗は私の気持ちに気づいているわけではなさそうだ。

「違うの。私、海斗の近くにいたら、海斗のこと今以上に好きになっちゃう。本当の彼女になれるわけないのに。一年後にはお別れしなきゃいけないのに……。だから……」

「くるみは俺のこと、ちゃんとした恋愛対象で好きだってこと?」

「……。そうだよ」

 私が答えたあと、沈黙が続いた。

 怖くて彼の顔を見ることができない。

「あ――。ごめん。心の整理が必要で……」

 やんわりとフラれてしまった。

 一年後にはもっと傷が深くなっていたし、感情ももっともっと重くなっていたと思うから。ここできちんとフラれて良かったかもしれない。

「俺は、くるみのこと、ずっと前から本気で好きだったよ。諦めようと思ったけど、無理だった。だからこの一年をかけて、偽装彼氏ってことを利用してまで、好きになってもらえるよう努力していこうと思ったんだ」

「えっ」

「俺はくるみのことが好き。だから、本当の彼女になってほしい」

 海斗が私のことを好き?

 嘘じゃないよね、夢でもないよね……。

 隣にいる彼を見つめる。海斗の顔はいつもよりも赤かった。

「はい!」

 かみしめるように返事をしたあと、隣にいる海斗に飛びついた。

「昔も今も――。大好きだよ」

 海斗は私を優しく抱きしめてくれた。

 半年後――。

「ちょっと、海斗!大丈夫だよ!面接に行くだけじゃん」

「いや、会場前まで送っていくよ。男性社員が多いって聞いたから。変なやつに声でもかけられたら……」

 私は転職活動をしている。

 海斗とは順調に交際を続けていて、私の夢だった、ゲーム開発会社で働くこと
煉彩

本編は一旦こちらで終了ですが、サイドストーリーがあります。

| 1
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • この愛を止めてください   溺愛デート 2 <番外編>

    「うん。いいよ」  二人で海斗の部屋へ帰宅することになった。「先にお風呂でも入っておいで?なんか映画でも見ようか。準備しておくよ」「うん」 言われるがまま、シャワーを浴び、海斗の洋服をかりた。 同じマンションだから、帰れば自分の服はあるのに。少し大きい海斗のTシャツとハーフパンツにドキッとしてしまう。「先にシャワーありがとう。海斗もどうぞ」  タオルを羽織っている私の姿を見て、一瞬海斗の動きが止まった。「うん。じゃあ、行ってくる」 しばらくして、海斗が戻ってきた。 まだ濡れている髪の毛が色っぽい。 本当にこんな人が私の彼氏……役なんだ。 私以外にも適任がいっぱいいそうなのに。 はずかしくて海斗を直視することができない。「わたしっ!なんか飲み物持ってくるねっ!」 喉なんて乾いていないのに、雰囲気に馴染むことができず、急に立ち上がった。「あっ」 慣れていない海斗の部屋、机に足をぶつけてしまい、よろけてしまった。「くるみっ!」 転びそうになったところを海斗に腕を引かれ、反動でベッドに二人で倒れこんだ。「あ、ごめん」 海斗の上に倒れかかった私は、すぐに退こうとした。 がーー。「ダメ。離さない」 海斗にギュッと抱きしめられる。「えっ、重いから。離して」 こんなゼロ距離、耐えられない。 お風呂上りの良い匂いがするし、彼の体温を感じた。心臓の音が煩くなる。「キスしてくれたら、離してあげる」 私の耳元から聞こえた彼の声にゾクっとしてしまった。 海斗とは一線を超えてしまってはいるけれど、そんなことを続けていたら彼からどんどん離れられなくなる。「キスしてくれないとずっとこのままだからね」 フッと笑う海斗、どことなく楽しそうだった。 私のこと、からかっているんだ。「わかった」 観念した私は、顔をあげ、海斗の頬にキスをした。「はいっ!キスしたから離し……」 海斗に目線を合わせた時「んっ……」 海斗からキスをされた。「んんっ……」 これは普通のキスではない。「はぁっ」 海斗の舌が絡まって、離れる度に吐息が漏れる。「ちょっ……」「くるみに隙がありすぎて、心配になった。俺のくるみだってことをわからせて?」 どういうこと……? キスが激しい。リップ音が室内に響く。「私は、海斗のだからっ」

  • この愛を止めてください   溺愛デート 1 <番外編>

     マンションのエントランスで待ち合わせをして、海斗《彼》を待っている。 彼と言っても「本当の彼氏」ではない。契約で結ばれている、愛のない偽りの関係。    だけど、偽りの関係なんかじゃないと思う瞬間が多く、私は戸惑っている。  なんせ彼氏の「海斗」は、私に対してとても甘い。  偽装彼女だから、そんなに気を遣わなくてもいいのに。「くるみ、お待たせ」「ううん。私も今来たところ」 待ち合わせ場所に現れた彼は、爽やかなジャケットにジーンズという服装。  ラフな格好に見えるが、彼の容姿の良さを邪魔しないシンプルな服装だった。  かといって私は「張り切ってきました」と言わんばかりの服装。短めのスカートに髪の毛はアイロンで緩く巻いてみた。お化粧もいつもより濃い気がする。「今日のくるみも可愛いね」 会った瞬間にそんなことを軽く言う彼は、本当にそんなことを思ってくれているのだろうか。 今日は、映画館デート。「私、見たい映画があるんだ」 そんなことを呟いたら、それを聞き逃さず「今度行こうよ」と自然な感じで誘ってくれた。    映画館に着き、エスカレーターで二階へ行く。「くるみ、先に乗って」 エスカレーターに乗る時に、そんな提案をされた。「うん」 どうしてだろうと思ったけれど、その時は気にもせず、チケットを買い、席へ座った時だった。 幸い、映画館はそれほど混んではなく、満席ではない状態だった。「まだ時間があるし、飲み物買ってくるね」 そう言って彼は席を外した。「うん、ありがとう」 私が海斗に気を遣わなきゃいけないのに。  彼の私ファーストの行動がいつもの私を狂わせる。  こんなに大切にされたことなんてない。元彼と比べてはいけないけれど、大和にもされたことがなかった。 海斗が席へ戻ってきた。「おかえり」  私が声をかけると 「くるみ、膝の上にこれ使って」  渡されたのは海斗のジャケットだった。「あ、ごめん。ありがとう。でもそんなに今日寒くないよ」「ん、そんな意味じゃなくて。俺が嫌なの」 彼は言葉を選びながら伝えてくれた。短いスカートとか、嫌だったのかな。ひざよりも少し上くらいなんだけれど。スタイルも良くないのに、そんな服装をしてくるなと思われたんだろうか。「ああ。ごめん。こんなカッコ

  • この愛を止めてください   本当の彼女

    「だって、海斗のこと信じてたから。絶対にそんなことする人じゃない」 海斗の手を思わず握ってしまった。「あー。ダメだ。くるみ、可愛すぎる」 会社では見せない私だけの彼の姿、これからもずっと私だけの彼氏であってほしい。  そう、彼のことを守りたいと思った時、私は心の底から海斗のことを好きになってしまったことに気がついた。  さっき海斗に抱きしめてもらった時に、離れたくないと思った。「海斗、本当にごめん。私、ちゃんと彼女役になる自信がなくなっちゃった」 これ以上海斗と一緒にいると、もっと好きになっちゃう。「どうして?今日の挨拶とか、疲れたよね。ごめん。もうそんなことさせないから、普通にそばにいてほしい」 海斗は私の気持ちに気づいているわけではなさそうだ。「違うの。私、海斗の近くにいたら、海斗のこと今以上に好きになっちゃう。本当の彼女になれるわけないのに。一年後にはお別れしなきゃいけないのに……。だから……」「くるみは俺のこと、ちゃんとした恋愛対象で好きだってこと?」「……。そうだよ」 私が答えたあと、沈黙が続いた。  怖くて彼の顔を見ることができない。「あ――。ごめん。心の整理が必要で……」 やんわりとフラれてしまった。 一年後にはもっと傷が深くなっていたし、感情ももっともっと重くなっていたと思うから。ここできちんとフラれて良かったかもしれない。「俺は、くるみのこと、ずっと前から本気で好きだったよ。諦めようと思ったけど、無理だった。だからこの一年をかけて、偽装彼氏ってことを利用してまで、好きになってもらえるよう努力していこうと思ったんだ」「えっ」「俺はくるみのことが好き。だから、本当の彼女になってほしい」 海斗が私のことを好き?  嘘じゃないよね、夢でもないよね……。 隣にいる彼を見つめる。海斗の顔はいつもよりも赤かった。「はい!」 かみしめるように返事をしたあと、隣にいる海斗に飛びついた。「昔も今も――。大好きだよ」 海斗は私を優しく抱きしめてくれた。 半年後――。「ちょっと、海斗!大丈夫だよ!面接に行くだけじゃん」「いや、会場前まで送っていくよ。男性社員が多いって聞いたから。変なやつに声でもかけられたら……」 私は転職活動をしている。 海斗とは順調に交際を続けていて、私の夢だった、ゲーム開発会社で働くこと

  • この愛を止めてください   無謀な計画 4

     海斗は決起会が終わってからも、上層部との付き合いがあるため、私は先に帰宅することになった。「お疲れ様。今日はゆっくり休んで」 海斗が一番大変だったはずなのに、帰り際に疲れた顔一つ見せず、私に伝えてくれた。 帰宅し、シャワーを浴び、ベッドに横になるも眠れない。 海斗に会いたい、あんなことがあったのだから、海斗だって精神的にも疲れているよね。私にできることがあれば、何かしてあげたい。 それは本心からで、偽装彼女だからという配慮からじゃなかった。「海斗に会いたい」 ポツリ、言葉に出してしまう。 そんな時、スマホが鳴った。 電話? 相手を見ると、海斗だった。「お疲れ様。海斗、大丈夫?」<お疲れ様。今日はありがとう。くるみ、嫌な気持ちにさせてごめん。帰ったあととか、大丈夫だった?何かされるようなことはなかった?> 自分の心配をしないで、私を優先して考えてくれているの?「私は大丈夫!海斗こそ、大丈夫なの?」<ああ、問題ないよ。あそこまでしてくるなんて、想定外だったけど。海外で生活してた時に危ない目に遭ったことがあって。最近も恨み事が多くてさ。念のために仕込んでおいて良かった。あんなところで役に立つなんて思っていなかったけど> 海斗は電話越しに笑っていた。「私、海斗に会いたい」 今彼がどこにいるのかなんて訊ねることもせず、気持ちを吐き出した。<俺もくるみに会いたい。会いに行ってもいい?実はもう帰ってきたんだ> 数分後、海斗は私の部屋に来てくれた。玄関でギュッと彼を抱きしめる。「おかえり」「ただいま」 海斗も抱きしめ返してくれた。  彼の胸の中がこんなにも安心できるなんて。 同時にチクりと心が痛んだのを感じた。 一年だけなのに……。 私はあくまで本当の彼女ではないのだから。 二人でソファに座る。 私は自然と海斗に肩を預けていた。「どうしたの?今日は。くるみから甘えてくれるなんて嬉しいんだけど」「なんか、海斗に甘えたい気分」 可愛げがない発言かもしれない。 もっと素直に「甘えたいの」と伝えた方がいいのかな。「今日のことは……。吉田さんたちのことは、くるみは何も考える必要はないから。あんな元彼のこと、もう忘れて」「あの人たち、どうなるの?」 会社の士気をあげる大切なイベントに酷い騒ぎを起こしたのだ。 処分は

  • この愛を止めてください   無謀な計画 3

    「今日は会社にとって大切な日でしたので、真実は別のところで証明しようと思ったんですが。僕の大切な彼女をこれ以上悲しませるわけにはいきませんから」 彼はフフっと笑って、私を見た。 あ、これ、海斗がゲームをしていて余裕で勝った時と同じ顔をしている。 その後、当事者を集めてパソコンを使い、吉田さんが海斗に襲われたと証言している時の映像を見ることになった。……――……<龍ヶ崎部長、雨宮先輩のことで話があります。少しいいですか?> ホテルの廊下に映し出されたのは、海斗と吉田さん二人だけだった。<すみません。吉田さんと二人だけで話をする場ではありませんので。本当に必要なことであれば、別日に改めてください> そう言って海斗が吉田さんの隣を通りすぎようとした時だった。  急に彼女が胸元からボタンが弾けるほど、洋服を引っ張り<キャアー!!誰か来て!!> 大声で叫んだ。<なっ?> 海斗が一瞬戸惑いを見せると、大和を含めた数人の男性がかけつけた。<龍ヶ崎先輩に襲われそうになって。助けてください!> 彼女は数人の後ろに走り込み、身を隠すようにその場に座り込んだ。……――…… 映像を見る限り、映し出されていたのは、完全なる彼女たちの自作自演だった。 呆然と画面を見ている吉田さんは、冷や汗をかいているようで、顔も青ざめていた。大和たちも映像を見ることなく、目を逸らしている。「これで僕は潔白です。虚偽ですよね、このまま警察に行きますか?」 海斗が当事者に向かい、鋭い目線を向けた。 その時――。「何の騒ぎですか?」 一人の背の高い気品のある高齢の男性が現れた。「会長……。それが……」 上層部が今の出来事を説明すると「よくこの場でこんなくだらない真似をしてくれたね。今日は息子の晴れ舞台だっていうから、足を運んだのに。キミたちの社長には、しっかりと伝えておくよ」 高齢男性は吉田さんたちに向かって、冷静にも怒りを伝えている。 会長って言われているけれど、うちの会社の会長ではない。 でもこの人、どこかで見たことがある気がする。 あれ……。ん!?息子?今、海斗のことを息子って言ったよね……。 まさかっ……!「久しぶりだね。くるみちゃん。元気にしてた?」 私に目線を向けたその人は、高校時代、お世話になった海斗のお父さんだった。 もしかして

  • この愛を止めてください   無謀な計画 2

     しばらく何もせず、ただ通り過ぎる人を見つめていた時だった。 私のスマホが鳴った。由紀からだ。 由紀も決起会に参加しているはず。「どうしたの?」 私が声をかけると<くるみ、どこにいるの?海斗さんが大変なの!今すぐ会場に戻ってきて!> 切羽詰まった様子に、慌てて飛び出し、会場まで走った。 海斗が大変ってどういうこと!? 会場に戻ると、空気がおかしく、人だかりができていた。「私はやめてくださいって言ったんです!なのに強引に龍ヶ崎部長が迫ってきて……。服を途中まで脱がされて……」 あぁぁぁっと大きな声で泣いている吉田さんがいた。 え、これはどういう状況なの?「くるみ!大変なの。龍ヶ崎部長が吉田さんを襲おうとしたって、彼女騒いでいるのよ」「そんなこと海斗がするわけない!」「それが、目撃をした人がいて。大和さんも証言しているし、その他にも……。今、決起会どころじゃなくなっているの」 大和は吉田さんに都合よく使われているだけだ。 だけど、他にも見た人がいるって。 どうして?「海斗はどこ?」 姿を探しているが、見当たらない。「別室で事情を聞かれているわ」 私は場所を聞き、走って向かった。 扉を開け「海斗!」息を切らしながら、彼から直接事情を聞こうとするも「今、本人から事情を聞いているところです。席を外してください。もしかしたら警察に通報することになるかもしれません」 会社の上層部らしき人に、出て行ってくださいと手で誘導をされた。 海斗は「くるみ……」 一言だけ私の名前を呟いただけだった。 目線と口角は下がり、不安そうな表情をしている。 どうして自分はやっていないと否定しないの?「絶対に部長はそんなことをする人じゃありません!私、さっきまで彼と一緒にいました!そんなことをする時間はありません。きちんと調べてください」 叫ぶように伝えるも「あなた、部長の彼女でしょ。普通、彼を擁護しますよね。事実確認ができるまで出て行って……」 怪訝そうな顔をされ、出て行ってと押された。「彼は頭が良くて、冷静で、自分を抑えられる人です。こんなところで人を襲うわけないじゃないですか!誰ですか、目撃した人って。嘘をついているに違いありません!」 海斗は絶対にそんなことをするような人ではない。「海斗!ちゃんと言ってよ!やってないって!

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status