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第 385 話

Author: 一笠
「はい、待っていてください」

凛は交差点でUターンし、美雨から教えられた住所をナビにセットした。

20分も経たないうちに、凛は目的地に到着し、店員に案内を頼んだ。

このお茶会は美雨が企画したものだ。以前、友人たちが凛を助けてくれたことへの感謝と、凛が彼らと親睦を深めるためだった。

個室のドア越しに、楽しそうな笑い声が聞こえてきた。凛は深呼吸をして、中に入ったらすぐに遅刻の謝罪をしようと準備した。

「どうしてあなたがここにいるの?」

嫌悪感に満ちた声が響いた。

凛は動きを止め、振り返ると、翠が雪の腕に抱きついているのが見えた。まるで仲の良い嫁姑のようだった。

雪は眉をひそめ、凛を上から下まで見下
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