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第 464 話

Author: 一笠
会議室は、どこか重苦しい空気に包まれていた。

設立したばかりのスタジオが大量のキャンセルに見舞われ、金銭的な損失だけでなく、スタジオ全体の士気も大きく下がっていた。

会議室のメンバーは、先日のような勢いを失い、テーブルに着きながらもどこか元気がない様子だった。

凛とアシスタントが会議室に入ると、皆、慌てて姿勢を正し、声を揃えて「凛さん」と挨拶した。

凛は上座に進み、ゆっくりとお辞儀をした。「私の個人的な事情でスタジオに迷惑をかけてしまい、皆にも負担を強いてしまって、本当に申し訳ない」

「凛さん、そんなこと言わないでください。みんな、あなたを信じています。きっとあなたのせいじゃないんです!」

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