共有

第 398 話

作者: 一笠
スタジオ。

「お疲れさま!良い週末を!」

「今日は早く上がれたな!新記録だ!」

「凛さんのお心遣いのおかげだな!」

「......」

皆が談笑しながら片付けをしている。スタジオ全体が楽しい雰囲気に包まれている。

凛は皆に挨拶をしてから、笑顔で志穂の方へ歩いて行った。「志穂、待たせてごめんね」

「ううん、別にずっと待ってたわけじゃない」

志穂は凛の手を取り、微笑んだ。「さあ、行こう。もう、みんなにはちゃんと指示出しといたから。 今日は誰にも邪魔させない。今、私は社長じゃなくて、ただあなたの志穂よ。

素敵なレストランを予約したの。美味しいものを食べて、ゆっくり話しよう」

「わかった。じゃあ、ちょっ
この本を無料で読み続ける
コードをスキャンしてアプリをダウンロード
ロックされたチャプター

最新チャプター

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 479 話

    「残念ですけど、私の運は小太くんほど強くなかったんですね。生き延びたはいいが、家も家族も失った......無くなった方が良かったのかも」あの日、二人の兄が訪ねてきた時のことを思い出し、凛の唇には自嘲の笑みが浮かんだ。こんな家族、何の役に立つっていうの?聖天は凛を見つめていた。彼女の必死で人を救おうとする姿が脳裏に焼き付いて離れない。まるで、あの豪雨の中で命懸けで人を助けた少女をもう一度見ているかのようだった。あれから何年も経ち、色々なことがあったにも関わらず、凛は少しも変わっていなかった。この瞬間、自分の心に宿っている女性は、紛れもなく目の前の凛なのだと確信した。紆余曲折を経て、彼女

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 478 話

    店を出て、声のする方へと急いだ。少し離れた池の周りに人だかりができているのが見えた。夜の中で、女将の泣き声がひときわ悲痛に響く。凛は思わず歩みを速め、すぐに人混みをかき分けて女将の隣に立った。地面には顔面蒼白の太った子供が横たわっていた。目を固く閉じ、微動だにしない。池から引き揚げられたばかりらしく、制服はまだ水滴を滴らせていた。「ちょっとどいて」凛は躊躇なくしゃがみ込み、子供に応急処置を始めた。海外にいた頃に救急処置を習ったが、まさか初めて使うのが子供に対してだとは思わなかった。山の夜は冷えるというのに、凛は焦りで汗だくだった。幸せそうな家族3人の写真が頭に浮かび、この子供がこ

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 477 話

    次の瞬間、ドアが開き、凛は聖天に向かって微笑んだ。「あなたもお腹空いたのですか?」「行こう」聖天が先に立ち、凛はドアを閉めて後を追った。小さな町は、半分が田畑、半分が生活区域で、小川が町の中を曲がりくねって流れ、両岸の木々が夕風にさらさらと音を立てていた。湿った冷たい空気が草木の香りと混ざり合い、ひときわ爽やかだ。都会で長い間生活していると、突然穏やかで静かな環境に入ると、気持ちも落ち着き、まるで、温かい湯に浸かるように、体の奥底からじんわりと解き放たれていくようだった。凛は両手を上げて伸びをした。「この仕事、まるで休暇みたいで、すごく快適ですね」聖天は彼女を横目で見て、「気に入

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 476 話

    翌日。北都から飛行機で南へと向かい、空港を出ると、凛はまだ町への移動手段に悩んでいた。その時、聖天が道の端に停めてあったランドローバーへと歩いて行くのが見えた。運転手が車から降りてきて、車のキーを聖天に渡し、続いて、聖天は凛の方を向いて、「こっちへ来い」と言った。凛が近づくと、聖天が自ら説明した。「昨夜、人に頼んで車を借りておいたんだ」凛は照れくさそうに微笑んだ。「さすが霧島さん、気が利くのですね」「さあ、車に乗れ。しばらく俺が運転手をしてやる」そう言うと、聖天は二人の荷物をトランクに入れ、運転席に戻り、エンジンをかけて空港を後にした。助手席に座った凛は、聖天をちらりと見て、同行

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 475 話

    考えてみれば、聖天を連れて行くのも悪くない。もしかしたら本当に役に立つかもしれない。どうせ潔白なら、いくら疑われないようにしても、余計な噂は絶えないだろうし。それなら、いっそ堂々と振る舞って、お互いに気まずい思いをせずに済むほうがいい。それに、ここまで来たら......今さら遠慮する必要もないだろう。そう思うと、凛の心にも迷いはなくなった。聖天の提案を心の中で受け入れた。......一方、夏目家の食卓は重苦しい空気に包まれていた。正義は、少しだけ箸を動かしただけで、食欲なく置いてしまった。「もう食べない。食欲がない」昼間、達也と誠也が戻ってきて、凛の行状を事細かに報告してくれた。

  • 夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!   第 474 話

    今週初めて舞い込んできた仕事は、とある小さな町の広報担当者からの電話だった。その町は南部の沿岸地域にあるのだが、山々に囲まれた山間の町で、近年になって観光文化開発プロジェクトに指定されたばかりで、まだあまり名が知られていない。景色は抜群に良い。「ベゴニア」のようなスタジオが、こんな割に合わない仕事を引き受けるなんて、相手は最初は驚いていた。何か裏があるんじゃないかと疑っていたくらいだ。凛は誠意を示すため、明日そちらへ伺うと申し出た。早速、凛は会議を終え、早めに帰宅して荷造りを始めた。いつものように聖天が夕食をごちそうになりに来ると、リビングのソファの横に置かれたスーツケースがすぐに目

続きを読む
無料で面白い小説を探して読んでみましょう
GoodNovel アプリで人気小説に無料で!お好きな本をダウンロードして、いつでもどこでも読みましょう!
アプリで無料で本を読む
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status