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八話 ※甘い匂いに酔いしれる ~アルフレッドSide~

Author: Tubling
last update Last Updated: 2025-05-26 16:36:19

 今まで気付かれる事もなかったのに、どうして今日に限って⁈

 どうする、不審者だと思われたのではないか?

 私は普段感情の起伏をあまり表に出さない人間なのに、この時ばかりは慌ててしまったのを今でも覚えている。

 「……失礼、見学に来たのですか?」

 その女性は私が騎士団に入りたくて覗いていたと思ったのか、私の顔を見上げながら聞いてきた。

 どう見ても見学に来たような身なりではないと思うのだけれど、あえて突っ込まずに話を続ける事にしたのだった。

 それにしても近くで見るシャルロッテ嬢は私にとっては随分小柄に感じ、それでいて真っすぐに見つめてくるぱっちりとしたブラウンの瞳がとても澄んでいて、吸い込まれてしまいそうになる。

 口紅など何も塗っていないみずみずしいピンクの唇は、鍛錬した後でまだ荒い呼吸や汗によってますます血色が良く、食べてしまいたいほどに魅力的で目のやり場に困る。

 何より彼女からは香水の鼻がもげそうな匂いが全くしてこない。

 むしろ鍛錬後の汗の混じったいい匂いが風によって運ばれてきて、本当に吸い寄せられてしまいそうだった。

 思わず抱きしめてしまいたい衝動に駆られながらも、何とか抑える。

 「……私は君のお兄様に用があって来ていたんだ」

 「お兄様に?それならここではなくて…………あ、汗が」

 そう言ってシャルル嬢は、自身の持っていたタオルを私に渡そうとしてくれた。

 「あ、ありがとう」

 夏の暑さとさっき慌てていた事もあって汗だくだった事に気付いていなかった私は、彼女が機転を利かせてくれた事に感謝し、そのタオルを借りて汗を拭く事にした。

 しかしその瞬間、借りたタオルから今まで感じた事のない頭の先まで癒されるような良い匂いを感じてしまうのだった。

 これはもしかして……彼女の匂いがしみついたタオルなのか?

 タオルで顔を拭きながらそのタオルに顔を埋めると、何とも言えない幸福な匂いがしてきて手放せなくなってしまう。

 「大丈夫、ですか?」

 あまりにもタオルから顔を上げられない私を心配したのか、彼女が近くに寄ってきて顔を覗き込んできた。

 それ以上近寄られると本当にマズい――――

 「あ、ああ…………大丈夫、です。このタオルは洗って返すから、持ち帰らせてもらうね」

 「そんな、気を使わなくても大丈夫
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